Q: 「働き盛りの若い年代で、認知症が増えて来ている」のタイトルに惹かれ、報道番組を見ました。認知症と診断された3人の方が、家族と一緒に出演していました。その中の一人、40代の方がとても印象に残りました。「アルツハイマー型認知症(以下、「AD型認知症」と略記する)」として紹介されたその方の話し振りと話の筋が、説得力があるのに驚きました。時には涙を流しながら、物忘れによる職場や家庭での失敗体験を語るのです。「AD型認知症」の義父を何年も介護した経験がある私には、理解も納得も、出来ない報道内容でした。
A: 長生きすれば
するほど増える 認知症
人生60年の昔ぞ 今は恋しき
(撰者 山上小暗の講評)
あなたが驚いたのも、納得出来ないのも無理はありません。その方は、「AD型認知症」ではなくて、「側頭葉性健忘症」なのです。「器質的な原因」で、「(重度の記銘力障害)に起因した極めて重度の物忘れの症状」を呈するので、専門の精神科医でさえ/「AD型認知症」とよく間違えるのですが、実は、『前頭葉』機能が/正常なレベルに在るのが特徴でもあるののです。
「AD型認知症」であれば、最初に/異常なレベルに働きが衰える機能が、必ず「前頭葉」機能であり、それが必須の要件でもあるので、明確に両者の鑑別が出来るのです。
この人の場合は、神経心理機能テストで「前頭葉」機能(前頭前野の穹窿部に局在する/複合機能体を言うものとする)を含む/脳全体の機能レベルを精査してみれば、高度の「記銘力障害」が認められるだけで、「前頭葉」機能が、正常範囲に保たれていることが分かる筈なのです。更に、表情が非常に豊かで、動作も機敏で、状況や目的に沿った言動がきちんと取れることが、「アルツハイマー型認知症」とは、根本的に異なる大きな特徴なのです。
ところで、世間で専門家と言われる人達が「アルツハイマー型認知症」と診断するレベルは、私達の区分でいう末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)の段階なのです。(大ボケ)の症状を列記してある項目で確かめてみて下さい。
そもそも、「AD型認知症」の発病者であって、(極めて重度の物忘れの症状)の発現が確認出来ている「重度認知症(大ボケ)」の段階の場合は、「意識」が覚醒した/目的的な世界に於ける脳全体の司令塔の役割りを担っている機能である「前頭葉」機能が、殆ど機能しないレベルに迄、廃用性の/加速度的で/異常な機能低下が進行して来ている為に、状況の理解も/判断も殆ど出来なくなってしまっているのです。その為、頻発する高度な「物忘れの症状」と言う状況に対しても、切実な問題としての認識や/理解自体が出来ていないので、本人自身の口から、状況を説明することが、殆ど出来ないのです。又、『側頭葉性健忘症』である場合は、(30代~50代止まりの若い年齢)で発症するのが基本であるのに対し、『AD型認知症』である場合の発症年齢は/60歳代以降の「高齢者」だけが対象となるのであり、70歳代、80歳代と高齢になるほど/発症率が高くなるのが、特徴なのです。
タイトルがショッキングな為に、高い視聴率を獲得するのだと思いますが、50歳代での「AD型認知症」の発症例さえも、殆どないのです。
世界に先駆けて、誰でもが80歳や90歳まで生きる「超高齢化社会」を実現した我が国では、それと裏腹の現象として、厚生労働省の予測にも見る通り、「AD型認知症」を発病し、末期の段階である「重度認知症(大ボケ)」の高齢者の人数が、どんどん増えて来ているのが、実情なのです。
この先全国的に高齢化が更に進んでいき、それに連れて「AD型認知症」の末期の段階である「重度認知症(大ボケ)」お年寄りの数が、更に加速度的に増加していくと予想されています。
現在300万人と報告されている認知症のお年寄りの数は(従来の予測値200万人が、8月の発表で300万人に大幅に増加修正されました)、私達の区分で言う末期段階の「重度認知症(大ボケ)」のレベルの人達だけの数なのです。「AD認知症」の/本当の意味での早期の段階であることが見落とされ/放置されている「軽度認知症(小ボケ)」と「中等度認知症(中ボケ)」とを合わせた合計人数は、「重度認知症(大ボケ)」の数と同等か/又はそれ以上にもなるのです。
