言葉による音楽的な日々のスケッチ

作曲講座受講日記と、言葉による音楽的日々のスケッチを記録

バート・バカラックのコンサートへ

2008-02-17 01:14:25 | POPS(商業音楽)
2月16日土曜日


国際フォーラムで行われた
バート・バカラックのコンサートへ行きました。




じつに11年ぶりの来日で
私には初めてのバカラックコンサート。


土曜の初日ということもあって会場はほぼ満席、
外国人の姿や当日券を求める人の姿も多く、
年齢層も幅が広かった。


多くの人がそうであるように
私にとってもバカラックの楽曲は
記憶と共に在って、特別なもの。


音楽家達から今回のコンサートに向けた
コメントを読んで改めて彼の人気の高さを
感じていました。


さらにここ数年間に
映画美学校の音楽理論講座で
恋の面影
と、雨にぬれても が取り上げられ、

菊地成孔さんによる楽曲分析から
バカラックの音楽作品に対する
新たな解釈、視点も生まれたこと、


去年の秋にミシェル・ルグランも来日して、
生きながらにして伝説的存在の
両者の来日を心待ちにしていたこともあり、

ひときわ忘れがたいコンサートになりました。



フルオーケストラ、男女ヴォーカル3名という
超豪華な編成で演奏された最初の曲は、

what the world needs now is love
(邦題:世界は愛を求めている)


著名な曲たちがワンコーラスの
メドレー形式で演奏されていく。

数時間のうちに収まらないほどの、ヒット曲の多さ。


ヴォーカルをとっていないけれど
ピアノを弾きながら中腰の姿勢で
オーケストラを指揮をしているバカラック、
時折満員の観客席のほうにも顔を向けていて


演奏家のサービス精神と
コンポーザーの厳しさの両側面を感じられる。

また、ノリノリで生き生きした様子は
80歳の年齢を疑いたくなるほど。


いっぽうの観客は耳を澄ますべく
水を打ったような静けさである。


しかし、バカラック本人がステージで
初めてヴォーカルをとった「恋の面影」の
イントロ部分で、
弾けるような喝采と声援が起きた。

ふりしぼり、ささやくようなヴォーカルに
じ~んとする。

ジョビンと同じように、
この方はあまり自分では歌わない。
(少なくともCDには多くは収録されていない)

オーケストレーションやアレンジの美しさ、
和声の変化による曲の感情の動きに
悲しくも無いのに勝手に涙が溢れてくるのは
私のおかしな癖なのだが、

音楽が演奏される場に
作った本人と
それを奏でる人々、

彼の音楽を愛する聴衆が居て

それら全ての人の思いを音楽が繋ぎ
今も、これからも
結び続けていくことを感じると
やはり心が震えるのでした。


喝采は波のように鳴り続け、
一人また一人と立ち上がって

会場のほぼ全員による
スタンディングオベーションと
2度のアンコールで
コンサートは幕を閉じました。

激しいロックや盛り上がるクラシックでもなく
優しい恋の歌が主なポップスのコンサートで
満場のスタンディングオベーションとなった場面は
さすがに感動的で、


アメリカに住み、恋の歌を作る
もう老齢のバカラックが
日本のコンサートで
始まりと終わりに選んだ曲は
「世界は愛を求めている」だったことも
このコンサートへの感慨をさらに深めるのでした。



What The World Needs Now Is Love

作曲:Burt Bacharach
作詞:Hal David
1965年


今、世界が求めているもの、それは愛、やさしい愛
手に入れることがむずかしい、たったひとつのもの
今、世界が求めているもの、それは愛、やさしい愛
だれかへの愛ではなく、すべての人々への愛を

神様、もう、これ以上山はいりません
登るための山も丘も十分あるんです
渡るための海や川も十分あるんです
最後の最後まで十分あるんです

神様、もう、これ以上墓地はいりません
とうもろこし畑と麦畑も十分あるんです
輝く太陽の光も月の光も十分あるんです
だから神様、聞いてください
もし、お知りになりたいのなら

























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鳴っていないものを鳴らす

2008-02-07 00:43:06 | 作曲理論講義/受講録
新しいアルバムThe revolution will not be computerized
「革命はコンピューター処理されない」を聴く。




私がとりわけ気に入ったのは5番目のInvocation


残念ながら全部が耳に入るほど
JAZZ耳には未だなりきれていないPOPS耳の私(笑)


