渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ブレードシルエット

2023年07月30日 | open
 


私がオールド・ヴィンテージ・ガーバー
に惹かれるのは、ブレードシルエットが
どことなく日本刀を彷彿とさせるからか
も知れない。



最近のナイフはこうしたシンプルなシル
エットデザインのものは少なくなった。
ただ、モーラや北欧プッコが人気出てきた
のは、廉価であることだけでなく、使い
勝手の良さを背景にしたブレードライン
の馴染みやすさにも要因があるのかとも
う。

ガーバーは製作者のマーフィーが去った
後もマーフィーによる提訴で敗訴等あっ
たりはしたが、ブレードシルエットは
戦前から人気を博したマーフィータイプ
だった。
それはもろに日本刀の小柄小刀のブレード
ラインともいえるものだった。


古いガーバーは、ドロップポイントでも
日本刀を連想させるという不思議な造形
を持っていると思えるのも、なんとなく
ガーバーのルーツと歴史を見ていると
背景が浮かんでくる。

この上のG.サカイのキャンプスタッグは
かなり使い倒した。
洋式ナイフでは珍しい和式刃物のような
片刃なので、料理やファイアフェザーを
作る時にはダントツの切れ味と仕事ぶり
を発揮してくれる。
 
上:ガーバー(ハイス鋼)
下:G.サカイ(ATS34)


分類はケーパーだが、ブレードラインから
やはり日本刀をイメージさせる作として
ブローニングのチーターがある。
この私の手元にあるチーターは、1995年
歳上の剣友が「研ぎの練習にしなよ」
と私にくれた。
これは洋式ナイフの研ぎについてかなり
勉強になった。


鋼材は440だったと記憶している。


岐阜県関のハットリ刃物がOEMで製造し
ていた。
これはハットリさんの娘さんに確認した
で間違いない。


今はブローニングのチーターは廃番とな
り、ややケーパー部を膨らませた同じ形
の物がハットリからリリースされている。
だが、鋼材は440ではなくVG10なので
めちゃくちゃ切れる。新品カッターの
ように切れる。


アルマーのような刻印がハットリのロゴ
マークだ。ロゴタイプも二つの書体を合わ
せたオリジナル。


私のネームが入っている。


ハンドルはハットリが黒檀のマグロで、
ブローニングが縞黒檀のマッカーサー
エボニーだ。今の時代、エボニーさえも
資源枯渇であまり出回らなくなった。


日本刀は姿形に掟があるが、洋式ナイフ
場合はブレードデザインは自由造形と
る。
しかし、凝りまくった複雑な造形よりも、
シンプルなブレードラインに私は惹かれ
る。その単純な造形は、使い勝手の良さ
をも担保するようにも思える。
野外でナイフを使いまくると、ここを
こうすればもっと、というような物は
各個人でどんどん出てくることだろう。
しかし、それはシンプルブレードこそが
汎用性と実用性の王道なのだなあ、とい
事もだんだんと見えて来る。
そして、結局は、単純簡素なブレードの
シルエットデザインのナイフを選ぶよう
なって行く。
私の周囲のナイフ遣いたちを観ていても、
そうした帰着性のような傾向が見られる。
結局はガバだよね、みたいな。
ガーバーのガバではなく、ガバメントの
ガバね。ガバメントも始発であり終着
のような気もするが。
 
あと、ナイフの使い勝手というものは、
大きすぎるナイフは意外と使いにくい事
も実施を重ねると体感して来る。
私だけでなく、多くのナイフ好きの刃物
遣いたちが、野外で大小2本以上のナイフ
を身につけて使い分けるのはその為だろ
う。
パターでドライバーショットはできない
ですよね、という感じなのだろうが、
これは確かにいえている。
8.5〜9.5センチほどのブレードのナイフ
がどれ程使いやすいことか。
 
ナイフを選ぶのは大抵はパッと見のデザ
インで選ぶ事だろう。
それはとても大切な事だ。
見て、即「あ、いいな」と思わなければ
惚れ込んで使い込まないからだ。
見た目の印象はとても大切だ。
私の場合は、一つだけとても気をつける
事がある。
それは厚みだ。日本刀でいうところの棟
重ねにあたる部分。
 
ブローニングチーターを気に入ってるの
は、ブレード9.5ミリクラスのナイフで
あるのに、厚みが5ミリ近くあるのだ。
これは珍しい。
そして、ブレードはフラットグラインド
(ハットリはハマグリ)なのだ。
これはですね。良いです。頑丈。
但しナロータングなのでバトニングには
向いていない。バトニングで激しい使い
方をしたら壊れるだろう。その用途の
構造ではない。本格バトニングにはフル
タングが適している。バトニングはフル
タング+コンベックスグラインドに圧倒
的に軍配があがる。


ブローニングのチーターは通常使用の
範囲では全方位的に良い
のだが、私の
オールドルドガーバーと同じで、一つ
だけ欠点がある。
それは、ストラップを着けるソング
ホールが無い事だ。
これは草深い野外や川の中で落としたら
アディユになってしまう。
何かの拍子に手から落ちないようにソ
ングホールはあるのだが、これは日本刀
でも軍陣仕様の拵では手に絡める緒を
装着できる仕様になっている。太刀な
どは典型だ。
また、宮本武蔵の木刀(伝)には日本刀の
手貫緒(たぬきお)のように紐を通す穴が
柄頭に開けられている。
ソングホールの有無は、結構野外実用
刃物では大切なのだ。
 
穴無し。
 
ナイフは楽しい。
観ていても、使っていても。
人の役に立つ道具。
その内含せる質性が幸せ感をもたらす
のか。

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