2006年5月24日 音楽美学講座
失った恋と書いて失恋と読むわけですが
今回の音楽美学講座は何故かそんな気分を味わった、、、
楽曲分析の曲は、前回予告のあったウェザーリポートの
「プラザリアル」
この曲のコードの構造はモードスケールでも
ダイアトニックスケールでもない。
(と、この時は勝手に解釈していたけれど
後の講義でハイブリッドコードは
モードのうちだと菊地さんが仰ってました、、、とほ)
初めて触れる「ハイブリッドコード」※
<※カウンターバークリーであるLCCメソッドを作った
ベーシストの濱瀬元彦氏による命名。分数コード。
分子が分母の構成音にならない、などの特徴がある>
参考テキストはこちらをどうぞ
菊地さんは、あらかじめ現在の
この講義が行き着く、楽理の最終段階を提示された。
<USTの非機能連結>
(UST=Upper structure triad :上部構造3声和音)
<単一のメロディーを無限にリハーモナイズ>
これにはPOPSの王道である16世紀ヨーロッパに
端を発した機能和声4度の動きを主とする
ケーデンス=「コード進行の原動力」とは無関係な
独自の運動力がある。「モード」よりも抽象的で
コラージュ的なかんじがする。でもモードみたいに
気取ってないし割と愛嬌があるかんじ(笑)
こんなふうな小難しい表題の中身に
少しでも想像がついている、という事は
やはり少しは私もこの世界に足を踏み入れたのだ、
と実感するのだけど本気でやるなら
この道は一生続く未知なので
考えようによっては怖い道のりだけど
考えようによってはとてつもなく幸福な道で
どちらになるのかは自分でしか選べない。
先に、最終場所を提示される、という順序の入れ違え、
というか飛び級というか
そういう考え方、やり方って好きなのだ。
順番が前後する、、、未来に既視感を憶えるような
時間軸、次元、空間のずれ。アンチクロノス的だ。
例えば、中学か高校を卒業したら一旦
社会に出て最低1年間くらい働くシステムとか
世間を見る目が変わって、いいと思うのだけど(笑)
<胸さわぎについて>
ほんとうに美しい曲。この曲をこのタイミングで
菊地さんのチョイスで初めて聴けることを
幸福に思っていた。でも聴きながら
何故か妙な胸騒ぎがしてくる。
これまでに聴いた事のない美しさ。
抽象と情感が混在しているけれど
両者は対立せずに屹立しつつ、調和している。
対位法の音楽のよう。
先日、友人からLeny AndradeのCDを頂いて
POPだけど重く中身の濃いボサノバを聴いていて
その優れたアレンジとPOPさが耳に残っていた。
スキャット好きとしてはたまらないわけだけど
こういう音楽がすごく好きだ、ということを
自覚しているけれど初めて聴いたこの曲には
POPな楽曲を好きなこととは対照的とも言える
まるで違う世界があったのだった。
どうやら私は分散したり迂回した聴き方で
このような音楽に遠巻きに接触していたようだ。
ジャコパストリアスや彼に影響を受けたイケメン
ベーシスト、マーカスミラーがやったカバーや
(「ジュジュ」は数年前やっていたバンドで
演奏したことがあったことを思い出した)
同じようなハードコアジャズ(?)くくりの
パットメセニーなどを聴いていた。
音楽史的なことは全く知識がないのだけれど、、、
彼らの表現の特徴はハードコアな(つまり高度でハードな)
音楽理論を用いつつも、美しくポップな部分があり
人気があって実際に売れている、という
独特なポジションを持っている、とのことだった。
なるほど、そうだったんだ。と納得。
メセニーの音楽性は嫌いじゃなかった。
漠然と感じていた感覚的魅力が理論で裏付けられて納得する。
ジャコパストリアスの音楽は吸引力のような
狂気と理性の両義的なものが炸裂してるような(笑)
強烈なものがあって少し怖かった…
バッハに感じるような音楽性を感じたのを記憶している。
楽曲分析が進む、胸騒ぎの原因が見えて来る。
ここで使われている不思議な調性を感じる
「ハイブリッドコード※」の特徴をメモ
バークリーメソッドでは、この辺りの音楽理論になると
押し黙る場合が多いとのことだった。
・ダイアトニック環境に居ない
・テンションがない(コードは4音のみ)
居場所(調性)の固定が不可能
・メロディが語って初めて自らが何かを言う人のように(笑)
無意識的で受動的→下方倍音列で説明が可能な部分あり
(ダイアトニックは上方倍音列)
つまりダイアトニックスケールにおける(POPSで用いられる)
楽曲はコードにメロディーがある程度現れているけれど
ハイブリッド…にはそれがない。
そしてその分メロディの存在が重要になって
その調性は「濃いけれどシンプル」とのこと。
こういった概念に何故か強く惹かれる。
<未知の味のこと>
これまでに無い概念を持ったこの楽曲の構造。
