Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

[ソウル] 女の戦い、でもホラーなの

2007-10-23 23:06:58 | K-Movie Columns


『宮女<궁녀>』
監督:キム・ミジョン

『正しく生きよう』の競合作『宮女』も見てきました。これは、史劇ミステリーというフレコミだったはずなのに、フタを開けてみたら内容はエグイし、ホラーじゃないですか・・・ 史劇は好きだけど、ホラーが苦手な私は涙が出そうでした。ホラーと知って見るのと、知らずに見るのとでは、大違いです。この作品については、ほとんど知識を持たずに見たのですが、ストーリーは難しくありません。たぶん、二度と観ないと思うので、とりとめなく感想を書き留めておきますが、ビジュアル重視の感想なので、あしからず。

冒頭からいきなりオドロオドロな雰囲気・・・ そして、女官の首吊り自殺からこの物語が始まり、その死の真相を検証、追究する女医と、後宮の女たちをめぐる作品です。もちろんミステリー仕立てでもあるのですが、史劇、ミステリー、サスペンス、そしてホラーとあれもこれもと要素が詰まっており、これをいろんな要素が楽しめる新しいジャンルと評価するか、ごちゃまぜでどれも中途半端と評価するかは、観客にゆだねられると思います。

Cine21のレビューは、前者に近い評価でいかにも評論家好み。個人的には、ジャンルはどうであれ、いろんな要素の面白さがあってもいいと思うのですが、何しろ、やや悪趣味と思われる描写が多くて、一観客として友人にはとてもお勧めはできません。
私の隣席の女性は、「ミッチョソ、ミッチョソ(狂ってる、狂ってる)」とつぶやきながら見ていましたが、ホント、その気持ちがよくわかりました。とあるネチズンの感想で、「ピザにコチュジャンをどっさり盛ったような作品」との一刀両断のコメントに笑ってしまいましたが、ある意味、怖いもの見たさ、話のタネに足を運んでみようかと思う観客が多くいるのではないでしょうか。そういう面では面白いかもしれません。

この作品の約半分(大げさかもしれませんが、そのぐらいの印象)は、女官いじめ、というより拷問場面なのです。どうしてそこまで見せなければならないのか、女の狂気でも見せたいのか、理解できませんでした。『血の涙』よりも、もっと生身の痛々しさが伝わってくる場面や、血が流れる場面が多く出てくるため、何度も目を覆いました。

18歳以下観覧不可だったのは、エロいからではなく(エロはほとんどなし)、この凄惨な場面の多さのせいだと思われます。

女性監督による女性が主役の映画(男性はほとんど出てきません)ということで、前評判も高く話題性もあるようですが、確かに後宮の女たちの生き様を容赦なく切り込んで描いたということは理解できるのですが、どこか肩に力が入りすぎているように思えました。

言い切ってしまうことはできませんが、どうも韓国の女性監督が撮った作品に共通したものがあるような気がして、イ・オニ監督の『肩ごしの恋人』でも同じように感じたことを思い出しました。つまり、女たちの抑圧された何かや、鬱憤、閉塞感にこだわりすぎているような、「女ならわかるわよ」というようなややお仕着せがましい面が否めないような・・・・。社会におけるジェンダーの位置づけに対する考え方の違いかもしれません。

色彩感覚は「赤」=血の色が基調になっていて、これも女性、特に母性の象徴のようでもあるようです。女官の衣装が、衣擦れの音が聞こえてこないキルティング仕立てで、優雅な女官のイメージを抑えた、軍隊の兵卒のようなイメージに見えるところがあります。

ホラーなのに、終わり方は何ごともなかったかのような静かなエンディングで、オチはあるのですが、あの非日常的な描写は何だったの?とポカンとしてしまいました。頭の中にこびりついた、悪夢のような場面はどうしてくれよう・・・と恨み節です(笑)。