SakuraとRenのイギリスライフ

美味しいものとお散歩が大好きな二人ののんびりな日常 in イギリス

Wyn Grant and Graham K. Wilson, eds., The Consequences of the Global Financial Crisis

2015年02月11日 | 
そんなにすごくおすすめというわけではないのですが、こういう本があるということを紹介する意義はあると思うので、今日は、Wyn Grant and Graham K. Wilson, eds., The Consequences of the Global Financial Crisis: The Rhetoric of Reform and Regulation (Oxford University Press, 2012)を取り上げたいと思います。



タイトルから、世界金融危機を受けた諸国の政策対応が分析されているんだろうなと思っていたのですが、どちらかというと本書の主眼は「世界金融恐慌が起こったというのに、ネオリベラリズムに基づく政策がほとんど変わらず行われている」ことを主張する点にあるようです。

本書は多岐にわたるトピックと国をカバーしています。
取り上げられている国は、イギリス(第3章)、アメリカ(第4章)、フランス・イタリア・スペイン(第9章)、デンマーク・スウェーデン(第10章)、フランス(第11章)、中国(第12章)。
トピックとしては、国際経済ガバナンス(第2章)、店頭デリヴァティブ市場の規制(第5章)、東アジアの地域主義(第6章)、資本移動規制(第7章)、格付け会社(第8章)。
あまり取り上げられるテーマやアプローチに体系性や統一性は感じられず、それぞれの論者たちが自分の得意なことを書いたのを寄せ集めた、というような印象。
それにもかかわらず、危機を経ても政策はあまり変化していないという上記の結論が多くの分野から出てくることが重要なのかもしれません。

読んでいて特に勉強になったのは、イギリスの政策対応がとても分かりやすくまとまっていた第3章(Andrew Gamble)、資本主義の危機が中道左派の危機をもたらしたという皮肉をアメリカを事例に分析した第4章(Graham K. Wilson)、従来のVoC研究に異議を唱え、国家主導型の市場経済(State-Influenced Market Economies)という類型が必要なことを主張し、それを構成する諸国としてフランス・イタリア・スペインの危機の影響を比較分析した第9章(Vivien A. Schmidt)。
国以外のトピックに着目したものは、結局「いろいろあったけど、でもやっぱり本質的にはそれまでと変わっていない」という結論になるので、読んでいてダイナミズムを感じられず、あまり面白さを感じませんでした。(それぞれの章を書いた人が悪いというわけではなく、ただそのトピックの性格によるもの。)


特に新しい理論が提示されているわけではないけど、世界金融危機が様々なものにどういう影響を与えたか、論点を知ったり事実を整理する上では有益な本だったと思います。

(投稿者:Ren)

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