この曲の特徴は(前回も書いたけど)
10回メロディーが繰り返され
一度無調になったりするけれど
再び美しいメロディーのフレーズが出て来たり、と
いうかんじ。これだけ聴いても極めて魅力的で
私には興味深いものだった。
たとえば漠然と、こんな味の御馳走があったらいいなと
想像したとする。でも、それをかつて食べたことはないし
未知の素材の調理法を知らない。火加減はどのくらい、とか
揚げたほうがいいのか焼いたほうがいいのか、
ソースなどの味付けは何が一番合うのかとか、皆目わからない。
他人が作ったそんな料理を頂いたとき、
自分のこれまでのあらゆる五感と記憶を使って
材料と味覚や調理法を回帰させて
未知の素材を想像上で料理をして味見する…
そんなふうに聴いていた。
この音楽の作曲概念は最も音楽家の
「能動的なクリエイティビティが試される」との事で
以前、初等科の時の授業で菊地さんが言っていたみたいに
自宅に帰ったら「パソコンのキーボードじゃなく
ピアノのキーボードを」叩きたくなった(笑)
胸騒ぎがしたのは、このような、
これまで知りたくて知らなかった音楽の概念を知って
耳が傾けば、たった今魅力的に感じていた幾分単純な
いままで好きで聴いていたポップスの聴こえ方が
変わってしまうような予感がしたから。
その事を考えると、とても切なくて
何かとお別れをするようで胸騒ぎがしたのだった。
今回のハイブリッドコードの概念は腑に落ちることが多く
いつものように混沌とした感覚がなくて
とてもわかりやすかった。そのせいなのか
いつになく頭を使っていたようで(笑)
学校の帰り道滅多にしない頭痛が起きて
帰宅してからも頭が割れそうに痛かった。
お風呂に入って幾分静まったけれど、、、
生徒さんと談笑する菊地さんを横目にしながら
(今日の菊地さんは無精ヒゲを蓄えていて
帽子を被っていて<風雨でヅラが飛ぶから?笑>
身体の線が見える素材のカットソーを来ていて
かなり素敵でした)5月にしては冷たすぎる
雨のなか、東京駅に足早に向かいながら
私はPOPな表現に恋をしたのだから
聴こえ方が変わってもきっと
またここに戻ってくるだろうと考えていた。
<BODY>
<script type="text/javascript" src="http://www.research-artisan.com/userjs/?user_id=20060529000243138"></script><noscript></noscript>
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失った恋と書いて失恋と読むわけですが
今回の音楽美学講座は何故かそんな気分を味わった、、、
楽曲分析の曲は、前回予告のあったウェザーリポートの
「プラザリアル」
この曲のコードの構造はモードスケールでも
ダイアトニックスケールでもない。
(と、この時は勝手に解釈していたけれど
後の講義でハイブリッドコードは
モードのうちだと菊地さんが仰ってました、、、とほ)
初めて触れる「ハイブリッドコード」※
<※カウンターバークリーであるLCCメソッドを作った
ベーシストの濱瀬元彦氏による命名。分数コード。
分子が分母の構成音にならない、などの特徴がある>
参考テキストはこちらをどうぞ
菊地さんは、あらかじめ現在の
この講義が行き着く、楽理の最終段階を提示された。
<USTの非機能連結>
(UST=Upper structure triad :上部構造3声和音)
<単一のメロディーを無限にリハーモナイズ>
これにはPOPSの王道である16世紀ヨーロッパに
端を発した機能和声4度の動きを主とする
ケーデンス=「コード進行の原動力」とは無関係な
独自の運動力がある。「モード」よりも抽象的で
コラージュ的なかんじがする。でもモードみたいに
気取ってないし割と愛嬌があるかんじ(笑)
こんなふうな小難しい表題の中身に
少しでも想像がついている、という事は
やはり少しは私もこの世界に足を踏み入れたのだ、
と実感するのだけど本気でやるなら
この道は一生続く未知なので
考えようによっては怖い道のりだけど
考えようによってはとてつもなく幸福な道で
どちらになるのかは自分でしか選べない。
先に、最終場所を提示される、という順序の入れ違え、
というか飛び級というか
そういう考え方、やり方って好きなのだ。
順番が前後する、、、未来に既視感を憶えるような
時間軸、次元、空間のずれ。アンチクロノス的だ。
例えば、中学か高校を卒業したら一旦
社会に出て最低1年間くらい働くシステムとか
世間を見る目が変わって、いいと思うのだけど(笑)
<胸さわぎについて>
ほんとうに美しい曲。この曲をこのタイミングで
菊地さんのチョイスで初めて聴けることを
幸福に思っていた。でも聴きながら
何故か妙な胸騒ぎがしてくる。
