くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

美術館をはしごする

2012-03-18 23:18:00 | お出かけ
上野の国立西洋美術館で開催中の、
「ユベール・ロベール-時間の庭-」展に行ってきました。
   (画像クリックで拡大)

ユベール・ロベールは18世紀のフランスの風景画家です。
イタリア留学で得た古代ローマ遺跡のモチーフに多くの絵を描き、
「廃墟のロベール」として名声を築いたそうです。

今回、この展覧会に出かけたのは、
美術に深い興味があったからというわけではありません。
ユベール・ロベールの名前も、この展覧会で始めて知りました。
最大の関心は、ユベール・ロベールの絵画の多くが、
「古代ローマの遺跡」をモチーフにしていることからでした。

18世紀頃まで、古代ローマの遺跡は庶民の暮らしの中にありました。
もちろん当時は、現代のように遺跡が歴史的遺産として手厚く保護されることもなく、
人々は遺跡を倉庫にしたり、干草置き場にしたりして生活に利用していました。
街のあちらこちらには崩れた大理石の円柱が放置され、
壊れかけた古代の神殿にはツタがからまり、樹木が生い茂っていたのです。

写真が発明されていなかった当時の遺跡の様子を知る手がかりは、
このような風景画家の残した絵画しかありません。

悠久の時間の中に同時に存在する、遙かなる過去の遺物と今を生きる人々。
そのコントラストは、さまざまなイマジネーションをかき立てられる興味深いものでした。


今月6日に始まったばかりだからなのか、
天気が悪かったせいなのか、会場は人も少なくゆっくりと観覧できました。

そして続けて行ったのが、
恵比寿の東京都写真美術館で開催中の
「フェリーチェ・ベアトの東洋」展です。

  (画像クリックで拡大)

ベアトは、幕末から明治にかけて日本に滞在し、
20年以上にわたって日本各地の風景や風俗、人物を撮影した写真師です。
幕末の日本史に興味がある人なら、一度はその写真を目にしているはずです。

そんな写真のオリジナルを見ることができるというので、
上野から恵比寿へと足を延ばしました。

展覧会では、幕末の日本だけでなく、
彼が写真師として活動したインド動乱、中国のアヘン戦争、米朝戦争、
最後の滞在地ビルマでの製作活動などを紹介しています。


愛宕山から望む江戸のパノラマ(1863-64年 文久)
勝海舟と西郷隆盛は、愛宕山からのこの風景を見下ろし、
「ここを戦で焦土にしてはならない」との共通認識のもと、
江戸城の無血開城が成ったとも言われています。
(TBSドラマ「JIN-仁-」のオープニングでも使われた写真です)

ベアトは、アヘン戦争に敗れ、荒廃した中国・北京のパノラマ写真も残しています。
展覧会では、そのよく似た構図の写真を見比べ、日本の幸運をしみじみと感じました。

 
これが現在の愛宕山から見下ろす風景です(2011年撮影)。
樹木が生い茂り、その向こうには高層ビルが立ち並んでいます。

写真も書籍などの印刷物で見るのと、
オリジナルのプリントを見るのとでは、
大きさも色もまったく異なります。

絵画と同じで、やはり実物は迫力が違います。