
“白くても黒くても鳥は鳥。上辺だけの、色の違いに惑わされるのが悪いのさ”
HIPHOPのリズムに乗って駆け抜けて行ったあの鳥に妄想が広がりまくり。
王子を惑わす悪魔の化身か、
白鳥を装って王子を騙した黒鳥か、
或は、悪ふざけが過ぎて鴉に姿を変えられたやんちゃな白鳥の王子なのか
…最後の方全然「白鳥の湖」じゃないし。
HIPHOPは反体制の文化なのだそうでございます。
ていうか、ジャズでもロックでも、新しいものが生まれて来る時は大抵、権威や権力とは反対の方向から生まれて来るもんなんでしょうね。HIPHOPは歴史が浅い分、毒気も強く残っているのかも。
大ちゃんの「白鳥の湖」は、発想としては邪道なんだろうなあと思うのです。
本来、表現するべき音楽があって、その手段としての表現方法がある(はず)。
でもこのプログラムは意図的に本末転倒させてる感じで、まずHIPHOPという表現ありきで、次にその表現のための音楽として「白鳥の湖」を選んでるみたいですね。
フィギュアの世界では馴染みが薄いHIPHOPを使うに当たって、保険をかける意味でも曲自体はとっつきやすい曲、誰もが知っている曲を持って来た、という感じで。
…で、結果的に、HIPHOPの持つ毒っ気が、黒鳥or悪魔、とにかくダークサイドなキャラクターの邪悪さを上手い具合に表現してるような気がします。かっこいいなあブラックスワン。
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写真は、スケートアメリカでHIPHOP白鳥の衣装を見て、衝動的に作ってしまった髪飾り。作ってみたら派手過ぎて、どこにもつけて行けなくなりました。
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このプログラムのために、モロゾフさんが大ちゃんの一緒にダンス教室に通ったという記事を読んで、この人の野心というか向上心みたいなものを感じました。
貫禄あるからたまに忘れるけど、私より若いんですよね。三十路に突入したばっかりくらいで。まだまだ、彼自身表現者として成長して行きたいし引き出しも増やしたいし、勉強して視野を広げたいと思ってるんだろうなあと。
勿論、いくら斬新なプログラムを作っても滑ってくれる人がいなければ意味がない訳で、大ちゃんあってのあのプログラムであることは疑ってませんが。
なので多分、大ちゃんだけでなくモロゾフさんの方も成長している過程だと思うので、そういう意味でも、大ちゃんのこれからのプログラムの変化は楽しみだと思いました。
で、その大ちゃんの方なんですが。
「本当は嫌だった。プロのダンサーたちに『なんちゃって』だと思われたくなかった」
…彼らしい台詞ですね。あと、スケートの世界の外側からの視線を意識した発言ですねこれ。
多分彼が、スケートの世界の中での評価だけでなく、専門的なジャンルを超えた普遍的な「かっこ良さ」を追求する人だからこそ、フィギュアスケート自体には興味がなかった私みたいなのがひっかかったんだろうなとふと思いました。
「スケートの世界でどう評価されるのか?」ということだけではなくて、スケートを知らない、HIPHOPに親しんでる人たちに「COOL!」と言われるようなダンスを、スケート靴はいて踊れるか?という、2重の意味でのチャレンジだったんでしょうね、多分。
とんがってるなあ。かっこいい。
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ちょっと「白鳥の湖」のストーリーについても興味持って調べたら色々面白かったんですが、大ちゃんの演技とはほとんど関係ない話になるのでまた別の機会にやります。
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拍手コメントへの返信
11月8日
原作のイメージからすると間違ってない、寧ろ正しいロミオ像なんですが、なんだか新鮮ですよね。
11月11日
そう、ロマンティックな場面のイメージが強かったんですが、ストーリーを通してみると結構ケンカっ早いんですねロミオって。
…なんか、大ちゃんのロミオに対しては、「あ、そういえばロミオってこういうヤツだった」みたいな反応が多くて面白いです。