少女の卵巣から頭蓋骨

少し前のニュースですが、滋賀県の少女の卵巣から髪の毛や頭蓋骨、脳の一部が見つかったという報道がありました。

この16歳の少女は虫垂炎の（いわゆる盲腸）手術を受けたのですが、そのとき卵巣に大きな腫瘍があるのが見つかったようです。その後改めて手術をすると、１０センチほどもある腫瘍の中に頭蓋骨などが入っている、テラトーマが見つかりました。

このテラトーマは奇形種と呼ばれていますが、本来他の場所で作られる臓器が、他の場所でできてしまう現象のようです。このテラトーマは、寄生性双生児と間違われやすいようですが、こちらは双子の片割れの一部が体の中に残ってしまうという症状です。

これもそれほど多くはないようですが、双子の一部が体に余分についてしまったり、場合によっては手足が2本以上できてしまったりすることもあるようです。

このテラトーマで思い出すのが、手塚治虫の「ブラックジャック」に出てくるピノコです。こちらは双子の片割れが、完全な体にならず色々な部品として、奇形種の中に入っていたという想定です。この臓器が正常に動くことから、ブラックジャックがプラスチックの体を作り、その中に納め一人の人間として蘇らせたのがピノコでした。

現実には無理そうですが、そういったキャラクターを作り、漫画をより面白くする手塚治虫は本当にすごい人です。この漫画はコミックとして出たものを、何度も読み直していました。

このテラトーマがなぜできるのかははっきり分かっていませんが、未熟な卵細胞の異常な分化が原因とされています。これは卵巣以外にも脳や甲状腺、肝臓、肺などにも見られているようです。この辺りは幹細胞の分化という、非常に難しい問題がからんでおり、異常ではありますが興味ある課題といえます。

この少女の卵巣から見つかった小さな脳には、脳幹のような構造とかなり高度に組織された小脳が含まれていたようです。この脳は幅3センチもあり、ニューロン間で電気刺激を伝えることもできたそうです。

テラトーマがあると、体が異物を排除しようとするためか、性格の変化や偏執、混乱。動揺、発作などを起こすことがあるようです。しかしテラトーマそのものは比較的良性で、このケースのように手術すれば割と簡単に取り除けるとしています。この少女はもともと症状もなく、手術後は完全に回復しているようです。

植物と違って動物では、幹細胞の分化は起こらないとされているのですが、自然はごくまれにこのような現象を引き起こすようです。