春の園 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つ乙女
…万葉集・大伴家持…
毎年この季節になると想い出す大伴家持の万葉歌です。初めて此の和歌を知ったのは、もう60年も前になるでしょうか。
多感な少女期に読んだ小説で、ヒロインの女学生が兄の親友である青年から教えられた和歌でした。今や小説の題名や
作者の名も朧ろになり、此の和歌の美しさと好きだった青年への仄かな恋心だけが記憶に残っています。
その後、学徒出陣で戦場へ駆り出された青年は戻って来たものの、深く傷つき心身を病んでおり、やがて自死を選びます。
若いふたりの運命と大らかな万葉歌の情景を対比して、戦争の悲劇・人の世の無情を訴えるストーリーでした。
Kimitsukuが現在も古い大和歌に惹かれるのは、この美しい和歌が切っ掛けになったのでしょう。
改めて平和に桃の節句を祝えることに感謝した早春の一日でした。
それはそれで平和の象徴のようなものでよいのですが
何もなかった頃から今日まで生き抜いてきたものにとっては、お雛様には哀愁のようなものを感じるのは、私を含めて沢山おられるのでは、思ったりしております。
ちなみに我が家では農業一筋の田舎くらしでしたので、お雛様が買えず、床の間にお雛様の絵が書いてある掛け軸(当時はこんなのがあったのです)を飾っていたのを、しっかりと思いだしております。
kimitsukuさんにも、いい思い出が・・・文学少女のスタート地点というべきでしょうか?
あの当時の田舎町では本物の雛人形を飾る余裕など無く、
母が娘ふたりの為に、お雛さま掛け軸を用意してくれたのでしょう。
着物を着て妹とスマシ顔で写真を撮った記憶があります。
大伴家持の和歌は今も時折り想い出して、しみじみ懐かしんでおります。
小説のタイトルが思い出せないのが何とも残念ですが、ヒロインと青年が額を寄せて、
『春の園…』と声を合わせる箇所など、まざまざと脳裏に甦ります。これはこれで幸せな想い出ですね。