Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

12th PIFF vol. 5

2007-10-12 23:50:57 | K-Movie Columns


原題:황진이
邦題:(黄真伊)
英題:Hwang Jin-Yi

監督:チャン・ユンヒョン

             

話題になった史劇なので楽しみにしてたのですが、見終わって「こりゃ売れなかったわけだ」と納得しました。

まず、ユ・ジテとソン・ヘギョのこのカップルが、全然しっくりきませんでした。やや、ミスマッチング。この2人を深くつなぐものが、ちっとも伝わってこないのです。情緒的な部分を意図的に抑えたのかどうか分かりませんが、純愛モノの良い部分を見せてほしかったです。

ソン・ヘギョの唇、顎の線、うなじを舐めるようにとらえたオヤジ目線のカメラアングルにも、ちとうんざり。このカメラワークのせいか、演技力の問題なのか、知性溢れる毅然とした女性であったはずのファン・ジニ像からはほど遠くて、せいぜいプライドの高い女ぐらいにしか見えませんでした。ソン・ヘギョもすべて撮り直したいと言っているようですが、謙遜でなくて、本心なのかもしれません。

ユ・ジテはセリフも少なく、キャラが定まらない感じがしました。ユ・ジテの髪型を見て、ついつい『神機箭』のジェヨンの髪型が心配になりました。ユ・ジテの役柄が下人という設定上、仕方ないと思われますが、髪を伸ばせばいいってものでもないのですね(笑)。

時代劇ではお決まりの「お代官さま」にあたる役どころは、リュ・スンニョンですが、別に悪役ではありません。見識が高く「心を開かない女は抱かない」と男気のあるセリフを吐いていたため、「あらステキ」と思っていたのに裏切られました。心変わりの理由は何だったのでしょうか(笑)。

TVドラマの史劇では、セットがいまひとつチープだったり、ロケでコンクリートや舗装道路が大写しになっていて興覚めすることが多いのですが、さすがに映画だと時代考証には抜かりがないようで、その点は安心できると思います。衣装とか小物なども良かったです

北朝鮮でロケをしたという肝煎りのエンディングの場面。ファン・ジニが、わざわざあの崖に立つのが唐突で、どうしてあそこなのかいまだにわかりません。全体的に繋がり感に乏しかったため、最後にはすーっと一本の糸につながるようにして欲しかったなぁと、消化不良この上ない作品でした

 

原題:오래된 정원 
邦題:懐かしの庭
英題:The Old Garden

監督:イム・サンス

             

すでにシネマコリアで上映された作品ですが、私は見逃したので、ちょうど空いた時間に他に見るものがなくて、とりあえず見てみました。シネマコリアでは、原作本について話題になっていましたが、私もそちらの方に興味があります

ヨム・ジョンアは役柄に合っていたと思うのですが、チ・ジニの老け役が、どうしても違和感があって、どこかで見た映画を思い起こしました。過去と現在を行き来する作品の難しいところですね。個人的には、同一人物の過去と現在で、違う人が演じていても年齢相応の人が出た方がいいと思うのです。体つきや肌つやとは不釣合いなメイクを見ると、現実にいきなり引き戻されてしまうような気がします

光州事件を素材にしていますが、事件そのものを扱っているわけではないところに含みがあって、ストーリーは良いと思いました。事件に関与した学生(チ・ジニ)が収監され、出所するまでの間に起こった、彼をかくまった女性(ヨム・ジョンア)の生き様を描いています。

やはり原作で、確認したい部分が多くありました。なんというか、うーん、悪くないのだけど、しっとり感もさっぱり感もなくて響いてこないのです。味付けは、濃すぎても薄すぎても満足しないって、こういうことなのかなと思いました。



原題:좋지 아니한가  
邦題:(よいではないか)
英題:Skeltons In The Closet

監督:チョン・ユンチョル

            

単純に笑いました。ただただ、カラカラと。湿った笑いはないので、こんなにあっけらかんと笑い続けられる作品も珍しいと思います。場内ほぼ満席で、20代の観客がほとんどでしたが、みなさんひたすら笑っていました。隣席の男子なんて、ツッコミ入れながら見ていて、ツッコミがおかしくてさらに笑えました。

笑いの質はフラットな笑いとでも言いましょうか、奥行きはありません・・・。「ぷっ」とコッソリ、コジンマリ笑えるものとか、分かる人にしか分からない笑いというのではなくて、見た人がそのまま見て笑えるという、ある意味、劇画的な笑いだと思いました。

てんでバラバラなシム家。家族のメンバー各人には、それぞれ問題があって、特に父親には最大の危機が訪れ、バラバラな家族がひとつになっていく過程を遊び心満載で描いた作品。やや、ドタバタ系でもあります

家族のキャラは、父親役のチョン・ホジンを始め、それぞれ無駄なく作り上げられていて、とにかく見ていて飽きないシム家の人々。キム・ヘスやパク・ヘイルといったメジャーどころもしっかり顔を出しています。

結局のところ、私はコメディ好きなのです。前2作↑が連続して消化不良型だったので、最後にカラカラと笑え、スッキリしてよかったと思える作品でした。

ちなみに英題にある「skelton in the closet」というのは、直訳すると「クローゼットの中の白骨」で、転じて「人には知られたくない内輪の秘密」という意味です。内容にぴったりなので、よくこんな英題つけたなぁと感心

