くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「値上げ拒否は可能」は間違い

2012-03-21 23:59:59 | 総務のお仕事(いろいろ)
世田谷区が、東京電力に4月1日からの値上げの拒否を申し入れたことから、
報道やネットでは、「電力料金の値上げは拒否できる」との話題がさかんに流れています。
加えて、枝野経産相がこれについてコメントを出したことから、
東京電力は説明不足であったと謝罪するに至りました。

報道やネットなどでは、まるで鬼の首をとったかのように書かれていますが、
「電力料金の値上げは拒否できる」という一文のみがひとり歩きし、
あたかも、旧料金のまま電気を使い続けることができるような印象を与えます。

しかし、厳密に言えばこれは間違いです。
「値上げの時期を先送りできる」と言うのが、正しい表現です。

つまり、こういうことです。

① 高圧受電設備などを使用する電力需要者は、
   東京電力と一年更新の電力使用契約を結んでいます。

② 従って、契約更新の時期が到来するまでは、
   契約者は、現在の契約料金で電力供給を受ける権利があります。 

③ しかし、次の契約更新時には、引き続き電気を使用するためには、
   東京電力からの値上げ要求を受け入れて更新せざるをえません。 

④ また、この権利を行使した場合には、
   将来、電気料金が値下げになっても、その次の契約更新時までは、
   値上げ後の料金を支払い続けなければなりません。

つまり、東京電力から電気を買い続ける限り、
支払うトータルの電気料金は変わらないということです。

もちろん、たとえば12月が契約更新の時期であれば、
値上げの時期を9ヶ月も先送りできるわけですから、
目先の資金繰りだけを考えれば、大きなメリットではあります。

しかし逆に、4月や5月に契約更新が到来するのであれば、
そのメリットはほとんどなく、大騒ぎするほどのことでもありません。

今回の東京電力の対応は、
顧客対応としてはオソマツきわまりないものでしたが、
結局、東京電力を説明不足を非難したところで、
電力料金の値上げを回避できるわけではないのです。