目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

ザ・リング2 ★★

2005-06-18 00:52:10 | ★★
 今回は日本の小説を原作としたハリウッド映画「ザ・リング2」を見ました。もちろん試写会です。
ハリウッド版「ザ・リング」についてはかなり酷評しましたが、今回はいかに!?
全米・全英では初登場NO.1を獲得し、ヨーロッパでも大ヒットらしいです。めっちゃウケてますねー。
ヒットの理由についても迫りたいと思います!
あ、私的には内容的に★二つが関の山なんで楽しみにしている方は
これ以上は読まないでぜひ出来を確認してきてください★



以下重大なネタバレアリです。お気をつけください。
日本版にも言及しているのでぜひ鑑賞後にお読みください。





 触れ込みでは「ハリウッド完全オリジナルのシナリオ」というのが触れ込みでリメイクではない新しいリングが見られる、とのことでしたがハッキリ言うと邦画版「リング2」の焼き直しでした。うーん、焼き直しというかハリウッド版リング一作目に合わせた続編といったところでしょうか?随所に日本版との類似があり、大体の見た後の印象はリング2と同じでした。
いや、むしろリング2に比べるとわかりやすい作品だと思います。色々なややこしい部分は取っ払ってあってスッキリしていてサマラ周りの関係がわかりやすいですね。きっと中田秀夫監督なりに再構成した結果なのでしょう。一作目は別の監督が違う解釈でやっちゃったので収拾つけるのは無理だと思ったのでしょうか、サマラを描きなおすことは出来ないですし。

 相違点は

一、サマラの過去にはあまり迫らない(「リング2」ではかなり出生のナゾに迫った)

二、ナオミ・ワッツは死なない(松嶋奈菜子は早々と死亡)

三、変な特殊能力の話には一切出てこない(これが「リング2」の理解をかなり妨げる要素)

あたりでしょうか。
登場人物もかなり違います。これは前作からの繋がり的に当然ですが…。
物語としては意外にも私的には評価高いですよ。
ただやっぱりダメだと感じてしまうところがいくつもありました。


 まず、ハリウッド版「ザ・リング」に言えることですが、サマラの存在そのものが失笑モノなんです。
貞子と違い、ジメジメした恐怖ではなくびしょびしょの滑稽さというか。
そりゃあハリウッド映画でパロディにもされますよね。
恐怖を常に煽る存在のハズが、出て来た瞬間はドキっとするけど、
お姿をよくよく見れば見るほど安心感すら湧きます。

「なんだサマラかよ、脅かすなって」みたいな感じです。

更に見た目もイマイチ恐くないのに、サマラは内面も怖くないんですよね。

「リング2」ではラスト貞子顔面アップで心臓が口から飛び出るかと思わされました。
怨念めいた台詞には映画ながらもそれなりに言い知れない恐怖を覚えたものです。
「リング」ではラスト付近でかなり目を見張る展開になり、非常に高い評価に繋がりました。
日本版「リング」の貞子に共通するのは終わらない恐怖の伝染でした。

「ザ・リング」のサマラは母の愛を渇望する、こどもなんですよね。
いや貞子もそうなんだけどそれ以上にかわいらしいものがあるというか。見た目は不気味ですが…。
残念ながらこのサマラの存在が恐怖映画としてのテイストをスポイルしていると言えるでしょう。

日本版「リング2」を見ている人は特にそうです。なんか二回目ともなるとやっぱり怖くないですねー!修学旅行で怖い話を聞いたときに「あ、それ知ってる」って冷めてしまう感じ…。試写会会場では失笑が起こるほどでした。

あと音楽がうるさいですね。やたらと重厚でアクの強い感じで不快感や不安感を煽る割に
そんなに恐くない。しかも、使われている手法も「呪怨」を見た後だと
驚くようなものは何一つありません。
この音楽にのせてナオミ・ワッツの絶叫。たまらないコンビネーションですねー。怖くない!

