Catch Ball

修業の時計を止めない教師でありたいです。

数のピラミッド

2011-01-14 23:59:01 | 算数
 1月11日,新年最初の授業で数のピラミッドを扱った。
 
 「今からみんなの今年の運勢を占います。4枚のカードを引いて,一番下の段に並べます。たし算をしていって,頂上が偶数なら大吉,奇数なら凶です」

 偶数,奇数という用語は学習していないので,説明して教えた。

 「ではAさんの運勢を占います」と言って,4枚のカードを引かせた。
 たし算をした結果は49。見事に凶である。
 偶然とはいえ,49とはあんまりである。
 「これは大変だ。『死』と『苦』ですね。これは縁起が悪過ぎる」
 冗談と受け止めて笑い飛ばせるような子どもたちだからよかったものの,新年早々これは問題発言だった。

 「これはちょっと嫌な数字だから,4つのカードの場所を入れ替えましょう。さあ早く」と投げ掛けて,入れ替えさせた。
 しかし,またしても凶。
 「うわーっ」と言って再度入れ替えさせても,また凶。

 次の子を指名し,4枚のカードを引かせた。
 たし算をすると凶。
 入れ替えても,またまた凶。

 このあたりになると,子どもたちから「どうやったって,奇数にしかならないんじゃないの?」という声が挙がってきた。

 別の子が4枚引く。
 「また奇数だろう」と子どもたち。
 しかし,今度は偶数になり,大吉である。
 「あれ?」「どうしてだ?」と子どもたちは考え始めた。

 次の子が引くと,奇数になり,凶であった。
 入れ替えても,凶である。

 最後に「先生が,今年の3年1組の運勢を占います」と言って,4枚引いた。
 もちろん意図的に偶数になるように引いたのである。
 結果は大吉となり,「今年もいいことがたくさんありますね」と言い,「どんなときに偶数になり,どんなときは奇数になるのか考えてみると面白いですね」と投げ掛けて授業を終えた。

 休み時間になると,さっそくカードを引きながら考えている子どもたちが何人かいた。

 それにしても,「凶」になったらたまったものではない。
 せめて「小吉」あたりにしておくべきだった。

【参考文献】
 細水保宏著『算数のプロが教える授業づくりのコツ』(東洋館出版社)

大きい数のしくみ 2

2010-07-10 23:58:47 | 算数
 東京書籍『新しい算数3下』P.3の挿絵を示す。

 木村重夫氏は『向山型算数教え方教室』2007年4月号で次のように書いている。

 私の指示はこうだ。

 A「魚の数を数えましょう」

 違う言い方もあった。(B)

 B「魚は何びきいるのかな」

 どちらも同じか,違う。どちらがよいか。
 Aは,「やること」を明示した指示だ。
 Bは,「たくさんいる魚の数」を問うている。子どもにとって自然な問いはどちらだろう。後者だ。


 これを参考にすると,指示は「入場券の数を数えます」ではない。次のようになる。

「入場券は何枚あるのでしょうか。教科書に数字を書いてもいい。図を書いてもいい。『何枚』と書いて持ってきなさい」

 ここは算数的活動の場面である。

「1000の束を10個,丸で囲みなさい」

というような指示からいきなり入るのは,逐一指導にはならないだろうか。

 2004年9月号で向山氏は次のように言う。

 子どもは混乱していいんだ。混乱するのも大切な学習なのだ。
 いつも,いつも温室で育ててはいけない。


 ここで子供たちが混乱しそうなのは何か。1000の束である。
 100の束が1つ,10の束が5つ,ばらが3枚で混乱する子はいない。
 1000の束が24ある。これをどう数えればいいのかで混乱するのである。
 
 もちろん初めから10ずつ囲んで24153解正解を出す子もいるだろう。
 しかし,114153などと答える子,全く分からないという子も出てくる
 
 混乱するからこそ学び甲斐がある。
 分からなかったことが分かるようになったからこそ,向上的変容を実感できる。
 
 一通り活動させた後で,
「1000の束を10個,丸で囲みなさい」
と指示する。
 教師も一緒に板書して示すことで,配慮の必要な子への視覚支援になる。
 
「1000の束が10個でいくつですか」

既習事項であるから「一万」と答えられる。

「絵の下に『一万』と書きなさい」

 「一万」が2つできる。

「一万と一万でいくつですか」

 二万であることが理解できる。

大きい数のしくみ 1

2010-07-09 22:55:44 | 算数
 『向山型算数教え方教室』10月号の原稿依頼を受けた。同誌の原稿執筆は9回目であるが,2006年9月号以来で4年ぶりとなる。
 依頼を受けたテーマは「学年別10月教材こう授業する」の「小3 大きい数のしくみ 『習得型』授業の組み立て&ポイント」である。

