バブル崩壊以降、政府やメディアは何度となく、「地価は下げ止まった」「底を打った」と繰り返してきた。
はたして、本当なのだろうか。
不動産は、買っても安全な資産なのだろうか?
24日、こんなニュースがあった。
復興住宅値下げ「当然」 神戸地裁、住民の訴え棄却
2005年11月25日
兵庫県住宅供給公社が阪神大震災後に震災復興住宅として建てた同県芦屋市のマンションを、分譲開始から3年で半額に値下げしたため、資産価値が不当に下がったとして、マンションの住民が同公社に総額6億3200万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が24日、神戸地裁であった。下野恭裕裁判長は「値下げの可能性は市場原理からいって当然で、値下げ後の価格も相場からかけ離れていたとは認めがたい」などとして住民側の請求を棄却した。
訴えていたのは、同市陽光町のマンション「マリナージュ芦屋」(鉄筋12階建て、203戸)の住民ら96人。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200511250015.html
このマンション(203戸)は震災復興住宅として、1998年10月から、被災者を優先に分譲を始めた。平均販売価格は約3400万円だった。しかし、2003年に売れ残った70戸を半額で販売することを決定。それに対して、住民側は資産価値が下がったとして損害賠償請求を起こしていた。
この裁判の判決文の中に「市場原理からいって当然」という表記が出てくるが、裁判長は、日本の不動産価格が「市場原理」で決定されていると本気で思っているのだろうか。いや、おそらくそんなことはないだろう。裁判長は、日本の不動産価格の仕組みを知っているはずだ。カラクリを知っていて、こうした判決を下したのだ。
日本の不動産価格には、「市場原理」などほとんど働いてはいない。
「日本の地価は不動産鑑定士が鉛筆をなめながら国土交通省や国税庁のお役人の思いを忖度(そんたく)しながら決めている。事実上の官製相場だ。」
(『負け組のスパイラルの研究』105P 立木信著 光文社)
現在の地価は、バブル以前の1980年代の水準とほぼ変わらない。つまり、もとに戻っただけだ。しかもこれは、決して適正な水準ではない。日本の不動産価格は、官民ぐるみで意図的に高値に設定されている。
バブルの崩壊で、日本の「土地神話」も崩壊したが、「土地本位制」が崩壊したわけではない。というより、今後も「土地本位制」を維持しなければならない。そのためには、国民にどんどん不動産を購入させて、「土地本位制」を支えてもらわなければならない。したがって、不動産価格は実勢価格よりも高いほどよい。そして、不動産購入を促進するため、メディアには「地価は下げ止まった」「底を打った」と宣伝させる。
「銀行や役所は、庶民に事業のカネをなかなか貸さないが、住宅だけはふんだんに長期融資してくれる。おかしいと気づかないか。(中略)地価をあげるために、必要以上に貸し込むからだ。(中略)庶民の借金で地価を支え、ゼネコンなどに貸したカネのクズ土地担保の価格を何とか上げたい一心なのだ。」
(同 『負け組のスパイラルの研究』100P)
そう、日本の地価が下がればゼネコン所有の土地がさらに価値を失う。融資している銀行の不良債権も増していくのだ。とにかく、国民に不動産を購入させて、不動産価格を維持しなければならないのだ。
日本の賃貸住宅の家賃が、非常に高く設定されているのもこのためだ。同程度の物件なら、家賃を払うよりも住宅ローンの方が安い。同じカネを払うなら、賃貸よりも、買った方が得と考えるのは当然だ。こうして多少無理をしてでも不動産を買ってしまうのだ。しかし、それは、不動産価格が変動しない、建物は老朽化しないという前提で成り立っている。しかし、日本の地価は、これからも確実に下がる。しかも、建物はローンが終わる頃には、建て替えが必要なほど痛んでいる。
いまは、国民にあの手この手で不動産を購入させて、「土地本位制」を無理に維持している。しかし、もはや「土地神話」は再来しない。神話は、あくまで神話でしかなかったのだ。
では、日本の地価の実際の価値はいったいどれくらいなのだろうか?
「日本の土地不動産の評価額(実質価値)は現在でもGDPの2倍から3倍程度だ。つまり1000兆円超の架空市場だ。(中略)米国では不動産の価格はGDPとほぼ等価なので、資本主義のグローバル化がさらに進み国際的な評価を強いられると、日本の土地は少なくとも半値になる。」
(同 『負け組のスパイラルの研究』103P)
神戸の震災復興住宅の価格が半額になったのは、それが本来の「市場価値」だったからだ。裁判長は、「市場原理からいって当然」と判決しているが、それは、被災者が「不当な価格」で購入させられたという事実を無視している。これが、日本の不動産と司法の実態なのだ。
また、今回の「耐震強度偽装事件」でも、賃貸マンションは取壊して再建すればカタがつくが、分譲マンションはそうはいかない。誰もそんなところに住み続けたくないが、払い戻しや、再建がなされる見込みはない。あまりにも額が巨大すぎるからだ。業者は、涼しい顔で「公的資金での救済」などと口にしているが、これも無理な話だ。
これから住民は、長い裁判闘争に入ることになるだろう。しかし、国家ぐるみで「土地本位制」を維持しようとしている現状で、住民に勝ち目があるとは思えない。日本の司法は、被災者にでさえ、背を向けるのだから。
「土地本位制」の維持は遠からず崩壊するだろう。
いま、不動産を購入することはけっしてお薦めできない。
はたして、本当なのだろうか。
不動産は、買っても安全な資産なのだろうか?
