離す。
土方隼人。
準決勝:土方隼斗 vs 羅立文 ~JAPAN POOL CHAMPIONSHIP 2023
新フォームにした土方隼斗プロ。
下半身が安定していて、極めて
フォームが美しい。
物理的に合理的なだけでなく、
ヴィジュアル的にもとても美しい。
そして、非常に綺麗な玉を撞く。
一つのビリヤードの完成された
理想形に近づきつつある。
後進の人たちのお手本になる撞球。
正統派のど真ん中の本筋。
こうした玉撞きが観ていても心地
良い。清涼感がみなぎる。
観ている者に明るい活力を与える。
爽やかで、かつ、強い。
本当のプロらしいビリヤード。
試合は羅(ロー)プロがマスワリ
2回の後土方プロにターン。
すると一気に土方プロは9連取。
9ラック先取のうち、6回マスワリ。
しかも、最後は強烈な4連マスワ
リで勝利。
「マスワリ王子」と10代の頃から
呼ばれたが、土方選手のマスワリ
率は図抜けている。
だが、これが本当の撞球のお手本。
相手にキューを握らせないのが
ポケットでもキャロムでも本筋で
の完封勝利である。
交代ブレイクはそうしたワンサイド
ゲームを回避する為の新ルールで
あるが、本来のビリヤードの勝負
からは外れた、スポンサー向けの
ビリヤード放送用のものだ。
交代ブレイクは試合も公平ではな
い。実力を発揮した者が圧倒的な
優位性を得るのが本来のスポーツ
での勝負だからだ。その実力発揮
を阻む疑似機会均等制度は、スポ
ーツにおける対戦の勝負性を希釈
するので、良質制度とはいえない。
準決勝:竹中寛 vs 北谷好宏 ~JAPAN POOL CHAMPIONSHIP 2023
サムライ竹中、3-5からまくって
最後は怒涛の4連続マスワリで
決勝に駒を進める。
これが本来のビリヤード。プール
の醍醐味。
戦いの流れを掴んだら、相手に
キューを一切握らせない。
現在は交代ブレイクという意味
不明の疑似平等のルールの為、
連続マスワリは存在しなくなっ
た。
しかし、今年から開始された本
大会は、従前のルール通りの勝者
ブレイクだ。
こうでないと面白くない。
昔からニックネームがサムライ
だった竹中プロ。
店舗の名称も「侍」にしている。
風貌は戦国武将。
江戸期は髭が幕府により禁止され
たので、竹中選手の容姿は戦国期
~江戸初期までの武士風。
元和演武により、日本は茶筅髷、
もみ上げ伸ばし、髭、角鍔、朱鞘
が禁止され、珍妙なちょん髷が強
制されるようになった。
これは武士だけでなく町人に至る
まで髭と茶筅髷ともみ上げ伸ばし
は禁止だ。武張った風潮の粛清
のために出された法令だった。
よく江戸期中期以降の時代劇で
髭の武士が出てくるが、現実に
はあり得ない。水戸黄門が髭を
生やしているのも虚構だ。
竹中プロの特徴は、ほぼどんな
玉でも撞いた後の配置を見て
にやりとする仕草。
そして、目が真剣になり、スッ
と撞く。
その様も、江戸期の閉塞的な
武士ではなく、戦国期の侍の
ような仕草で、人気がある。
変化に富み、観客の目を楽しま
せるからだ。
戦国武将は個性の塊だ。
自己主張の王みたいな連中が
群雄割拠していた。日本全国
どこでも武士は全員が型破り。
その頃の侍のイメージが竹中
選手だ。
『引っ越し大名』(2019年/松竹)
なかなかよき物語に御座った。
しかし、幕命による転封転封の連続
なんてのは、家中にとってはたまら
んね。
武家政権時代は、極限パワハラの
時代。
しかし、武士などの身分を超える、
人の信義とは何であろうか、とい
う事がテーマの作品。
かなり良作。
平口結貴プロのMezz Cue。
最近のキューは手玉のトビを抑える
ために、重量増となる先角を極度に
短くする設計のキューが趨勢。
この平口プロのシャフトは、先角と
いうよりも、もはやタップを接着す
るだけのリングのような構造になっ
ている。
先角の元々の意味は、キュー先の木
部が割れないようにガイドのカラー
の役目だった。
そのため、丈夫な大羊の角や象牙が
使用されて来た歴史がある。
ただし、キュー先の重量が増すと、
手玉の横トビが増幅するため、キャ
ロムなどでは大昔から先角を短くし
て軽量化する構造になっていた。
また、ポケットでも、先角をカット
して手玉横トビを抑える改造を施し
たプロは多かった。
しかし、手玉のトビが極限まで減少
するということは、球種が極度に少
なくなる事と連動するので、極端な
トビ除去設計を嫌うプロも多い。
ノーマルソリッドシャフトをあえて
選択するプロがトッププロに多い
のも、そうした理由による。
「手玉の突出した直進性=良いキュー」
ではないからだ。
こうした手玉直進性のみを求める
といったキューの登場という歴史的
な変化は、決して「道具の進化」で
はなく、多様性を持つキューの登場
として捉えるのが正鵠を射るものだ
ろう。
キューは自分が使う道具なので、自
分が気に入った、自分のプレースタ
イルに合った物を選ぶのが正解だろ
う。
私個人の場合は、ハイテクシャフト
とカーボンシャフトは使用しない。
私の撞き方においてはそれらの優位
性を見いだせないからだ。
私の場合はソリッドシャフトが合致
している。
世界大会で活躍する平口プロ。
シュート力抜群の選手だ。
TAD遣い、内垣健一プロ。
あえてTADを使い続けているのが
滅茶苦茶カッコいい。
TADを使い続けるのはトッププロ
では女子の佐藤麻子プロと男子の
内垣プロしかいない。
そして、ノーグローブ。
トラディショナル・スタイルだ。
時代の流行に流されて変転せず、
自己の視座が盤石。
立ち位置と振る舞いが清冽である。
武士みたいだ。
ベスト8:内垣建一 vs 北谷好宏
~JAPAN POOL CHAMPIONSHIP 2023