サラリーマン活力再生

対米追従の政治家・官邸・マスコミ等と闘う「民族派」「国益派」を応援し、「安心して暮らせる社会」を目指すブログ

192913 中国が世界金融の覇権を握るとき①~管理変動相場の人民元

2008年11月22日 | 経済破局か?市場の軟着陸は可能か?
192913 中国が世界金融の覇権を握るとき①~管理変動相場の人民元
  猛獣王S ( 30代 営業 ) 08/11/22 AM03


『中国が世界金融の覇権を握るとき(1) - 管理変動相場の人民元』(世に倦む日日)より転載します。
----------------------------------------------------------------
 ~前略~

…吉川元忠が『マネー敗戦』で論じている「帝国循環」の論理に従えば、「世界の工場」になった国が世界最大の資本輸出国になり、その国の通貨を国際基軸通貨にして世界金融の秩序を支配することになる。19世紀の英ポンドとシティ、20世紀の米ドルとウォールストリート。世界最大の経常黒字国は、世界最大の債権国となって後発国の資金需要を埋め、世界経済の成長と均衡に役割を果たしつつ、金融覇権国として君臨する。この一般論を適用すれば、今年4月末の数字で、すでに1兆7600億ドルの外貨準備高を持ち、G7の合計額を上回っている中国は、まさに次の帝国循環の中心に座る基礎条件を持っている。外務省発表の「各国の経常収支」を見ると、2005年に日本と並び、2006年に日本を抜いて世界一になった中国は、5年後の予測で、日本の5倍になる7472億ドルの経常黒字が見込まれている。

ソロスの予言を否定する側の言い分は次のようなものである。①人民元は完全な変動相場制に移行しておらず、不完全な途上通貨であり、国際通貨として通用する資格と条件を有していない、②中国人民銀行は中国政府の一部であり、金融が財政から独立していない、③先進国でない中国には自由と民主主義の保障がなく、その国の通貨も世界の市場から信用されない、④社会主義国の通貨が世界の自由市場の基軸通貨になるのは不当で矛盾している。これらの主張のうち、特に③と④はイデオロギー的な理由づけであり、感情的なバイアスがかかった中国否定で、経済のロジックとしての中身はない。政治と経済は世界が違う。経済分析に感情論を持ち込むのは無意味だ。②の問題だが、これは中国だけの問題とは言えない。途上国に特有の問題とも言えない。

 ~中略~

問題は①だけである。現在の人民元は、いわゆる「管理変動相場制」と呼ばれるシステムの下にあり、完全な変動相場制の通貨ではない。例えば、為替のニュースで、ドルやユーロの情報は毎日その変動が報道され、われわれはそれを注目して見ているが、人民元と円とのレートの変動についてはニュースで報じられることはなく、誰も関心を払ってはいない。人民元のレートは、市場の自由な取引で時々刻々と決まるのではなく、中国人民銀行が他国通貨との為替レートの基準値を発表しているのである。基準値だから、固定相場ではなく、若干の日々の変動はある。だが、円など先進国の通貨ではこのような為替調整はあり得ない。私自身は、ニクソンショック以降の変動相場制が本当に普遍的で理想的な為替システムなのか疑問を持ち、むしろ為替が投機の対象にならないように世界の通貨当局によって規制され、世界貿易が合理的に調整されるシステムを採用した方が、各国の国民経済や国民生活にとって有益ではないかと考えるが、現在の国際金融の到達点を前提とすれば、人民元は明らかに発展途上の通貨であり、これがそのままドルやユーロのような国際通貨の地位を得るとは考えにくい。少なくとも、変動相場制への完全移行(自由化)は必須のプロセスである。

この人民元の現行の「管理変動相場制」について、田中宇などは「擬似ドルペッグ制」と呼んでいる。事実上、ドルと連動させた固定相場の性格が色濃く、切り上げによる為替差損を嫌い、同時に為替リスクをとらない、言わば「保護為替」的な現状にあり、世界最大の債権国であり、世界最大の経常黒字国としては、実に奇形的で小児的な為替実態を中国が温存させている点は否めない。即座に「擬似ドルペッグ」から決別して自由化に踏み切るのが経済合理的な方向性であり、そうでなければ中国は真の経済大国とは言えない。中国は、この「擬似ドルペッグ」で貿易黒字を貯めこむと同時に、人民元切り上げのリスクを避けるために米国と取引をして、米国の国債と社債を大量に購入して米国経済を支えているのである。この構図は、80年代以降の日本のパターンと酷似していて、中国政府が常に日本経済の過去を見習って経済の舵取りをしている事実を看取することができる。日本と同じことをやっているのだ。米国や新自由主義者は、口先では中国に人民元切り上げの圧力をかけ、「保護為替」による中国の「不当利益」を批判してきたが、実際には米国債の上得意が中国であり、中国からの資本供給が止まれば米国経済は一瞬でクラッシュしていた。人民元を安い水準に据え置くことは、米国経済に間断なく資本注入する手段でもあったのだ。

人民元が「擬似ドルペッグ」をやめるときというのは、ドルと世界金融に激震が走るときであり、中国経済にも多大な影響が出て、輸出が止まり、激しい景気減速に襲われるが、それ以上に米国への打撃が大きく、米国の金融と財政に与える影響の大きさは計り知れないものがある。簡単に言えば、中国政府がそれ(人民元の変動相場移行)を発表した瞬間、ドルは大きく暴落するだろう。人民元が、いつどのように変動相場制に移行するのか、よく想像できないが、それが中国と米国との間でマイルドな交渉と決定によって、対立や混乱なくスムーズに実現するとは私には思えない。人民元が変動相場に移行するときは、中国政府による決断と一方的な宣告を通じてであり、少なからず世界はショックを受ける事態に陥るはずだ。少し想像を先に延ばして、日本のテレビで為替のニュースが流れるときは、必ずドルと人民元の両方の数字が出るようになり、一般の関心は対ドルより対人民元の変動の方に集中するだろう。円と人民元の変動情報の方がニュース価値が重くなる。何故なら、日本の最大の貿易相手国は中国であり、中国との輸出入で商売している人間の方が、米国との商売で生きている人間より多くなっているからである。ドルとのペッグが外れた人民元は対円でも急騰し、すなわち中国からの輸入品は高くなり、日本からの輸出品は中国で安く売れるようになる。
----------------------------------------------------------------

 

コメントを投稿