 木村重夫氏のサイトに「大きい数のしくみ」の単元の基本型一覧が載っている。http://www1.ocn.ne.jp/~shigeo/3--58.htm

【1】数字から漢数字へ

 基本型はこうである。

 2 4 1 5 3  
 万 千 百 十 一
二万四千 百五十 三

 最初に数字を1マスおきに書かせる。次に位を1マスおきに書かせる。数字と位が縦にそろう。
 これを縦に読めばよい。

 途中に0が入っても応用可能である。

 6 2 0 3 0  
 万 千 百 十 一  
六万二千  三十


【2】漢数字から数字へ
 
 基本型はこうである。

 万 千 百 十 一  
五万七千二百九十 一  
5 7 2 9  1

 0が入る場合はこうなる。

 万 千 百 十 一  
四万五千九百      
4 5 9 0 0   


 万 千 百 十 一  
三万    七十    
3 0 0 7 0

 これはすんなりとはいかないだろう。0の書き落としが多くなることが予想される。
 このような場面では,教師がわざと間違えるという教育技術がある。間違うことで子どもたちの関心を引き付け,思考を活性化させる。

あかねこ計算スキルのユースウェア 2

2010-03-30 00:06:42 | 算数
7 10番からの答え合わせ

 やめ。
 答え合わせをします。赤鉛筆を出しなさい。

※10番から答えを読み上げ,子どもが自分で丸付けをする。テンポよく答えを読む。


8 答え合わせのテンポの変化

 10番○○,9番○○,8番○○,7番○○,6番○○。

※ここは,間を空けないぐらい速く読み上げる。

 5問コースの人,お待たせしました。
 5番○○,4番○○,3番○○。

※5問コースの答え合わせになったら,テンポを落とし,ややゆっくりと読み上げる。

 2問コースの人,大変お待たせしました。
 2番○○,1番○○。

※2問コースの答え合わせになったら,ゆっくり子どもをじらすように読み上げる。


9 100点の子を力強くほめる

 点数を書きなさい。
 どのコースでもいいから100点を取った人?
 よし!!すごい!!さすがです!!

※100点取った子をほめる。どのコースの100点も同じ価値があると,本当に教師が思っていることが大切である。


10 鉛筆から煙

 まだちょっと時間がありますから,残った問題をやります。
 全部終わった人は「早く終わったらやってみよう!」をやりなさい。
 今度はテストではありません。鉛筆の先から煙が出るくらい,猛スピードでやりなさい。
 用意,スタート。

※残った問題は猛スピードでやらせる。
※そうすることで,2度目の緊張を生み出すのである。


11 答えを参考に

<遅れ気味の子への対応>
 よく分からない人は,答えを参考にしてやって構いません。
 
※「参考にして」と言う。「写してもいいです」ではいけない。子どものプライドにも配慮する。


12 自分で丸付け

<早く終わった子への対応>
 見直しをしなさい。

※「できました」という子が4,5人になったら次のように指示する。

 終わった人は自分で答えを見て,丸を付けなさい。
 

13 シール貼り

 答え合わせも終わったという人は,あかねこシールを貼りなさい。 

※あかねこシールは時間調整のために使うものである。1問につき1枚,丁寧にはらせる。


14 そろえて終わる
 
 やめ。途中の人もやめなさい。
 自分で答えを見て,丸をつけなさい。

※途中でもやめさせ,最後は全員そろえて終わるようにする。


15 終わった子から休み時間

 答え合わせが全部終わった人は,あかねこシールを貼りなさい。
 終わった人から休み時間にします。

※計算スキルは回収しない。
※授業終了時点で,何問かやり残した問題がある。その問題を進んで家でやってきた子がいた場合は,教師が必ず取り上げ,大げさに驚いてほめる。そうすると,ほかの子どもたちも残った問題を家でやってくるようになる。

あかねこ計算スキルのユースウェア 1

2010-03-29 21:50:46 | 算数
 サークルのメンバーが,4月4日の「第55回向山型算数セミナー」での介入模擬授業に立候補し,授業をすることになった。授業は「あかねこ計算スキル」を行うという。
 
 3月31日にサークルで検討を行う。
 私は今年度,計算スキルを使っていなかった。1年間のブランクがあるので,若干ユースウェアについて鈍っているところがあるかもしれない。
 この機会に復習して,検討に臨みたい。


