ごっとさんのブログ

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脳内の「やる気スイッチ」を発見

2017-02-18 11:21:35 | 自然
生理学研究所と慶應義塾大学の研究グループが、脳の損傷などにより意欲が極度に低下する「意欲障害」を起こす脳の部位を、マウスの実験で特定したと発表しました。

意欲障害は認知症などの神経変性疾患や脳血管障害、脳外傷などの脳の障害に伴って多く見られる、意欲つまり「やる気」が極度に低下する症状です。この障害が起きるメカニズムが不明なため治療薬はありませんでした。

研究グループは、線条体という脳の部位が損傷すると意欲障害を引き起こす頻度が高いという臨床結果を参考にして、線条体を構成する大脳基底核と呼ばれる脳領域の細胞集団(D2-MSN)に注目しました。

この実験のためD2-MSNを除去できる遺伝子改変マウスを作成しました。この辺りの詳細はよく分かりませんが、通常はこの細胞集団を除去すると、大きな障害や死に至る可能性があるようですが、遺伝子操作によって除去しても問題ないマウスを作り出したようです。

この遺伝子改変マウスと正常なマウスに、餌をもらうためにレバーを押す実験を行ったようです。この実験は比率累進課題と呼ぶようですが、なかなか面白い実験のようです。

簡単に言えば餌をもらえるためにレバーを押す回数がだんだん増えていくという課題です。つまり初めは1回レバーを押せば1個の餌がもらえるのですが、2個目は2回押す必要があり、3個目は4回、4個目は6回と増えていくわけです。たとえば14個目の餌をもらうためには95回レバーを押す必要があるという具合です。

当然マウスは途中で餌をとることをあきらめるわけですが、そこまで頑張ったレバーを押す回数で、意欲を数字的に出すことができるようです。

実際にはこの学習が済んだ遺伝子改変マウスの、目的とする細胞集団だけを神経毒を用いて細胞死させるという手順です。これによるとこの細胞集団の17%を死滅させるだけで、大きな意欲障害が観察されたとしています。

その他光を用いて特定の細胞集団の活動を操作する手法を用いても、このことが意欲行動を示すのに必須であることが確認できたようです。研究グループは、「やる気」を生むにはD2-MSN以外にもいくつかの部位が関係しているとしていますが、「やる気」を維持する脳部位を始めて特定できたとしています。

また損傷脳の意欲障害のモデル動物ができたことで、これを改善する薬物の探索にも利用できるとしています。このように脳という非常に重要な部位の役割の解明は、予想以上に進歩しているような気がします。