渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

理論と実践

2023年02月27日 | open
 
 
1980年代中半、プールの全日本の
大会を東急東横線都立大駅そばの
会場で観た。
日本のトッププロのプレーを食い
入るように見た。目の前で。
私がキャロムからポケットに転向
した頃だ。
ある国内トップで世界戦にも出て
いるプロの撞く玉で一つ発見した。
それは点玉を最後に撞く時、真っ
直ぐ以外のアングルでは必ず全て
半タップ以下程ヒネリを入れてい
た事だった。
 
解らなかった。
ある日、アマの大会に出た時、
優勝を決めた人が決勝で同じ玉を
撞いていた。
私はベスト16で敗退していた。
論外。
私は試合後に質問攻めで教えを
その人に請うことをした。
なぜ捻るのかと。
すると、日頃見知った仲だった
その人は、スキッド回避の為に
あえてスロウを発生させてい
る、
と笑顔で教えてくれた。
目から鱗落ちだった。
トビ回避の為に捻りを封印する
のではなく、トビ制御よりも恐
ろしい予測不能の摩擦による引
っ張られ厚め外しを消滅させる
為の順捻り入れ。しかも最小
のトビにさせつつ最大限に
イン
グリッシュによる手玉
的玉の歯
車作用での不正軌
道の回避。
 
トッププロが一様にラスト玉を
やや強めの撞き出しでかつ半タ
ップの極小ヒネリを使っていた
理由がようやく理解できた。
ぬるりとは点玉は撞かない。
無論、途中のゲームでも転がし
玉などはやらない。結構スパン
と撞く。
これはアメリカのトップ=世界
のトップもそうだった。
ドカンではなく、しなやかに
スパンと撞く。突くのではなく、
撞いている。
 
実際に半タップ以下捻りで点玉
を撞いてみた。
半タップなのでトビは極小、見
越しはほぼ要らない。
ぬるりとではなくスッと撞く。
全く不正軌道の現象は現れない。
 
一つ勉強になったどころか、大
きく扉が開かれた。
結果は伴う。
ポケット・ビリヤードを始めて
一ヶ月以内に、1.6玉幅の華台で
完璧なナインボールマスワリが
出た。
上級者と撞く時、穴があく程に
いつも見ていた。常に。全ての
技術を盗んでやろうと。
そうした事を続けていたら、い
つの間にか自分でもできる玉筋
がまるで海綿が水を吸うように
増えて来た。
 
ボウラードは始めてすぐに160〜
180点台だったが、200アップ
に苦労した。馬鹿だからブレイク
のやり方を知らなかったのだ。
綺麗に割って取り切る計画性が
無かった。
 
ブレイクでキューを振るのをやめ
た。キューを投げる。真っ直ぐに。
割り方が掴めた。
キューの滑らし投げを教えてくれ
たのは同い年の立花プロだった。
200アップはたやすかった。
全ては割り方だ。
14.1ラックのようにブレイクボー
ルを残す事もしなくてよい。
ただ正確に入れて正確に手玉を
出す事の繰り返しだ。
1-2ミスだけの250アップもじき
に出るようになった。200点以下
になる事は滅多になくなってい
た。
 
ボウラードは私はただのボウラ
ードとしてはやらない事にして
いる。実が少ないから。
私はボウラードの為のボウラー
ドはやらないようにしている。
コツコツ玉のボラ取りのボラ入れ
はやったら意味ない。
私はできる限り実践競技と同じ
を撞く。しっかり捻って、
しっ
かり撞いて入れて出す
事を心掛け
ている。
 
ラスト玉へはちょい手玉出し過ぎ。


撞点右下。スロウさせる。


芯ずらしの技法で撞く。


テイクバックでキューは握り
締めない。


しなやかにスパンと撞き出す。


シュートイン。


撞点の上下選択はスクラッチ
回避の為。ヒネリはスロウに
よるスキッド回避の為。芯ず
らしは見越し取りの補正の為。
それらを融合させたのがラスト
玉の玉筋の撞き。



 
だが、ビリヤードはボウラード
ではない。対戦競技だ。
最新ルールのテンボールでの
シュートアウトのようなPK試合
などは本物の対戦ビリヤードで
も何でもない。
それは駆け引きが無いから。
熾烈な決め玉による一気挽回や
エンターテイメント性が一切な
いから。
フリースロー対決で勝敗を決め
るようなものはビリヤードでは
ない。
サッカーじゃないんだからPK
なんて。
 
ボウラードはあくまで指針であり、
ビリヤードそのものではない。
ボラだけやって、ビリヤードを
やったつもりになってはならな
い。
理由はボウラードはあくまで種目
「一部」だから。
しかも、日本人が考えたローカル
のゲームだ。
そして、ボウラードには欠点が
ある。
それは、点数が倍増するシステム
なので、実力判定にはならない事
だ。
ストライクを続けて10フレまで
続けた場合と9ミスで10フレまで
行った場合では、外した玉は各
フレで1個しか違わない。
だが、点数は大幅に異なるイン
フレシステムとなっている。
 


ボウラードは正確に実力を判定
するモノサシにはならない。
ボウラード偏重になると、日本
のプロのように弱いプロ層にな
る。いくら入れが良くとも試合
では勝てない。日本でもトップ
プロは入れ転がしなどしない
別物のプレーヤーだ。全員が。
アマに負けるプロなど一人も
いてはいけないのだが、日本に
はそうしたボウラードプロが
ごろごろいる。
プロ試験などが単なる運転免許
の資格試験になってしまってい
るからだ。
ビリヤードのプロテストは日本
のプロスポーツで一番ハードル
が低い甘いテストかもしれな
い。
ボウラードは対戦競技ではない
ので、ボウラードを練習しても
試合には役に立たない。
玉入れだけが上手い撞き者にな
ってしまう。
とにかく試合対戦だ。
それが根幹。
 
その為には、「この玉を外した
らあとは無い」というものであ
る点玉は特殊な特別の撞き方が
あるし、それをする。
そうした事は一人相撲のボウラ
ードからは学べない。
実践的な撞きを実行する事の
切さは、対戦の実践の中に
こそ
生きている。
対戦という選手の戦いの中に教
えがある。
それが撞球。
撞球のスポーツたる最大の要素
がそこにある。
誰とも対戦もせず自宅のテーブル
で一人でやってる玉入れ。
それはビリヤードではないの
です。

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