地上を旅する教会

私たちのすることは大海のたった一滴の水にすぎないかもしれません。
でもその一滴の水があつまって大海となるのです。

自省[生前の退位表明]

2013-02-25 11:11:22 | 今日の御言葉

裁きが来る前に、自らを省みよ。
そうすれば、
主が訪れる時、お前は贖いを得る。


『シラ書』〔集会の書〕 / 18章 20節 旧約聖書続編 新共同訳


幸福は、人のために生きる人生の中にあります。
自分のために歌を歌ってみても全然幸福ではないように、
自分のためのことには喜びがありません。
いくら小さくて、取るに足りないことでも、
相手のために、人のためにするとき、幸福を感じるのです。




(写真) ローマ法王退任について伝える2月12日付
英フィナンシャル・タイムズ


【環球異見】ローマ法王 異例の生前退位表明

■産経新聞2013年2月25日 07:25

 ローマ法王ベネディクト16世(85)による退位表明は世界に驚きと衝撃をもたらした。事実上、終身制の法王の生前退位表明は約600年ぶりで、「高齢のため体力が自らの職務にそぐわなくなった」とする決断に対しては「教会の活性化に資する」(英紙)などおおむね好意的だ。業績についての評価には手厳しいものもあるが、各紙とも次期法王に力強い改革者を求める見解では一致している。
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 ▼フィナンシャル・タイムズ(英国)
 ■革命的で勇気ある決断
 英各紙は、ローマ法王の退位表明をおおむね好意的に伝えた。特に、英紙フィナンシャル・タイムズは12日付社説で、生前の退位表明が保守的なカトリック教会の「前例」となり教会の活性化に資する可能性があるとして高く評価し、「退位表明は変化のチャンスだ」と期待を示した。
 社説はまず、「ベネディクト16世は近代化や改革を進めるというより伝統を重んじる保守的なカトリック教会の考え方を反映していた」と評したが、法王が自ら退位を表明したことは、「革命的なことで、勇気ある決断だった」と強調。
 ただ、聖職者による未成年者への性的虐待問題では「対応があまりに遅く、強い指導力を示すことはできなかった」と批判し、イスラム教を「悪」と呼んだり、ホロコースト(ユダヤ人虐殺)の存在を否定し破門されていた聖職者を教会に呼び戻したりしたとし、業績には疑問を呈した。
 そのうえで、「法王の退位は、これらの問題を再検討するチャンスである」と期待を寄せる一方、教会内の伝統派とリベラル派の対立がかつてないほど深まる危険性を指摘。「新法王は、教会内の分断の問題解決にも当たらなければならない」とくぎを刺した。
 新法王については、現、前両法王ともに保守的な枢機卿会で選出されたことから、「急進的な改革を願っている人たちは落胆することになる」とも予測。
 さらに、「発展途上国出身の新法王を推している人たちもいる。そうなれば歴史的なことだが、新法王を地理的要因で決めてはいけない。カトリック教会は、若くエネルギーあふれる指導者を必要としている。その人は強靱(きょうじん)な体力と不屈の精神力を兼ね備えた事実上の経営者でなくてはならない」と締めくくった。(ロンドン 内藤泰朗)
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 ▼フランクフルター・アルゲマイネ(ドイツ)
 ■自身が教会の良心 証明
 ローマ法王ベネディクト16世の出身国、ドイツでは保守系紙フランクフルター・アルゲマイネが12日付社説で、世界的カリスマだった前法王ヨハネ・パウロ2世と対比させる形で、生前退位を決心した法王の功績を分析している。
 冷戦時代から21世紀初頭までカトリック教会を率いた前法王が死去した際、葬儀には国際社会の首脳や要人が多く詰めかけた。社説は、普遍的な人権尊重に尽力して「世界の良心」との名声を得、その死も「公的なもの」だった前法王に対し、現法王は「異なる最終章を選んだ」と指摘する。
 青年時代から内向的な知識人だった法王は世界志向の前法王とは一線を画し、在位中の所信や職務遂行のやり方にも違いが表れていた。社説はその背景に、「最も偉大な神学者」である法王が「教会の良心」であることを義務と認識していたことがあると分析する。
 法王は信徒への文書を通じて「信仰が生きがいある選択肢」であることを示し、昨年にはイエス・キリストの伝記3部作を完結させている。社説は「前法王が『会いたい人』なら、法王は『話を聞きたい人』だ」と両者を比較し、「法王は自ら課した方針をほぼ満たした」と評価した。
 前法王は死去の前、その判断が自らのものなのか不明なほど、体力や精神力が衰退していたとされる。法王は過去、体力的な限界を迎えれば身を引く可能性を示唆し、それを実行した。社説は「退位で法王は自身が『教会の良心』だと証明した」ともたたえている。
 ただ、前・現法王が「似ている」点もあると指摘する。それは「両者とも法王庁や枢機卿の権謀に苦労したこと」だ。法王庁の内部闘争もささやかれる中、社説は「後継者はあらゆる面での改革を避けられない」と強調した。(ベルリン 宮下日出男)
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 ▼ワシントン・ポスト(米国)
 ■進歩的な後継者を期待
 12日付の米紙ワシントン・ポスト社説は、カトリックの伝統的な価値観を重んじる保守派とされたローマ法王ベネディクト16世は「良くも悪くも変革に激しく抵抗してきた」と批判的に論じ、カトリック教会に変化を求める信者は、次期法王に「進歩的な後継者」が選出されることを望むしかないと強調した。
 米国社会でも宗教や社会的価値観をめぐる保守とリベラルの分断が指摘されて久しい。社説はカトリック教会の分断に踏み込み、リベラル色の強い見解を示した。
 社説は冒頭から、法王が在任8年で踏み出した「一番大胆な行動は、彼が最後に取ったものだったかもしれない」と手厳しい。
 カトリック教会の「進歩派」が聖職者の生涯独身の見直しや女性の登用を求めたが、法王は一貫して拒絶したと指摘。同性愛の権利を認める動きが世界に広がる中、法王は同性愛を「不自然」であり、容認できないと非難してきたと強調する。
 また、聖職者による未成年者への性的虐待事件への対応も「不十分」と切り捨て、カトリック信者の重心が南米やアフリカ、アジアに移り始めているのに法王は「欧州のカトリックの復興」に取り組んだとも批判的に論じた。
 結果的に法王の在任中に諸問題は解決せず、就任時と同様の「(教会を)衰退させている問題を残したまま(法王は)去っていく」と指摘。とりわけ、「過去の教義に対する譲歩なしの執着のみが、信仰を保てる」ことを力説する“保守性”を疑問視した。
 一方で、保守的な論調の米紙ウォールストリート・ジャーナルの手に掛かるとその評価は一転。12日付社説は「現代社会の腐食から伝統を守る模範」と高く評価しており、米社会の分断を映す内容となっている。(ワシントン 犬塚陽介)




(写真)
ローマ法王がアイルランドでの聖職者の児童性的虐待で謝罪。
写真は法王が公表した教書。バチカン市国で撮影
(2010年3月20日 ロイター/Alessandro Bianchi)