くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

値上げ拒否の理由

2012-03-23 23:59:59 | 総務のお仕事(いろいろ)
東京電力の値上げに対する拒否権(開始時期の先送り)について、
大半の企業が権利を行使し、東電は当初予定より約4000億円の減収になる
見込みだと報道されています。

4月1日からの値上げを拒否した場合、
将来、値下げがあっても契約更新時までは適用されなくなるため、
長期で見れば支払う電気料金の総額は変わらない
と一昨日、このブログで書きました。

しかし、短期(決算期)で考えれば、当然、収益が違ってきます。
今回の報道で、私の会社の役員が発した言葉はこうでした。

「法律上も正当と認められる権利を行使せず、
 来期に出せるべき利益を放棄した場合、株主から指摘されたら説明がつかない」

「仮に会社が東電の株主であったり、東電が会社の顧客だったりしても、
 来期に出せるべき利益を放棄する正当な理由として、
 株主は認めないのではないか」

さすが、利益確保のために社員給与・役員報酬のカットが、
ここ何年も続いている会社の役員は、「値上げ拒否」の理由の切り口が違います。

確かに、金額の問題ではありません。
逆に言えば、東電経営陣の見通しと対応の甘さ、軽率さは、
東電株主から厳しく糾弾されるのではないでしょうか。



ツメ切りのマナー

2012-03-22 22:55:38 | つれづれなるまま
誰の体にでもあるのに、体から離れると、
とたんに汚く感じるものがあります。

たとえば、ツメとか髪の毛。
それがどんなに見目麗しい美女を構成するものであっても、
持ち主から離れた途端、たちまち不潔なものになってしまいます。

ましてや会社など、静まり返ったオフィスでパチンパチンと音をたて、
イスに立てひざで平然とツメを切るオヤジの姿を見せられた日には、
まるで排泄行為を見せられたような、イヤ~な気分になります。

これはマナー違反ではないでしょうか。

そう思うのです。



「値上げ拒否は可能」は間違い

2012-03-21 23:59:59 | 総務のお仕事(いろいろ)
世田谷区が、東京電力に4月1日からの値上げの拒否を申し入れたことから、
報道やネットでは、「電力料金の値上げは拒否できる」との話題がさかんに流れています。
加えて、枝野経産相がこれについてコメントを出したことから、
東京電力は説明不足であったと謝罪するに至りました。

報道やネットなどでは、まるで鬼の首をとったかのように書かれていますが、
「電力料金の値上げは拒否できる」という一文のみがひとり歩きし、
あたかも、旧料金のまま電気を使い続けることができるような印象を与えます。

しかし、厳密に言えばこれは間違いです。
「値上げの時期を先送りできる」と言うのが、正しい表現です。

つまり、こういうことです。

① 高圧受電設備などを使用する電力需要者は、
   東京電力と一年更新の電力使用契約を結んでいます。

② 従って、契約更新の時期が到来するまでは、
   契約者は、現在の契約料金で電力供給を受ける権利があります。 

③ しかし、次の契約更新時には、引き続き電気を使用するためには、
   東京電力からの値上げ要求を受け入れて更新せざるをえません。 

④ また、この権利を行使した場合には、
   将来、電気料金が値下げになっても、その次の契約更新時までは、
   値上げ後の料金を支払い続けなければなりません。

つまり、東京電力から電気を買い続ける限り、
支払うトータルの電気料金は変わらないということです。

もちろん、たとえば12月が契約更新の時期であれば、
値上げの時期を9ヶ月も先送りできるわけですから、
目先の資金繰りだけを考えれば、大きなメリットではあります。

しかし逆に、4月や5月に契約更新が到来するのであれば、
そのメリットはほとんどなく、大騒ぎするほどのことでもありません。

今回の東京電力の対応は、
顧客対応としてはオソマツきわまりないものでしたが、
結局、東京電力を説明不足を非難したところで、
電力料金の値上げを回避できるわけではないのです。


これは女性差別なのか

2012-03-19 23:55:17 | 総務のお仕事(いろいろ)
私が勤務する会社の総務業務のひとつに、社内放送があります。
毎朝の始業放送や社員へのお知らせ、呼び出しなどを行なうものです。

その社内放送を担当していた女性が産休に入ることになり、
同じ職場の女性たちが持ち回りで担当することになりました。

するとその中から、
社内放送を女性だけが担当することについて、
強行に反対し、拒否する女性が現れました。

彼女の主張は、おおよそ次のようなものでした。

「なぜ、女性だけが(社内放送を)やらされるのか」
「男性アナウンサーという職業があるのだから、男性社員がやっても不自然ではない」
「男性社員もローテーションに入れれば、一人の持ち回りの回数は少なくなる」
「『社内放送は女性』という考え方は、男女差別である」

