渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ドラマ『ザ・シューター』(2018)

2022年07月26日 | open


『ザ・シューター』第9話「弾道の強み」

主人公は世界有数の狙撃手の
軍人だった。
来米したウクライナ大統領暗殺
を阻止するアドバイスをアメリカ
国家から要請されたが、大統領
暗殺犯にしたてあげられてしまう。
そして、その裏には米露の闇の
権力がある事を突き止めた。
彼は逃亡を続けながらも強大な
権力に立ち向かう。

主人公が敵の拠点を奇襲する時
のシーンが上掲画像だ。
奇襲チームがドアをノックして、
ドアを開けた敵を
しゃがんで待ち
構えていた主人
公がMP5サブマ
シンガンのサプ
レッサー付モデル
の単発一発で
額を撃ち抜いて即死
させる。

これ、映像作品の描写としては
まるで✖なやつ。
弾道が全然違うからだ。
主人公の俳優の大ミスだ。
しかし、この第9話の題名は
「弾道の強み」だ。皮肉。
大統領暗殺の時の銃弾の種類と
弾道がこの事件の大きな鍵と
なっている事を解明する章だ。
でも、シーンでこれはあかんやつ。
きちんと敵の役をしている役者
の額に銃身の延長線をもって
いく演技をしないと、世界有数
の狙撃手である演技とはなら
ない。
しかも、この俳優、1400mの距離
を狙撃して命中させる腕の役なの
に、狙撃ライフルを構えた時に
首が傾いてる(笑)。
スコープ覗きの時だけでなくオー

プンサイトのMP5の時も傾いて
いるが。
また、狙撃銃もピストルもハンド
リングがド素人。ヘイ!カラオキー
のマイクじゃないんだから、頼むよ。

もっと役を引き寄せ、自分から役
に肉迫し、
主人公そのものになっ
てほしい。役者ならば。

というか、俳優としてプロでは
なくド素人すね。
この手の「俳優」気取りは実に
多い。全世界に。
日本人の時代劇俳優とかにも多い
し、アメリカのガンマン役の「役
者」にも多い。

日本の場合はその背景がなんとな
く分かる。
それは江戸期の歌舞伎や旅役者の
「芝居」などが、あくまで現実か
ら乖離した舞台演劇として発達
して来たからだ。「つくりもの」
である事を大前提としている。
その延長に現代映画やドラマ等
もあるために、日本の時代劇は
超ウルトラ非現実性を持ってい
る。
なので、時代劇俳優でまともに
剣術や武術ができる人間は殆ど
存在せず、出鱈目な刀法や歩き
方や所作を行なって映像に収ま
っている。ひどいのになると刀
の刃側に手を添え握って扱って
剣術の達人の演技としたりとか。

しかし、現実はそうした映像とは
かなり異なる。
だが、「子どもの水鉄砲で撃った
ら.308の銃弾で頭を撃ち抜かれた」
というような表現をするのが映像
作品には多くみられる。
そもそもが、ファンタジーなのだ。

このドラマだけではないが、銃撃戦
での奇天烈デタラメは映像作品に

非常に多い。銃撃戦で車のドアに
隠れて防御とか(笑)。
スポスポに車のボディなどは銃弾
は貫通する。紙のように。
ライフル弾などは、数百メートル
離れていてもドラム缶を貫通する。

このドラマでも終始これ。
室内戦でライフル弾をパーテー
ションで防いでいる。サバゲの
BB弾じゃないんだから。5.56ミリ
SS109のNATO弾なんだから。
あり得ない。

戦車の外板のような装甲板が入った
ビルの事務室パーテーションだと
でもいうのだろうか。

西部劇でも、テーブルの向こうや
空樽の向こうに隠れたら銃弾を防
るとか、あまりにも現実離れし
たお花畑描写
が多すぎる。

主人公だけではない。

FBIなどの捜査官をバッタバッタと
狙撃で倒す凄腕ロシア軍
スナイパー
役の役者のフォームが
これだ(笑)。

銃は垂直に構えずよじれ曲げ。
頭部
は水平ラインを大幅に傾けて
スコー
プを覗き込む。
超ド素人が全員やる有名なやつ。
光学機器の銃眼は
十文字の目盛り
が出ている。

水平は?(笑)
どうやってサイトの水平を取る?
こうやって首傾けて車運転できるの

か?超高速走行とかで。頭を傾けて
ずっと直線も左右のコーナリングも
二輪でできるのか?
鉄砲撃ちも同じだ。三半規管は適切
に人体構造に沿って機能させる。
これ銃撃ち者には絶対に外せない事
だ。特殊なごく一部の例を除いて、
頭を傾けて構えるライフルなどは
この世の中に存在しない。

こういう出鱈目が蔓延しているのが
映像業界だが、そうした中にあって
もかなり現実世界に近い映像描写
を成している映画やドラ
マもあった
りもする。ごくたまに。
また、よく研究しているプロの

俳優は現実に即した銃の撃ち方や
刀剣の使い方をする。
この『ザ・シューター』は、話の
展開は面白いが、プロットや細か
い描写が出鱈目すぎて子ども
騙し
のような作品だ。

そして、駄作に多くみられる共通
現象。
「役者が作品を駄目にしている」
という現象が観察できる。

最終話あたりになると、かなりの
演技指導が入ったのか、結構まと
もなサマになってきている。
凄惨な物語だった。



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