24日、こんなニュースがあった。
復興住宅値下げ「当然」 神戸地裁、住民の訴え棄却
2005年11月25日
兵庫県住宅供給公社が阪神大震災後に震災復興住宅として建てた同県芦屋市のマンションを、分譲開始から3年で半額に値下げしたため、資産価値が不当に下がったとして、マンションの住民が同公社に総額6億3200万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が24日、神戸地裁であった。下野恭裕裁判長は「値下げの可能性は市場原理からいって当然で、値下げ後の価格も相場からかけ離れていたとは認めがたい」などとして住民側の請求を棄却した。
訴えていたのは、同市陽光町のマンション「マリナージュ芦屋」(鉄筋12階建て、203戸)の住民ら96人。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200511250015.html
このマンション(203戸)は震災復興住宅として、1998年10月から、被災者を優先に分譲を始めた。平均販売価格は約3400万円だった。しかし、2003年に売れ残った70戸を半額で販売することを決定。それに対して、住民側は資産価値が下がったとして損害賠償請求を起こしていた。
この裁判の判決文の中に「市場原理からいって当然」という表記が出てくるが、裁判長は、日本の不動産価格が「市場原理」で決定されていると本気で思っているのだろうか。いや、おそらくそんなことはないだろう。裁判長は、日本の不動産価格の仕組みを知っているはずだ。カラクリを知っていて、こうした判決を下したのだ。
日本の不動産価格には、「市場原理」などほとんど働いてはいない。
「日本の地価は不動産鑑定士が鉛筆をなめながら国土交通省や国税庁のお役人の思いを忖度(そんたく)しながら決めている。事実上の官製相場だ。」
(『負け組のスパイラルの研究』105P 立木信著 光文社)
現在の地価は、バブル以前の1980年代の水準とほぼ変わらない。つまり、もとに戻っただけだ。しかもこれは、決して適正な水準ではない。日本の不動産価格は、官民ぐるみで意図的に高値に設定されている。
バブルの崩壊で、日本の「土地神話」も崩壊したが、「土地本位制」が崩壊したわけではない。というより、今後も「土地本位制」を維持しなければならない。そのためには、国民にどんどん不動産を購入させて、「土地本位制」を支えてもらわなければならない。したがって、不動産価格は実勢価格よりも高いほどよい。そして、不動産購入を促進するため、メディアには「地価は下げ止まった」「底を打った」と宣伝させる。
「銀行や役所は、庶民に事業のカネをなかなか貸さないが、住宅だけはふんだんに長期融資してくれる。おかしいと気づかないか。(中略)地価をあげるために、必要以上に貸し込むからだ。(中略)庶民の借金で地価を支え、ゼネコンなどに貸したカネのクズ土地担保の価格を何とか上げたい一心なのだ。」
(同 『負け組のスパイラルの研究』100P)
そう、日本の地価が下がればゼネコン所有の土地がさらに価値を失う。融資している銀行の不良債権も増していくのだ。とにかく、国民に不動産を購入させて、不動産価格を維持しなければならないのだ。
日本の賃貸住宅の家賃が、非常に高く設定されているのもこのためだ。同程度の物件なら、家賃を払うよりも住宅ローンの方が安い。同じカネを払うなら、賃貸よりも、買った方が得と考えるのは当然だ。こうして多少無理をしてでも不動産を買ってしまうのだ。しかし、それは、不動産価格が変動しない、建物は老朽化しないという前提で成り立っている。しかし、日本の地価は、これからも確実に下がる。しかも、建物はローンが終わる頃には、建て替えが必要なほど痛んでいる。
いまは、国民にあの手この手で不動産を購入させて、「土地本位制」を無理に維持している。しかし、もはや「土地神話」は再来しない。神話は、あくまで神話でしかなかったのだ。
では、日本の地価の実際の価値はいったいどれくらいなのだろうか?
「日本の土地不動産の評価額(実質価値)は現在でもGDPの2倍から3倍程度だ。つまり1000兆円超の架空市場だ。(中略)米国では不動産の価格はGDPとほぼ等価なので、資本主義のグローバル化がさらに進み国際的な評価を強いられると、日本の土地は少なくとも半値になる。」
(同 『負け組のスパイラルの研究』103P)
神戸の震災復興住宅の価格が半額になったのは、それが本来の「市場価値」だったからだ。裁判長は、「市場原理からいって当然」と判決しているが、それは、被災者が「不当な価格」で購入させられたという事実を無視している。これが、日本の不動産と司法の実態なのだ。
また、今回の「耐震強度偽装事件」でも、賃貸マンションは取壊して再建すればカタがつくが、分譲マンションはそうはいかない。誰もそんなところに住み続けたくないが、払い戻しや、再建がなされる見込みはない。あまりにも額が巨大すぎるからだ。業者は、涼しい顔で「公的資金での救済」などと口にしているが、これも無理な話だ。
これから住民は、長い裁判闘争に入ることになるだろう。しかし、国家ぐるみで「土地本位制」を維持しようとしている現状で、住民に勝ち目があるとは思えない。日本の司法は、被災者にでさえ、背を向けるのだから。
「土地本位制」の維持は遠からず崩壊するだろう。
いま、不動産を購入することはけっしてお薦めできない。