1 準備

 机の上には「計算スキル」と鉛筆だけ出します。
 教科書やノート,使わないものは全部片付けなさい。
 ○番を開きます。隣と確認。
 勉強した日。○月○日と書きなさい。

※余計なものは片付けさせる。
※開いたページをきちんと確認する。まれに違うページをやっている子がいる。


2 コース説明

 2分間でやります。

※標準時間のうち,短い時間の方に設定する。ただし,問題数やクラスの実態に応じて,標準時間内で時間を変更してもよいと考える。

 
 ゆっくり確実にやりたい人は「2問コース」を選びます。1番と2番だけをやりなさい。1つ50点,2つできれば100点です。
 もう少しはやくやりたいという人は「5問コース」を選びます。1番から5番までやりなさい。1つ20点,全部できれば100点です。
 もっとはやくできる,自信があるという人は「10問コース」を選びます。1番から10番までやりなさい。1つ10点,全部できれば100点です。
 2問コースでも,5問コースでも,10問コースでも,どれも100点。同じ価値があります。
 かけっこだって水泳だって速い人もいれば遅い人もいます。それと同じように,計算のスピードも人によって違います。スピードよりもしっかりとできるということの方が大切です。
 コースを選んで,チェック印を入れなさい。

※しっかりと趣意説明をする。どの100点も同じ価値があるということを強調する。


3 選択の確認

 ちょっと聞いてみます。
 2問コースを選んだ人?
 5問コース?
 10問コース?

※コースをきちんと確認する。


4 「やってみよう」はしない

 始める前にひとつ注意があります。
 「はやく終わったらやってみよう!」という問題がありますが,今はそこはやらないでおきなさい。
 はやく終わった人は見直しをして待っていなさい。

※「はやく終わったらやってみよう!」は最初はやらないということを徹底しておく。
※終わったら何をするのかを指示する。


5 時間経過を知らせる

 用意。スタート。

※タイマーは使わない。時間を延ばしたり,早く切り上げたりする際の配慮である。


 1分経ちました。残り1分です。

※正確に1分のときに伝える。


 まもなく終わりです。(1分50秒ごろ)

※1分30秒あたりで,子供たちの状況を把握する。間に合いそうもない子が多いときは,時間をやや延長する。みんな終わっている場合には,その時点で終わりにする。


6 個別指導
<配慮が必要な子に対して>
 なぞってごらんなさい。

※配慮が必要な子には,開始後すぐに後ろから寄り添い,指導する。顔を近づけ,赤鉛筆で薄く書く。

さんかくけい?さんかっけい?

2008-01-12 00:25:24 | 算数
 先日,算数で三角形・四角形の定義について指導したときのことです。
 黒板に三角形と四角形の図をかいて,「三角」「四角」と板書しました。

 「今までは三角とか四角とか言っていましたが,これから算数ではそういう言葉は使いません」
 このように私が言うと,子どもたちから「さんかっけい」「しかっけい」というつぶやきが聞かれました。

 「では,これからは何と言えばよいでしょうか。だれか黒板に1文字付け足してくれるかな」

 勢いよく手を挙げる子どもたち。黒板に書けるとなると,いつもにも増して挙手に力が入ります。
 
 子どもが「形」という字を付け足して,板書が「三角形」「四角形」になりました。

 「新しい言葉だから難しいよ。これはなんと読むのかな。さんはい」と言うと,子どもたちはそんなの簡単だという感じで「さんかっけい」「しかっけい」と読みました。

 「えっ?」と大げさに驚いて見せ,「さっきは『さんかく』『しかく』だったんだから,『さんかくけい』『しかくけい』じゃないの?」と聞いてみます。

 「また先生のうそが始まった!」「だまされないよ!」「ふざけないで!」と子どもたち。

 聞いてみると,「さんかくけい」「しかくけい」と読むのだと思う人は0.5人(半分だけ挙手していたため),「さんかっけい」「しかっけい」と読むのだという人が31.5人という結果でした。

 「それじゃあ教科書で調べてみよう」と投げ掛けます。
 
 「ん?」「あれ?」と子どもたち。
 何と教科書には「さんかくけい」「しかくけい」とふりがなが振ってあるではありませんか!

