田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

33年前の中国訪問記(7)

2024年01月25日 | 遠い日の記憶

 10月10日(水) 杭州市内

 まだ冷気が残る朝の6時過ぎ、朝食前にホテルの近くを散策した。出張した時のいつもの習慣である。中国の朝は早く、街は活気に満ちていた。食べ物の店はもう営業していて人通りが多い。朝食の惣菜を買いに来たのだろうか。

 店の中は湯気が立ちこめ、客が歩道に置かれたテーブルで食事をしていた。これと同じ風景を台湾で見たことがある。政治体制は異なっていても食文化は同じだ。

 写真で見た、北京の胡同にある集合住宅を思わせる。頑丈な壁にどっしりとした門構え。消えかかっているが、門柱には赤いペンキで文字が書いてある。

 路上での小さな朝市。驚いたのは、小学生が鞄を持って歩いていたこと。中国の小学校の始業は何時なのか、後で通訳に聞こうと思って忘れてしまった。

 今日は杭州市内を見学する。最初の訪問地は西湖。昨晩、畔を歩いたばかりである。この日は案内人が同行した。西湖の東には市街地が広がっており、西は山地である。四季折々の西湖十景で知られていて、いまは世界文化遺産になっている。

 ずいぶん大きな池だというのが初印象である。後にわかったが、西湖の畔は中国の民間伝承「白蛇伝」ゆかりの地であった。小学生の時に総天然色の漫画映画「白蛇伝」を観て、その美しい映像に魅入られたことがある。知っていれば、初めて訪れた西湖の印象も、また味わい深いものになっていただろう。航跡の向こうは杭州市街。

 遊覧船に乗って三潭印月という中ノ島に渡った。湖畔には昔の政府高官の別荘が何棟も建っている。蒋介石の別荘もあると聞いたが、写真ではどれだかわからない。高官の別荘好きは共産中国でも同じで、毛沢東の別荘は全国各地に残っている。

 

 西湖の西に龍井村があり、ここの茶畑で作られる龍井茶は中国の十大銘茶の一つといわれている。龍井村には行かなかったが、製茶工場を見学した。最初に会議室でレクチャーを受ける。龍井茶は日本の煎茶に近い香りと味だった。写真は昔ながらの釜炒り茶の工程で、見学者向けのデモである。

 湖畔の植物園にある「山外山」という菜館で昼食。園路を歩いていたら道端で男が地図の商いをしている。あれこれ物色し、大きな中国全図を買い求めた。あとで心配になり通訳に尋ねたら、大丈夫ですとの答えだった。

 昼食後、霊隠寺に参詣してから西湖の北にある黄龍洞へ行く。写真は「黄龍吐翠」といい、有名らしい。記憶がおぼろげだが、一帯は庭園のようになっていた。

 伝統芸能が上演されていた。案内人によると越劇の曲だそうである。

 

 バスの車窓から。当時は自転車が市民の足だった。

 警察官による交通整理。向こうに詰所のボックスがあり、屋根には大きな拡声器がある。街や人々の表情を見るのは旅の楽しみである。

 日本でいえば白バイ隊か。サイドカーが珍しい。武林広場でバスを降り、産業会館の見学など少し街を歩く。会館の1階で扇子を買おうとして「多少銭」と言ったが、若い女店員はきょとんとしている。思い直して英語で尋ねても通じない。諦めかけたとき中年女性が出て来て何か言うと、女店員が紙片に値段を書いてくれた。

 杭州のある浙江省は日本とは縁が深い。古代から海の道を経て日本と交流があったといわれ、空海もこの地を訪れた。変わったところでは赤穂義士の一人、武林唯七のルーツは杭州にある。

 日が暮れかかるころ杭州駅に着いた。一般客の待合室を通り抜け、隣の広いラウンジで時間まで過ごす。今日の夕食は車内で弁当を食べる。

 出発ホームで。モスグリーンの制服制帽を着用した、凛々しい姿の若い女性駅員がいた、写真を撮ってもいいかと聞いたが断られた。

 乗車すると、間もなくして発車した。希望とは違い、席は進行方向に後ろ向きである。列車がスピードを上げはじめた時、ガタンと急停車し、衝撃で背もたれに押し付けられた。やがて列車は何事もなく動き出したが、前の座席の人は弁当の中身が床に散らばっていた。

 10時に上海駅へ到着。4時間近くの汽車旅だったが、いまは高速鉄道で1時間である。ホテルに行くバスで、何か食べるものはないかと苦情を言う人がいた。夜も遅く、中国のホテルでそんなサービスはないだろう。通訳も素知らぬ顔をしている。

 明日は最終日である。

 

 

 

 

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