ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

ケータイ捜査官7で泣いてしまった

2008-08-07 14:43:24 | 特撮
夏によくある戦争ネタだと思ってたんですが、脚本が良く出来ていたのと、若き日の清一さんの演技が悲壮感に溢れてて真に迫っていたもので…。

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ケイタは当初、太平洋戦争当時の日本を遠い他人事だと感じている現代の高校生として登場する(最初に書いていたレポートの場面でそれが示されている)。
しかしその後、ハツエさんと出会う。六十年以上経った今でもハツエさんに取っては「終わっていない」出来事だと分かる。
そして電波を遮断する実験の最中、過去から電話がかかって来る…。

若き日の清一さんは、ケイタとほとんど同世代の「少年」に見えます。だからケイタも、自然に感情移入して行ったように見えます。
ドラマ全体を通して、ケイタは「優しい」=「他人の気持ちがよく分かる子」として描かれていたから、彼が清一さんの気持ちも、その後何十年も夫を想って一人で生きて来たハツエさんの気持ちもよく理解していたことも分かる。だからこそなりふり構わず清一さんを助けようとした。その結果…。

一連の出来事を経たケイタに取って、最早戦争は他人事ではない。それが最後の「レポート書き直すよ」に繋がる訳ですね。

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タイムパラドックス的な観点から言うと、「過去からの電話」というのはSFでは割と定番なネタなのかな、と思いました。「敵は海賊・海賊課の一日」にも出て来たし。
その「海賊課の一日」を参考にして考えると『人間が直接認識できる時間は「現在」だけ。「過去」は記憶に過ぎず、それが本当に現実だったのかどうかは誰にも分からない』ということになります。
『清一さんが生きていて、ハツエさんと共に沢山の子供や孫に囲まれている』という「現在」があり、ケイタとセブン以外はその「現在」に矛盾しない過去の記憶を持っている以上、それが正しい「現在」ということになる…のかな。
過去に歴史の改変が行われていたとしても、それに合わせて「記憶」が書き換えられてしまえば何の矛盾も起こらないということかと思いました。
今回は例外的に、ケイタとセブンだけには『夫を戦争で失くして一人で生きて来たハツエさん』という「記憶」が残ってしまいましたが…。
それはきっと、清一さんがかつて自分を生かしてくれた「未来からの不思議な通信」を「現実」として認識していたからではないでしょうか。ラスト近く、言葉は少ないけれど、清一さんが確かにケイタのことを覚えていたことが分かる場面が良かったです。
今となっては、ケイタとセブンだけが覚えている『夫を戦争で失くして一人で生きて来たハツエさん』の記憶は、清一さんの中にある「あの時、あの不思議な声が自分を引き止めてくれなかったら…」という「仮定の未来」となっているのでしょう。

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30分という短い時間では書き切れなかった事もあると思うし、実際には戦闘機で戦ってる最中にあんな延々長電話するのは無理だろうとか色々ありますが、良い話でした。

そして最後に。ドラマの清一さんは生きて帰って来て幸せになったけれど、実際にはそうでは無かった人も大勢いること、そして歴史が変わる前のハツエさんのような女性も決して少なくはなかったことを、私たちは覚えておかなくてはいけないんじゃないのかなと思います。