入試の季節である。共通一次試験の受験者数は49万人だったそうだ。私にも高校、大学と受験生の孫が二人いるので他人事とは思えない。昔、私が受験生だった時代にも競争はあったが、そのころの受験の歯車はシンプルで今よりゆっくりと回っていた。
中学生の時にはまだ偏差値という物差しは使われず、学校が行う実力試験の学内順位で受験先を振り分けていた。団塊の世代だから一学年で600人以上の生徒がおり、私は3年1 . . . 本文を読む
この盆に東京の長男家族が帰省して来た時、小学生の孫娘が2階の物置からギターを抱えてきた。長年、ハードケースに仕舞いこんでいたクラシックギターである。
私の世代は「禁じられた遊び」を弾きたくてギターを始めた人が多い。中学校の音楽の授業中に先生がこの映画の鑑賞を勧めたことがある。映画館で上映されていたのだろう。まだうぶだった私は題名を聞いてどっきりした。テレビでこの映画を観たのはずいぶん後である . . . 本文を読む
市の美術館で藍染め展が開催されている。会場では絞染や型染など藍染の技法と作品が紹介されていた。また機械染めで用いる、透かし彫りの金属製の筒も展示されていた。その金属の筒を見て、学生時代に捺染工場でアルバイトした時のことを思い出した。
季節は冬だった。場所は油小路五条下るの捺染工場だと憶えている。工場といっても、民家や事業所が建ち並ぶ市中の京町家だった。玄関の引き戸を開けると、すぐ右手に畳敷き . . . 本文を読む
I記者が赴任の挨拶に来た時は印象的だった。やや強面の人物がのっそりと入って来て、ぶっきらぼうな物言いである。だが話してみたら好人物だった。女性職員がどこの業界の人かと緊張したと笑っていた。
二次会で飲み屋街を歩いていたら、外車がクラクションを鳴らして追い越して行った。ある記者がうるさいと怒鳴って飲食ビルのバーに入った。少しして背広姿の二人組がいまのはどいつだと階段を駆け上がってきた。バーのマ . . . 本文を読む
半年前に、行きつけだった小料理屋が店じまいをした。ママさんの高齢が理由で、前年の暮れに地元ネタとして新聞に記事が出た。だいぶご無沙汰しているので迷ったが、昔の同僚から誘いがあり、チョコレートを手土産に出かけることにした。
1月の暖かい雨の日だった。店が飲食ビルに移転し大きくなってから、訪れるのは二度目である。考えることはみな同じで、職場の後輩だった女性も夫婦で来ていた。誘ってくれた同僚らと昔 . . . 本文を読む