これまでなら、難解なことをやってる音楽、とか
やっぱりJAZZは難しいな~と通り過ぎるか、
あんまり耳に入ってこなかったかもしれない。


でも、今回のこのアルバムの
(特に)「Invocation」を何度か聴いているうち

サックスとトランペットによるユニゾンの、
魅力的なフレーズに魅きこまれて
幾つかの箇所が耳に残り始めた。



音楽を聴いていて、
旋律やリズムが耳に残る、ということは
普通によくあるけど


簡単に口ずさむことは出来ないのに
いつまでも記憶に残るような、
ポリフォニー(多旋律)から成る旋律同様、



やはり簡単に口ずさめない、複雑な「リズム」が
この曲からは耳と感覚(理論というよりも
身体的記憶)に強く残るのだった。


こういうの、他の音楽では感じたことがない。



「リズム」と書いたけれど、それだけじゃなく、
演奏的「タイミング」とか「間合い」とか、
「呼吸」と言ってもいいのかもしれない。


そういった絶妙なタイミングによる音楽的な何かが
それまでになかった自分の感覚に
刻まれていくかんじ、、、?が、する。



聴いていて癒される音楽、という
ものではないと思うけど

別な意味で癒される、というか
脳が刺激的にマッサージされているみたい(笑)


これってバッハの音楽を聴いていても
感じるんだよな~フーガとかに。。。


バッハの音楽に在るのは
ポリリズムじゃなくてポリフォニーのほうなので、
だからそれのリズム版というか(笑)



ポリリズムな音楽とは、3拍子でも、
4拍子でもビートを取ることが可能なのだけど、、、


といった私の拙い説明よりも(笑)


映画美学校時代に菊地さんによる「律動」の
もっとも記憶に残った特別講義のノートを
ざっとひも解いてみる事にしましょう。

・与えられた単位時間(1拍)を
自力で(3、4、5拍子に)等分出来る能力(※)


※この能力は「「ダンス」する能力」にたとえられ、
「自分で作った秩序に融和出来る能力」とも表現された。
(以上、2005年:映画美学校音楽美学講座、特別講座
私のノォトより)


自分で作った秩序に融和出来る能力・・・って
何だかものすごく魅惑的な響きじゃないですか?(笑)



Invocationを聴いていると
3拍子とも4拍子とも捉えようと思えば捉えられる、
複雑な調子のリズムの中に、
(4拍子の要素のほうを強く感じられる
ベース、ドラムから始まり、
どちらかというと3拍子のほうを強く感じられる
サックスとトランペットのユニゾンが重なっていく。
ピアノは双方を結んでいるかんじがする。)


偶数的(=割り切れる)リズムが現れて、
(ピアノのソロのところで一瞬きれいな
4拍子に変わる部分がある)その調和感のあと


再び顕われる奇数的(=割り切れない)リズムが
交互に繰り返されて


聴いていくうち、そのリズムを知った耳には

もはや割り切れないリズムをも

自らのリズムで刻むことが
可能となっている、というように感じる。


そして双方のリズムを結ぶように
調和的に奏でられる美しい
ピアノのフレーズとタイミングに心を奪われます。
何よりドラムとベースの演奏が凄い。よく
リズムをキープ出来るな、と思うくらい。

(と思ったら同時演奏はしていないのではないかと思われます。
以下の記事で実験的試みだと知りました。)

記事を引用します。

「ジャズアルバムとは、メンバーが同じ場所で同時に演奏した音を
そのまま封じ込めた作品、そんな常識をひっくり返したかったという。
録音時には曲のモチーフだけを用意して、自由きままに演奏。
編集作業で音の断片を切り張りし、原形をとどめないほど
整然としたジャズにしたてあげた。ちょうど映画の編集作業のように。」

「音・切り張りでジャズ 菊地成孔、新グループ始動」
<朝日新聞記事より>

*****

自分の感覚を新たにされるような一瞬を
曲が流れる数分間のうちに感じたのでした。


こうした音楽に在る時間には



無いはずの「鼓動」を感じたり



脈のないかのような物事に脈を感じたり



不在の中に存在を感じたり



生のないかのような人に生を感じるような

(こうしたことは「官能的」と言ってもいいと思う)

もっとも、今を生きていると思える
ジャズ的表現なのでした。


普通に聴くと骨太でカッコいい
お洒落なジャズ、なのもまた素敵(笑)



先述の律動講義で赤字で書かれていた
「ポリリズムの効用」とも言える
菊地さんの言葉で締めくくりましょう。


それは

「鳴っていないものを鳴らす能力」

ということで、やっぱり官能的(笑)

そう、官能的なアルバムでした。

ペン大はこのアルバムの編成による
ダブセクステットのツアーなので、
春を感じられる頃までお休みです。
ライヴいいだろうなぁ。Invocationも
演奏されるのだろうか。この超絶技巧的な演奏、
生で、出来るのだろうか。
だとしたら凄い時間に立ち会うことになりそう。
行きたい・・・(笑)

春が待ち遠しいな。










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