果たして、社内放送の担当を女性にすることは、
男女平等に反しているのでしょうか。

私には、この女性が「社内放送」という業務を、
一昔前の「お茶汲み」や「朝の机拭き」「コピーとり」などといった仕事と、
同じレベルでしか考えていないような気がします。

昔は、女性社員が男性社員にお茶を入れたり、始業前に机を拭いたりゴミを捨てたり、
男性社員に言われてコピーをとったりすることが、多くの会社で行われていました。
そして、「そのような雑用を女性に強いるのはおかしい」という声があがり、
いまではほとんどの会社で、そのようなことはなくなりました。

「男女平等に反している」
と女性社員から主張されると、上司は沈黙してしまいます。

しかし、「社内放送」は、
「お茶くみ」のような特定の男性社員に対する、
個人的なサービスではありません。

「女性差別か否か」とか、
「女性の声がいいか、男性の声がいいか」といった議論以前に、
「これがあなたに与えられた、仕事のひとつなのだ」 と毅然とした態度で、
上司はこの女性に命じるべきだと思うのです。



美術館をはしごする

2012-03-18 23:18:00 | お出かけ
上野の国立西洋美術館で開催中の、
「ユベール・ロベール-時間の庭-」展に行ってきました。
   (画像クリックで拡大)

ユベール・ロベールは18世紀のフランスの風景画家です。
イタリア留学で得た古代ローマ遺跡のモチーフに多くの絵を描き、
「廃墟のロベール」として名声を築いたそうです。

今回、この展覧会に出かけたのは、
美術に深い興味があったからというわけではありません。
ユベール・ロベールの名前も、この展覧会で始めて知りました。
最大の関心は、ユベール・ロベールの絵画の多くが、
「古代ローマの遺跡」をモチーフにしていることからでした。

18世紀頃まで、古代ローマの遺跡は庶民の暮らしの中にありました。
もちろん当時は、現代のように遺跡が歴史的遺産として手厚く保護されることもなく、
人々は遺跡を倉庫にしたり、干草置き場にしたりして生活に利用していました。
街のあちらこちらには崩れた大理石の円柱が放置され、
壊れかけた古代の神殿にはツタがからまり、樹木が生い茂っていたのです。

写真が発明されていなかった当時の遺跡の様子を知る手がかりは、
このような風景画家の残した絵画しかありません。

悠久の時間の中に同時に存在する、遙かなる過去の遺物と今を生きる人々。
そのコントラストは、さまざまなイマジネーションをかき立てられる興味深いものでした。


今月6日に始まったばかりだからなのか、
天気が悪かったせいなのか、会場は人も少なくゆっくりと観覧できました。

そして続けて行ったのが、
恵比寿の東京都写真美術館で開催中の
「フェリーチェ・ベアトの東洋」展です。

  (画像クリックで拡大)

ベアトは、幕末から明治にかけて日本に滞在し、
20年以上にわたって日本各地の風景や風俗、人物を撮影した写真師です。
幕末の日本史に興味がある人なら、一度はその写真を目にしているはずです。

そんな写真のオリジナルを見ることができるというので、
上野から恵比寿へと足を延ばしました。

展覧会では、幕末の日本だけでなく、
彼が写真師として活動したインド動乱、中国のアヘン戦争、米朝戦争、
最後の滞在地ビルマでの製作活動などを紹介しています。


愛宕山から望む江戸のパノラマ(1863-64年 文久)
勝海舟と西郷隆盛は、愛宕山からのこの風景を見下ろし、
「ここを戦で焦土にしてはならない」との共通認識のもと、
江戸城の無血開城が成ったとも言われています。
(TBSドラマ「JIN-仁-」のオープニングでも使われた写真です)

ベアトは、アヘン戦争に敗れ、荒廃した中国・北京のパノラマ写真も残しています。
展覧会では、そのよく似た構図の写真を見比べ、日本の幸運をしみじみと感じました。

 
これが現在の愛宕山から見下ろす風景です(2011年撮影)。
樹木が生い茂り、その向こうには高層ビルが立ち並んでいます。

写真も書籍などの印刷物で見るのと、
オリジナルのプリントを見るのとでは、
大きさも色もまったく異なります。

絵画と同じで、やはり実物は迫力が違います。