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引っ越しました~
by lotusruby

『裸足のキボン』

2007-10-31 22:59:57 | K-Movie Notes


(Image source: movieweek)

『裸足のキボン<맨발의 기봉이>』(2006年)
監督:クォン・スギョン
出演:シン・ヒョンジュン、キム・スミ、イム・ハリョン


個人的なスケジュールが合わず、唯一鑑賞できたTIFF協賛のコリアンシネマウィークでの上映作品『裸足のキボン』。今年のシネマウィークでは GV も少なくて、この『裸足のキボン』の主演シン・ヒョンジュンだけだったとは。


[あらすじ]
幼い時に熱病を患い、知能の発達が8歳で止まってしまった40歳のキボン(シン・ヒョンジュン)。キボンは老いた母親(キム。スミ)と2人暮らしで、村の人の手伝いをしてわずかな生活費を稼ぎ、母親の世話をする日々を送っていた。キボンは、歯が欠けているため食べ物がうまく噛み切れず胃腸が弱くなってしまった母親がとても心配だ。おりしも、村長(イム・ハリョン)はキボンのランナーとしての素質を見込んで、キボンにマラソン大会への出場を促す。マラソン大会で優勝すれば賞金が貰えて、母親に入れ歯を買ってあげられると、キボンはマラソンの練習に励み、大会出場を果たすが・・・


実話がベースというのも、知的障害者がマラソンに挑むという設定もチョ・スンウ主演の『マラソン』(2005年 監督:チョン・ユンチョル)と同じで、『マラソン』のあとから公開されたこの作品は必ず『マラソン』と比較されてしまう運命にあるそうだ。

韓国映画界ってカブリものが多いのはなぜなのかしら。それほど極秘にプロジェクトが進行しているとも思えないのだけど(笑)。シン・ヒョンジュンいわく、製作準備に2年を費やしたそうだが、どれだけの労力や時間が注ぎこまれたかなんて、観客は過程ではなく出来上がったものでしか判断できない

で、何が言いたいかというと、『マラソン』を見ていなければ感動作だったけれど、『マラソン』を見た後では「『マラソン』に似た作品」という感想になってしまい、丁寧に作りあげられた作品なのにちょっともったいない気がした。

ただ、『マラソン』に涙しなかったのと同様、この作品も、お涙頂戴ものではなかったことが救われる。もともと KBS のドキュメンタリー番組をベースにしていることもあるが、ドキュメンタリーで仕立てに上げた方がよさそうな素材。脚色しすぎると観客が引いてしまうが、そこのところはギリギリという感じ。

コリアンシネマウィークの今回のテーマは「親子の絆」。母と息子の深い絆を見せるだけでは、ありきたりすぎると思っていたが、この作品では、母親が知的障害を持つ息子のキボンを家庭の中で「個」として扱っており、村のコミュニティの中でも独立した「個」として存在しているところが、馴れ合いや同情たっぷりのベタベタした人間関係でなくて良かったと思えた。

シン・ヒョンジュンとキム・スミは、昨年の TIFF で見た「家門の危機」でも、ヤクザ(組)を率いる母とヤクザの息子という母子設定で、コメディは2人ともお手のもので面白かったが、同じ親子設定でも、素材によってまったく違う側面を見せてくれたのは、さすがだなぁ~