こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『偶然屋』七尾与史

2017-05-24 19:26:15 | 読書感想
幸運だけで有名大学に合格できたことを失念していた水氷里美は、無謀にも司法試験に挑戦。
二年も試験浪人した上に断念したという経歴のためか、その後の一年の就職活動は実らなかった。
とうとう里美は、電信柱に貼り付けられた求人広告を見て応募するようになった。
アシスタントディレクターと思っていたのだが・・・。

人との偶然の出会いを演出し、クライアントに幸せになってもらうだけだったのが、こんなにも残虐非道な人物を相手に戦うことになろうとはねー。
しかも、この結末。
この物語を続けようとは、七尾さんも・・・悪よのう。
精神衛生上とても悪いので、私は付き合いたくありません。
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『横浜駅SF』柞刈湯葉

2017-05-21 19:36:56 | 読書感想
かつて存在した、日本の鉄道ネットワークをベースにした巨大人工知能であるJR統合知性体。
それによって横浜駅が増殖し、本州の99%を覆いつくした。
それは、かつて存在した日本政府さえ消滅させ、エキナカに住み脳にSuicaを埋め込まれて生活する人々と、構内に入れず外でしか暮らせず交通を分断された人々とに分けることになってしまった。

また、それにかろうじて呑み込まれずに済んだJR北日本に統治された北海道と、JR福岡に統治された九州が、それぞれ異なる方法で横浜駅からの浸食を食い止めようとしていた。
そこに二人の主人公、富士山が見える横浜駅1415番出口の近くの岬に住むヒロトと、JR福岡の社員・久保トシルが登場。
果たして人間は、横浜駅による支配から脱することができるのか?

駅が自己増殖なんぞするものだから、数百年も経てば、過去の人々が巨大建造物を建てていたことを信じられなくなっても無理ありません。
そして、結末を読んでいると、この先の日本国民の未来がそんなには明るく思えないんですよねえ。
続編もあるようですので、それを見届けたいです。
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『ショートショート・BAR』田丸雅智

2017-05-20 19:41:46 | 読書感想
今回この本には、二種の連作ショートショートと、某児童向け作品の続きが一編、あとは、多種多様な作品が数編、収録されています。

中でも、連作ショートショートが味わい深く、一方は、トニーさんという多分初老のマスターが経営するバーでの出来事が、もう一方では、オーストラリアのゴールドコーストに、クリスマスシーズンに来た三組の日本人カップルのバラエティに富んだ体験が、味わえます。

特に笑ったのは、冒頭の「マイナ酒」
しんみりしたのは、「霊鈴」
ロマンティックなのは、「洞窟の星」
ラブラブなのは、「手縫いの堪忍袋」
怖いのは、「桜色の爪」
欲しいのは、「裏口のゴンドラ」
そして、ほっこりするのは「客が育てた」で、いかにも、この本の締めくくりにふさわしい作品でした。
お薦めします。
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『もののけ屋 三度の飯より妖怪が好き』廣嶋玲子

2017-05-19 19:29:43 | 読書感想
元々は合戦場だったか、大きな墓だったかという土地に建てられた小学校では、トラブル続き。
そんな小学校に、児童に合わせたもののけを貸し出すもののけ屋が、カウンセラーとしてやって来た。

「忘れ物キング」のあだ名を持つ新之助。
クラスのライバル瑠璃子に負けたくない舞華。
複雑で書きにくい自分の名前を何とかしたい、康煕(こうき)。
いじめっ子を何とかしたい、みゆき。
そして、寂しさを抱えた時子。

それぞれにもののけを貸してもらい、うまくいく子もいれば、散々な目に遭う子もいます。
ラストは、一番うまくいったケースなのかもしれませんが、時子が人と交われなかったのが、残念です。
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『アンソロジー 隠す』アミの会(仮)

2017-05-17 19:36:08 | 読書感想
今回のメンバーは、大崎梢さん、加納朋子さん、近藤史恵さん、篠田真由美さん、柴田よしきさん、永嶋恵美さん、新津きよみさん、福田和代さん、松尾由美さん、松村比呂美さん、光原百合さんです。

「隠す」をテーマに、ある小物をモチーフに編まれたアンソロジー。
「理由」で、よくいる毒舌芸能人への皮肉に溜飲が下がり、「自宅警備員の憂鬱」では、その勇気と冷静な判断、その状況への寒気がわき、「撫桜亭奇譚」には、あまりの残酷さに背筋がゾッとしました。

中でも特に好きなのは、一人で立てる理想的な女性を描いた「バースデイブーケをあなたに」
幼い少年少女の冒険を描いた「少年少女秘密基地」
そして、この本の締めくくりを飾るにふさわしい結末を描いた「心残り」です。

本当は、全ての作品が好きと言っても過言ではないくらい上質な短編集。
お薦めです。
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