Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

ラテンアメリカ及びロシア文学

2011-08-26 00:40:54 | 文学
ロシアにいる間、喉から手が出るほど欲しかった本2冊を本日購入。

『ラテンアメリカ五人集』
ハルムス『ヌイピルシテェート』

書店で後者の目次をぱらぱらとめくってみて、驚きました。「エリザヴェータ・バム」が訳されている!それからあの作品やこの作品も、という感じで、驚きっぱなしでした。この衝撃的な目次に圧倒されながらも、ぼくは2200円を支払ったというわけです。

ところでハルムスにはタイトルのない作品が多いですが、しかし目次でそれを全て「×××」で処理してしまっては区別が付かないので、冒頭の文句を( )付きでタイトルに付すとか、そういう工夫がほしいものだ。

いつかちゃんとした解説付きでこういう翻訳が出てくれるとうれしいですね。増本浩子・グレチュコ訳は解説が充実していてうれしかったので、彼らには別の作品も訳していただいて、そしてもちろん解説付きで出版してもらいたいです。

さて感想ですが、実はまだ半分しか読んでいないのです。「エリザヴェータ・バム」の感想くらいなら書けますが、ロシア語でもう何度か読んでいるしなあ。・・・ちょっと気になるのは、翻訳の底本に何を使用したのか、という点。たとえ一般向けの翻訳でも、これまで文学作品の翻訳の場合、巻末の解説で底本についてはきちんと紹介がなされるのが通例でした。一般向けとは言っても、学術的な価値を持ってもらいたいものです。確かに多くの人にとっては翻訳本が学術的な価値を有する必要性はないのかもしれませんが、これから勉強を始めようとしている、あるいは始めるかもしれない若い人たちにとっては必要な情報になりえます。よい翻訳本というのは、日本語の文学として通用するものであることはもちろん、学術的な価値を有しているものです。

しかし「エリザヴェータ・バム」を日本語で読める、というのはやはりある種の感動でした。いい時代になったものだ。この作品は様々な解釈が可能ですが、一つ有名な解釈を老婆心ながら紹介しておきますと(なにせ本に解説がないもんで)、この戯曲はスターリン時代の不当逮捕を予示したものである、というのがあります。スターリン時代の民衆がそうであったように、エリザヴェータは罪状がはっきりしないままに逮捕されるというわけです。また、誰が読んでも分かるように、原因→結果という連鎖がねじれてしまっていますが、これはハルムスによく見られる詩学だとも言われています。とまあ、当たり障りのないことを書いておきましたが、このへんを念頭に置いて読み直してみると、新しい発見があるかも・・・?

さて『ラテンアメリカ五人集』ですが、やはり「シリーズ全四巻完結」らしいです。なんでだよー!と叫んでおく。まだまだあるじゃないか。「第二期」がやってくることを切に願います。で、この本を読む日は遠からずやってくるのかな。