ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

優先席の作法

2015-09-26 | ほとほと日記
今日は仕事はお休みでした。


二か月半ぶりに神田の心療内科に行ってきました。
このところはずっと調子が落ち着いていて、二、三か月に一回の受診になっています。
主治医との話も五分くらいで終わってしまいます。

この先生とはもう二十一年以上の付き合いで、私の方は半ば身内のような感覚になっています。
初めて会った時は、私が三十五歳で、先生が四十歳。
診察室からカルテを取りに来る姿に、「先生も老けたなア」と思う時があります。

でも、こういう人がいてくれるというのは、とても心丈夫なことです。


行きがけの電車の中で、妙な「事件」に出くわしました。

車内はかなり空いていて、私はシートの一番端に座ってスマホをいじっていました。
すると「ルールなんだから守りなさいよ!」という男性の強い声がします。
みると「優先席」に座っている六十代後半くらいの男性が、正面のやはり優先席に座っている中年女性を睨んでいます。
女性は何か応答しましたが、男性は納得しません。
「ここはそういう決まりでしょ!他の席に行ってやってやりなさい!」
どうやら女性に対して「スマートフォンの電源を切るように」と強く窘めているようです。
女性は憤然…という風に立ち上がると、隣の車両に移っていきました。

その男性は細身で、大きな紙袋を持っていました。
声にも体格にも表情にも威圧感はありませんが、「退職していつもイラついている面倒なオジサン」という印象です。
やり取りを見ていて(もうちょっと言い方があるだろうに…)と、私は内心で思っていました。
女性が隣の車両に移ると、オジサンは立ち上がり、網棚の雑誌を取ってめくり始めました。

しばらくすると、別の、四十代くらいの女性が乗ってきて、オジサンの前に座りました。
ほとんどの人がそうであるように、女性はスマートフォンを片手に持っています。
私は(どうなるかな…)と思っていました。
するとオジサンは「それ、切ってね。ここはコレだから」と声を出しました。
オジサンは、背後の車窓に貼ってある、携帯電話に赤い「✖」が記された図を指しています。
こんどの女性は素直にオジサンの指示に従ったようで、それ以上の追及はありませんでした。
女性は、次の駅で下りました。

私は、(このオジサンはこれを言いたいがタメに優先席に座っているのではないか?)と思い始めました。
そうでなければ、あれほど手慣れた図の指し方はできないでしょう。
そして(もし若い男性が座っても、あの口調で指摘するのだろうか?)とも思い始めました。
でも、次の「獲物」が優先席に座る前に、オジサンも下車しました。

私は、何か変な光景を見たなア…と思っていました。
それにしても不思議なのは、あの二人の女性も、これだけ空いているのになぜ優先席に座るのだろう?ということでした。
その無防備さが臆病な私には信じられませんでした。

私は電車の席には座りたがる方ですが、優先席にはまず座りません。
それは何より「万が一の面倒を避けるため」です。

今までほとんど無意識にそうしてきたのですが、その判断は正しかった…と思ったことです。






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