 「たまには先生も本当のことを言うんだね」と感心されました。

※国語辞典などで調べると,「さんかくけい」でも「さんかっけい」でもどちらでもいいようです。

新幹線の座席 3

2007-12-21 01:12:10 | 算数
 計算で考えるとはどういうことか,ピンと来ない様子である。
 そこで,Aを指しながら,次のように発問した。
 
「これは17人を何人と何人に分けたのでしょうか」

 2人と15人である。
 
「2人掛けの席に1組,3人掛けの席に5組だね」

 子どもからこのような考えが出ることが難しいと判断し,私が説明した。
 この考えをもとにして,BやCのときに分かればよいと割り切った。
 
 そして,次のように板書した。

【A】
    2……2×1=2
 17   
    15……3×5=15

 何となく分かったような分からないような表情の子どもたち。

 次にBを指して「これは17人を何人と何人に分けたのか」と問う。
 「14人と3人」と子どもたちは答える。
 
 「あっ,そうか。分かった」とつぶやきが聞こえた。
 その子に「これをさっきのように式にするとどうなるかな」と発問した。

【B】
    14……2×7=14
 17
    3……3×1= 3

 「おお,そういうことか」とさらに反応が大きくなってきた。

 「ではCの場合はどうなるだろう」と問うと多くの手が挙がった。

【C】
    8……2×4=8
 17
    9……3×3=9
 
 分からなかったことが分かるようになったのである。
 向上的変容である。
 
 最後に類似問題として,「今度は19人のグループが乗ってきました。どのように座ればよいでしょうか」と問題を出した。
 図にかかせ,式をノートに書かせた。
 
 面白いネタによって,子どもをひきつけ,かけ算九九の利用について理解を深めることができたと思う。
 
 この実践は田中博史氏の実践の追試である。(NHK教育「かんじるさんすう1・2・3!」)

新幹線の座席 2

2007-12-20 04:49:31 | 算数
 書いては消し,書いては消し,格闘しながら問題に取り組んでいる。
 しばらくして「できた」という子がいた。見ると,次のように書いてある。

【A】


●●●●●
●●●●●
●●●●●

 「なるほど。これなら1人ぼっちの子もいないし,知らない人も隣に座らない」と丸をつける。
 その後,「でも,何だか2人だけのところは寂しいね」と投げ掛けた。その子は別の座り方をまた考え始めた。
 
 できた子からノートを持ってこさせ,できた子には別の座り方はないか考えさせた。
 
 15分ほど考えさせ,黒板に発表させた。
 まず,先ほどの考え方を板書させた。
 次に,次のような考えを板書させた。

【B】
●●●●●●●
●●●●●●●




 「これもいいけど,ちょっと寂しいねえ」と投げ掛けた。
 
 これらは誰がどのような図を書いたかを把握し,意図的に指名したのである。
 何の意図もなしにいい加減に指名したのでは指名したのでは,面白みのない授業になってしまう。

 「もう一つないかな」と問いかけ,板書させた。

【C】
●●●●
●●●●
●●●
●●●
●●●

 どれも正解である。
 この3つのパターンしかないのである。

 「これを計算で考えられないだろうか」と子どもたちに投げ掛けた。
 新たな問題提示である。
 しかし,よく分からないようであった。

新幹線の座席 1

2007-12-20 04:26:46 | 算数
 12月18日,算数の時間に行った実践である。
 教科書の内容は終了したので,発展的ネタを扱った。
 
 黒板にいきなり「新幹線」と書き,「新幹線に乗ったことがある人?」と聞くと,7割ぐらいが挙手した。なかなかすごい経験率だと思う。
 
 次に,通路をはさんで2人がけブロックと3人がけブロックに分かれている座席表を書いた。

「新幹線の座席は,このように片方が2人掛け,もう片方が3人掛けになっていることが多いです」

 「そうだよ」などと口々に言い出す子どもたち。
 そんなことは普通あまり気にとめないと思うが,本当に知っていたのだろうか。
 本当に知っていたのなら,なかなか鋭い目の持ち主である。

「17人のグループが旅行にきました。どういうふうに座ったらいいでしょうか」

 「そんなの簡単だ」という。
 そこで1人を指名して,黒板に書かせた。ここでのポイントはいきなりエース級の子どもに指名しないことである。

 2人がけの席にどんどん丸印を書き入れていく。
 すると1人余ってしまった。
 私のねらいどおりである。
 
「1人余ってしまったなあ。この人,かわいそうだなあ」

 子どもたちは別の座り方があるという。
 そこでもう1人を指名し,書かせる。
 
 今度の子は3人がけの席にどんどん丸印を書き入れていく。
 すると,3人がけの席のうち1つが余ってしまった。
 ねらいどおりである。

「これだと,隣に知らない人が乗ってきてしまって,ちょっと居心地が悪いかもしれないね。お話していると隣の人に迷惑かもしれないし…」

 これで子どもは本気になって考え始め,ノートに向かった。
 いったいどうやったら17人を半端な席が出ないように座らせることができるのだろうか。