ところで、認知症にもいろんな種類があるのですが、「AD型認知症」が認知症の大多数、90%以上を占めているのです。二番目に多い「脳血管性認知症」は、脳卒中等の既往さえあれば「脳血管性認知症」と診断されている実態があります。実は、それらの大半は、「脳血管性認知症」ではなくて、「AD型認知症」なのです。その他の認知症は、種類は多いのですが、全体に占める比率は極めて小さいのです。認知症の大多数を占めている「AD型認知症」こそ、国民的な課題として、『生活習慣』の改善による「発病自体の予防」と言うテーマに取り組むべきタイプの認知症なのです。
「AD型認知症」は、「身体がもつのに 脳がもたない」のが特徴の病気なので、「不活発病」とか「老化現象」という感覚的なレッテルだけ貼られて放置されていると、「小ボケ」は「中ボケ」へ、「中ボケ」は「大ボケ」へと、次第に「症状」(段階)が進んで行きます。皆さんも、ただ怖がるだけでなくて、「AD型認知症」に対する正しい知識を持ち、適切な対応をして頂きたいと願うのです。
「AD型認知症」は、認知症全体の90%以上を占めているのです。「AD型認知症」は、廃用症候群に属する老化・廃用型の「生活習慣病」に過ぎないのです。「AD型認知症」は、早期発見により「小ボケ」や「中ボケ」の早期の段階で、発病を見つけることが出来れば、正常レベルに「回復」させる(治す)こと及び/又は、症状の重症化の進行を抑制出来るのです。
「AD型認知症」は『『前頭』葉機能が活性化する「生活習慣」を構築して、日々の生活に取り入れ、継続して実践の自助努力をすることにより、「発病自体を予防」することが出来るのです。
認知症の診断に携わる精神科医達は、米国精神医学会が策定した診断規定である「DSM-Ⅳ」の規定を疑いもしないのです。「重度の物忘れの症状」(第一要件)及び「失語(紛い)」、「失認(紛い)」、又は「失行(紛い)」(第二要件)という末期の『重度認知症(大ボケ)』の段階の症状が発現して来ないと、「AD型認知症」の発病だとは、診断しない(考えもしていない)のです。
その結果、「重度認知症(大ボケ)」の段階でしか、発病を見つけてこなかった精神科医の誤解が原因で、『「AD型認知症」は、原因不明で治らないタイプの認知症だという誤った知識』が、日本全国津々浦々にまで浸透してしまっているのです。
早期発見(「小ボケ」及び「中ボケ」の段階で発病を見つけて)と早期治療(「前頭葉」機能が活性化する「生活習慣への改善」によって、「回復」及び/又は、重症化の進行の抑制が可能であり、更には、『前頭葉機能が活性化する生活習慣の構築』と継続的な実践の自助努力に因り、「発病自体の予防≪発病時期の先送る)」も可能な普通の病気(廃用症候群に属する、老化・廃用型の単なる「生活習慣病」)に過ぎない病気なのに、誤解が幅を利かせていて、新規発病が野放しの状態に在って、症状の重症化の進行が放置された儘と言う状況なのです。現状のまま放置して手をこまねいていると、高齢化の進展に付随して、今後増え続けることが予想されている「AD型認知症」を発病し/末期の段階である「重度認知症(大ボケ)」の高齢者が増え続けて行くと、「介護保険」制度が、費用規模の面から、制度破綻の危機に直面してしまうことになるのです。
「AD型認知症」の発病者の場合は、『脳が保たないのに、身体だけは保つ』のです。「軽度認知症(小ボケ)」の発症に始まって、「中等度認知症(中ボケ)」を経て、最後は、末期の段階である「重度認知症(大ボケ)」の段階になっても、未だ身体が保つのが特徴なのです。身体が保つので、「AD型認知症」を発病しても、何年間も/生きて行くことになるのです。
「第二の人生」が20年も30年もある「超高齢化社会」を生きるのなら、ただ長生きするだけでは/意味がないのです。敢えて、長生きを望むのであれば、自分らしい「生き甲斐や目標のある生き方」、自分らしい「脳の使い方」を追及して、「前頭葉」機能が活性化する「生活習慣」を構築して、日々継続して実践する自助努力を/我が身に課して、「身体が保つ限り、脳も保たせる」ことを必須条件として、『第二の人生』を生きて行って欲しいのです。本人の心がけと/努力次第で、発病を予防(回避)出来るからです。
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