映像として新しさを感じたのは浴室で水が天井に張り付いているシーンくらいですかね。
あれはなかなか斬新な映像だと感じました。
水の多用、恐怖描写的には「ほの暗い水の底から」に近い感じがありましたね。

 ラストには勇ましく息子を守るために対決するレイチェル。
井戸から抜け出し音楽がブレイクして一言、

「私はあんたの母親じゃねえよ」

ってなんかいつの間にかアクション映画的なノリで決め台詞言ってます。そして井戸を閉じて
サマラを閉じ込める!かっこいいんだか、かっこよくないんだか。(いや、かっこよくはない)
この辺りとハッピーエンド描写はやっぱりハリウッドなんだなあ、と思わされましたね。


 ハリウッドでウケたのはやっぱり「THE JUON」の大ヒットの影響が大きいのでしょう。
ジャパニーズホラーブームを巻き起こしたのは残念ながら「ザ・リング」ではなく
「ザ・呪怨」だったということです。ま、お化け屋敷ムービーとして、どちらが
優秀だったかは見た人ならわかるはずです。「リング」と「呪怨」の最大の違いはそこです。

怖いもの見たさのお化け屋敷的映画に徹し、皆殺しで物語的な終着点を設けていない
本当に不気味な「呪怨」、

基本となるシナリオに不気味さの仕掛けを作り、映像よりはむしろ物語的、雰囲気的な
不気味さが根幹にある「リング」、

 似ているようで実は全く別物の映画なんですよね。
「リング」はもともとお化け屋敷ムービーというより怪談的要素が強い、ということです。
日本でどちらも鑑賞した人にはおそらくわかっていただけると思います。

日本版「リング」にいたってはラストの「貞子がテレビから出てくるシーン」が
あまりにも怖かったと言えば怖かったわけですけど、あそこ以外で
怖いシーンなんかほとんどないわけです。途中でもたくさん怖がらせますけど。
あそこまで持っていくためのシナリオ、物語が怖いのであって、ラストのは言わば駄目押しという
やつです。あのシーン、つまり貞子という存在を大きくクローズアップしすぎて続編を製作しまったために
単なる失笑モノの映画に成り下がっていったのだと思います。
 
 本来、このシナリオで重要だったのは
「ビデオを見たら一週間以内に死ぬ」という部分だったと思うのです。
「貞子という存在がビデオを見た人を殺しにテレビから出てくる」というのは言わば
演出の一環でしかなかったはずが、それがシナリオの根幹に居座ってしまった、
これが続編が成功しない理由だと私は思います。
(いや、興行的にはむしろ大成功ですが、日本ではあまりヒットしないでしょう)

 ま、海外では「ジャパニーズ・ホラー」というなんだか得体の知れない説明のつかない
存在にひたすら殺される、という恐怖物語が新鮮だったというだけのことだと思います。
「呪怨」のヒットをきっかけに「リング」も作ってみましたよ、
お、それなら見に行こう、ジャパニーズホラー、
ということでヒットしたのだと思います。

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2 コメント

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Unknown (kiki@管理人)
2005-07-09 17:39:53
>まつさん

そうですねーまさにモンスター映画でした。

情緒がなかったですね。

中田監督には期待していただけに残念です。
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ありがとうございます (まつさん)
2005-06-25 17:47:05
コメント&トラックバックありがとうございました。

清水崇監督が言ってましたが、ハリウッドは「モンスター」を出したがる。

この「リング2」はまさに「モンスター映画」になってしまいました、残念。

ビデオテープはどうなったのでしょう?蓋を閉めたらサマラの怨念は解けるのでしょうか?

あまりにもチープです。

この映画を見ると清水崇が「THE JUON/呪怨」でどれだけハリウッド側と戦ったかがよく伺えます。

アメリカでヒットしたのは第1週のスタートダッシュのおかげで、その後チャートを失速したのは当然の結果のように思えます。

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