 


12th PIFF vol. 4

2007-10-12 22:56:41 | K-Movie Columns


原題:검은 땅의 소녀와 
邦題:(黒い土地の少女と)
英題:With A Girl of Black Soil

監督:チョン・スイル

            

チョン・スイル監督、インディーズ界の旗手なのですね。アート系は、良し悪しを理解できるほど見ていないし、時に難解そして退屈というイメージなので、どうかなぁと思ったのですが、意外とまとまりのいい、分かりやすい作品でした。

下調べもせずに見たのですが、この作品は、今年のベネチア国際映画祭で、Cinema D’Essai (Art Cinema) CICAE Award と Lina Mangiacapre Award を受賞していたのですね。11月には韓国内でも公開されるそうです。

ドラマ性に欠けるというような評を読んだのですが(Varietyより)、アート系にドラマティックな展開って、相反するような気もしますが、エンディング近くは、十分衝撃的だと思いましたが・・・。

監督は、「『消え行くもの、失われていくもの』を描きたかった」と語っておられ、舞台設定を炭坑の町にしているのも、「廃れゆくものを象徴し、健康を損なって仕事も失い借金を抱えた絶望感のどん底にいる人間と重ね合わせ」てみたそうです。

登場人物は、炭坑の町に住む少女、長年炭坑夫として勤め塵肺を患い仕事も失った父親、そして精神障害の兄の3人家族。酒に溺れて頼りにならない父のために売店で酒を盗み、精神障害の兄の世話をする健気な少女は、この先どう生きていくのか、どこへ向かっていくのかということがテーマだそうです。

母親の影がない設定も、この家族の心のよりどころがないという絶望感を表しており、作品中、炭坑の街には不釣合いな都会的の女性(カン・スヨン)がイメージとして現れるのですが、「一体彼女は何者か」という質問には、「母親という解釈もありえる」との回答。このあたりは、アート系な解釈が要求されます(笑)。

チョン・スイル監督    

少女役のユ・ミョニ    

父親役のチョ・ヨンジン  
偶然、私の隣席にしばらく座っておられて、ちょっとドキドキ

 

原題:천년학
邦題:千年鶴
英題:Beyond The Years

監督:イム・グォンテク

             

まず上映前の舞台挨拶に、イム・グォンテク監督、チョン・イルソン撮影監督、チョ・ジェヒョンが登場。上映後の Q&A には、次の上映時間が迫っていたので、参加できなかったのが心残りです。

イム・グォンテク監督は、興行成績が振るわなかったことが悔やまれるようで、「PIFFで上映され、より多くの観客に見てもらえてよかった」と。チョン・イルソン撮影監督は、「朝鮮戦争に対して我々は何もできないが、この映画を作ることで報いたい」と。チョ・ジェヒョンは、「とにかく映像が美しいので楽しんでください」と。

この作品、なかなかスポンサーが付かず製作が危ぶまれていた時期もあったのでしたよね。確かに映像は美しくて、すみずみまで心を砕いたという感じがうかがえます。興行的にコケたのは、同じパンソリムービーでも『春香伝』と『風の丘を越えて』は、味付けが違っていたように思えるのですが、この『千年鶴』は『風の~』の続編という位置づけで、観客はもう同じ味付けには食傷気味だったのではないでしょうか

外国人には、まだ新鮮に映る部分もあり、個人的には十分楽しめました。チョ・ジェヒョンやリュ・スンニョンだってステキですし、パンソリも堪能できます。ただ、出会っては別れ、また出会っては別れの繰り返しが多くて、叶わぬ想いが昇華するまでに時間がかかりすぎなような気がしました

巨匠の作品をとやかく言うのも僭越なので・・・(って、すでに言ってるけど)


 

原題:여기보다 어딘가에 
邦題:(ここではないどこかへ)
英題:Somowhere Over Here

監督:イ・スンヨン

          

ワールドプレミア作品でしたが、インディーズ系なのか、メジャー系なのか、そしてジャンルの分からない作品です。こちらも上映後の Q&A は、終電が迫っていたのでパスしてしまいました。

内容はタイトルそのままでした。自分にはもっと違う世界がある、夢がある、自分は特別なんだと思いたい年頃の20代の女の子(チャ・スヨン)が、音楽で身をたてて羽ばたきたいと、現実とのジレンマに悩むというストーリーでした。

外国人記者のレビューを読んだら( link to)、視点が面白かったのですが、その女の子が、『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンを彷彿させるというのです。わがままで、自分の思い通りにボーイフレンドを振り回すからだと思うのですが、なるほどね~と思いました

確かに、子供っぽくてわがままだけどキュートな彼女と、ぼーっとした彼(ユ・ハジュン)というカップルのキャラクターは、『猟奇的な~』のパターンと似ているかもしれません。若い俳優さんも頑張っていて、笑わせどころもあり、若者の未熟さも愛おしいです。ただ、ストーリー展開がタイトルそのまんまで、エンディングではストーリーを総括させるセリフというかアナウンスが入るので、そこまで観客に世話をやいてくれなくてもいいのにと思いました。

この作品、明らかにターゲットが若い層なので、ついつい「世の中そんなに甘くないのよ~」と、お説教目線で見てしまいました(爆)。