これまでに聴いた事のない美しさ。
抽象と情感が混在しているけれど
両者は対立せずに屹立しつつ、調和している。
対位法の音楽のよう。
先日、友人からLeny AndradeのCDを頂いて
POPだけど重く中身の濃いボサノバを聴いていて
その優れたアレンジとPOPさが耳に残っていた。
スキャット好きとしてはたまらないわけだけど
こういう音楽がすごく好きだ、ということを
自覚しているけれど初めて聴いたこの曲には
POPな楽曲を好きなこととは対照的とも言える
まるで違う世界があったのだった。
どうやら私は分散したり迂回した聴き方で
このような音楽に遠巻きに接触していたようだ。
ジャコパストリアスや彼に影響を受けたイケメン
ベーシスト、マーカスミラーがやったカバーや
(「ジュジュ」は数年前やっていたバンドで
演奏したことがあったことを思い出した)
同じようなハードコアジャズ(?)くくりの
パットメセニーなどを聴いていた。
音楽史的なことは全く知識がないのだけれど、、、
彼らの表現の特徴はハードコアな(つまり高度でハードな)
音楽理論を用いつつも、美しくポップな部分があり
人気があって実際に売れている、という
独特なポジションを持っている、とのことだった。
なるほど、そうだったんだ。と納得。
メセニーの音楽性は嫌いじゃなかった。
漠然と感じていた感覚的魅力が理論で裏付けられて納得する。
ジャコパストリアスの音楽は吸引力のような
狂気と理性の両義的なものが炸裂してるような(笑)
強烈なものがあって少し怖かった…
バッハに感じるような音楽性を感じたのを記憶している。
楽曲分析が進む、胸騒ぎの原因が見えて来る。
ここで使われている不思議な調性を感じる
「ハイブリッドコード※」の特徴をメモ
バークリーメソッドでは、この辺りの音楽理論になると
押し黙る場合が多いとのことだった。
・ダイアトニック環境に居ない
・テンションがない(コードは4音のみ)
居場所(調性)の固定が不可能
・メロディが語って初めて自らが何かを言う人のように(笑)
無意識的で受動的→下方倍音列で説明が可能な部分あり
(ダイアトニックは上方倍音列)
つまりダイアトニックスケールにおける(POPSで用いられる)
楽曲はコードにメロディーがある程度現れているけれど
ハイブリッド…にはそれがない。
そしてその分メロディの存在が重要になって
その調性は「濃いけれどシンプル」とのこと。
こういった概念に何故か強く惹かれる。
<未知の味のこと>
これまでに無い概念を持ったこの楽曲の構造。
この曲の特徴は(前回も書いたけど)
10回メロディーが繰り返され
一度無調になったりするけれど
再び美しいメロディーのフレーズが出て来たり、と
いうかんじ。これだけ聴いても極めて魅力的で
私には興味深いものだった。
たとえば漠然と、こんな味の御馳走があったらいいなと
想像したとする。でも、それをかつて食べたことはないし
未知の素材の調理法を知らない。火加減はどのくらい、とか
揚げたほうがいいのか焼いたほうがいいのか、
ソースなどの味付けは何が一番合うのかとか、皆目わからない。
他人が作ったそんな料理を頂いたとき、
自分のこれまでのあらゆる五感と記憶を使って
材料と味覚や調理法を回帰させて
未知の素材を想像上で料理をして味見する…
そんなふうに聴いていた。
この音楽の作曲概念は最も音楽家の
「能動的なクリエイティビティが試される」との事で
以前、初等科の時の授業で菊地さんが言っていたみたいに
自宅に帰ったら「パソコンのキーボードじゃなく
ピアノのキーボードを」叩きたくなった(笑)
胸騒ぎがしたのは、このような、
これまで知りたくて知らなかった音楽の概念を知って
耳が傾けば、たった今魅力的に感じていた幾分単純な
いままで好きで聴いていたポップスの聴こえ方が
変わってしまうような予感がしたから。
その事を考えると、とても切なくて
何かとお別れをするようで胸騒ぎがしたのだった。
今回のハイブリッドコードの概念は腑に落ちることが多く
いつものように混沌とした感覚がなくて
とてもわかりやすかった。そのせいなのか
いつになく頭を使っていたようで(笑)
学校の帰り道滅多にしない頭痛が起きて
帰宅してからも頭が割れそうに痛かった。
お風呂に入って幾分静まったけれど、、、
生徒さんと談笑する菊地さんを横目にしながら
(今日の菊地さんは無精ヒゲを蓄えていて
帽子を被っていて<風雨でヅラが飛ぶから?笑>
身体の線が見える素材のカットソーを来ていて
かなり素敵でした)5月にしては冷たすぎる
雨のなか、東京駅に足早に向かいながら
私はPOPな表現に恋をしたのだから
聴こえ方が変わってもきっと
またここに戻ってくるだろうと考えていた。
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