laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

冥土の飛脚

2008-02-08 | spectacles

国立劇場でかかる文楽をほぼ欠かさず観るようになって一年?二年?

歌舞伎みたいにお勉強もしないまま、相変わらずど素人レベルで楽しんでます。

 

今日の冥土の飛脚が、封印切や新口村のもともとの原作だということは知っていたけど、ここまで設定が違ってるとは知らなかった。

八右衛門さん、いい人じゃないですか。
友のためを思ってかばいもすれば苦言も呈す。
原作をすべて読めば深い事情もあるのかもしれないが、今日見た部分だけではどう考えても、忠兵衛が女にはまって勝手に金を使い込み、友の忠告も聞かずに一人で傷口を広げて、自分で自分を追い込んだようにしか見えない。

自己保身のためにした働きのねーちゃん口説いたりしちゃうし。ったくもう。

 

 

というわけでこの作品での忠兵衛にはまったく感情移入できないんだけど、梅川には物凄く移入できた。

彼女は死にたかったんだろうな。安女郎の毎日もうんざり、田舎のお大尽に請け出されるのもいや。
都会の優男、忠兵衛は、一緒に死ぬ相手として、女心を満足させるのにちょうどよかったんじゃなかろうか。

 

ふらふらしてるダメ男を、死にたがってる女が道連れにするって、なんか太宰治と山崎富栄の心中を思い出しちゃった。

でも史実では、忠兵衛だけが死んで、梅川は生き残っちゃったらしいから、なかなか思うようにいかないもんだね。

 

 

封印切一人で語った綱太夫、渋いけど声が弱ってる?
禿の語りにはちょっと無理があったような。
禿の三味線弾き、本当の三味線の手とぴったり合ってるのが当たり前だけど凄い。
人形遣いさん(玉誉)は語る三味線の手をちゃんと覚えてるんだよね。
1綱大夫の息子の清二郎の三味線がなかなかよかった。

 

梅川が朋輩に自分の身を嘆いてる場面で、別の間で一人手持ち無沙汰にしている茶屋の女将の人形が、煙管を吸ったり、火鉢の火をおこしたり、本を読んで泣いたりしてるのが妙に面白くて、リアルで楽しかった。人形遣いも巧かった。清五郎さん。今後要チェック。



肝心の玉女紋寿の主役の人形遣い、どうも固いような気がしていまいちだったけど、最後の最後の道行きで泣かせてくれた。
紋寿さん、梅川のあの腰はないよ。反則だよ。いろえろっぽすぎ。死を前に、エロスが輝く、っていう瞬間を人形浄瑠璃で見せてもらえるとは思わなかった。

 

やっぱり文楽凄いわ。

 

2/9追記

 

道行で美声を聞かせてくれている新大夫さん、咲甫さんと並んで若手のなかでは超有望だと思うんですが。

やばいことになってるみたい・・・

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080201/crm0802011459034-n1.htm

 

悪いことは悪い、と認めた上で、なんとか除名とかそこまでの処分はしないでやって欲しい。ただでさえ若手のいい大夫が少ないんだから。

除名、じゃなくて助命嘆願運動があれば署名したいです!!!

しかし、ちょっと封印切みたいな話やなあ。封印切の場を語らせれば面白かったのに←超無責任。