くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「公務員とは何か」を考える

2012-01-22 20:59:58 | 政治経済のことも考えよう
先日、東日本大震災の被災地となった、
ある自治体の元公務員の防災講演を聴く機会がありました。

その方は、部下を指揮して被災者の対応にあたっていたそうですが、
ご自身も自宅を失い、部下も身内が行方不明のまま公務を続けたそうです。

「家を失っても、身内が行方不明になっても、
 仕事を続けなければならない公務員とは、なんと非人間的な職業なのか」

その方はそう思い、震災対応がひと段落したところで、
その役所を退職したということでした。

「公務員だって皆さんと同じ人間なんです。
 それをわかっていただきたい」

そして講演では、そう強調されていました。

「滅私奉公」というにはあまりにも過酷ですが、
震災ではこうした多くの公務員の活躍がありました。
日本では、災害時に暴動や略奪などの混乱が起こらないのは、
こうした地元公務員の果たす役割もきわめて大きいと思います。

しかし一方で、この講演を聴いて思ったのは、
「公務員とは、なんと恵まれた身分なのだろう」 ということでした。

誤解を恐れずに言います。

民間企業や自営業の被災者には、
職場が被災しただけでなく、仕事そのものを失った人がたくさんいます。
そうした方は収入を得る術を失い、自宅を失ってローンだけが残っても、
退職金はおろか、日々の生活費もままなりません。

けれども、公務員にはそのような心配はありません。
たとえ役所が倒壊しても、給料は被災前と同じように振り込まれるし、
辞めれば、被災前と同じように規程通りに退職金が支給されます。

「公務員優遇だ」などと言いたいのではありません。
「だから家を失っても、身内が行方不明でも公務を遂行して当然」
などと言うつもりも毛頭ありません。

なぜなら、それが公共と住民のために作られた、
公務員という身分であり制度(仕組み)なのですから。
ただ、平和な日常生活が続いているときには、
そのことを誰もが意識していなかっただけです。

先の講師のように、
公務員の仕事が理不尽だと思うのなら、
やはりその人は公務員を辞めるべきでしょう。
また、それ以前に公務員になるべきではないでしょう。

この元公務員の講演を聴いたとき、
昔、ある地方自治体に勤めていた私の親が、
まだ子どもだった私によく言っていたことを思い出したのでした。

公務員の身分は、公務員のための既得権益ではないのです。