laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

前進座五月公演

2007-05-22 | kabuki a Tokio

前進座は、昨年の同時期国立劇場公演以来、生まれて二度目の観劇。

梅雀と梅之助と圭史くらいしか知りません。この状況は初観劇とほぼ同じ。
瀬川菊之丞という女形を覚えたくらいでしょうか。
一年に一度しか見ないと、なじみの役者もできないわ。

毛抜

当代随一の弾正役者(っていってもあたし、ダンダン以外はおめちゃんとシドくんくらいしか生で見てないんで、ひひひ)、團十郎とどうしても比べてしまう圭史の弾正。
全然悪くはない。口跡やひとつひとつの動きの切れなどはむしろ團十郎よりよほど綺麗だし巧いのだが、いまひとつ魅力的に見えない。
あくまで個人的趣味だが弾正という人物はただの正義漢ではだめで、もちろんただの色好みおやじでもだめで、なんつか、独特の春風駘蕩というか、茫洋というか、ぼんやりというか、得体の知れない大きさがある人物だと思うのです。
圭史の弾正は、ちょっと凡人で、分かりやすすぎるんだなあ

で、脇がまたみんな固いので、余計、弾正が魅力的に見えない。

いちばんダメだと思ったのが巻絹の国太郎
この人、今回の芝居では春風(これは菊の丞で悪くなかった)と恋仲という設定(こんなのはじめてのような気がする)なんだけど、ちっとも色っぽくないんだもん。これじゃ、春風も小磯に浮気するわ。
で、色っぽくないから、弾正のセクハラシーンもちっとも面白くない。これまた演出で「びびびびび」がないんだけど、この巻絹ならなくてよかったかも。
秀太郎の広也はまあまあだった。

比較的よかったのが悪役玄番役の人。ごめん名前わからない。
百姓役の人(たぶん辰五郎の小鉄と同じ人。おおさかやってかかってた)は立派すぎ。

なんか全体にちょっと固くて、おおらかさのない毛抜でした。

舞台装置も一部違っていて、弾正の位置も成田屋型とはだいぶ違う。これは左團次型なのかしら。おめちゃんがやったときもそうだったかしら。忘却の彼方。
そういえば磁石が羅針盤じゃなくてU字なのは左團次型かなあ。どっかで一度みた覚えがある・・・

新門辰五郎

これ、かなり面白かった!

と偉そうに言う割りには、ときどき沈んでましたけど・・・

浮き上がった部分をつなぎ合わせただけで十分面白かったので、ずっと起きてたら、きっとかなり面白かったことでしょう。

やっぱりこの座組では梅之助・梅雀親子の存在感は群を抜いていると思う。
特に梅之助さんの枯れっぷりときたら、もうええ味出してます。超巧い芦燕さんといおうか、愛想のいい段四郎さんといおうか。いや、もっと深いなあ。
梅雀さんは、一見翫雀さん風(名前も似てるw)なんだけど、動いたり台詞を言うと、いきなりすげぇきっぷのいいイナセなお兄いさんに大変身するところがすごい。
梅雀と梅之助の二人が、火消しの生き方について語り合っているシーン、浮いたり沈んだりしながら薄目で見てたんですが、そらよかったですよぉ。
ちゃんとした意識でもう一度観たいよう。
でも今日が楽なんだよねぇ。。。


め組の向こうを張って、を組の火消しも喧嘩もするんですけど、喧嘩シーンより、本業の火消しに出かけるシーンがそりゃ圧巻でした。
全員が火消し姿で勢ぞろいし、火消し歌(正式にはなんていうのか知らない)を朗々と歌い上げる場面は本当にイナセで、かっこよくて、背筋がぞくぞくしました。
あのピンと張り詰めたシーンは、ぐだぐだが味になっている菊五郎劇団にはないものですね。

火消し以降、会津の小鉄(後で調べました。藤川矢之輔・大坂屋)と辰五郎の一対一の対決のシーンは、梅雀の台詞術を堪能しました。この人、本当に舌を巻くほど台詞が切れる
大歌舞伎にもここまで台詞の巧い人はいないんじゃなかろうか。

そうそう、きょうは楽なだけじゃなくて、前進座結成76周年記念日だそうです。
おめでとうございます!
今年は秋にやる前進座劇場の公演にも行きたいと思ってます。
すこしずつご贔屓も増やしますので長い目で見てやってください(誰に向かっていっているのか不明)