渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

自作もの

2022年01月04日 | open


私の持ちキューでは、本物パパ
TADは完全リペア後に動態保存
モードに入った。
この画像のキューは、パパTAD
のプレーンモデル(通称ストレート
/坊主)をコピーした私のオリジ
ナルキューだ。
TADと同じくバット部分(真ん中
から下)は一本木の無垢材である。
バットブランクは30年間寝かせた。
製材されてからかなり経ってから
のブランク化なので、さらに何年
シーズニングされている。
それをごくわずかずつ年月をかけ
て削って芯出しをして行く。
形になってからも、曲がりは一切
ない。
TAD工房も一本木ものは30年程
寝かせる。

通常のキューは曲がり防止の為に
バット部分が三分割になっている。
フォアアーム、ハンドル、リヤ
スリーブと。
さらに曲がり防止でフォアには
本ハギを組み合わせる場合がある
のだが、TADの場合はごく初期の
ブランズウィックのハウスキュー
をカスタム化した物を除き、イン
レイでハギ風にしている。
ガチガチにハギで硬くないので、
TAD独特の腰がありながらもしな
やかなしなりを発生させ、TADで
なくば出せない球筋というものを
実現できた。
TADはキューを水平に平撞きして
もマッセのような動きを手玉に
与える事ができる。
そして、その変化球はぶれも出や
すいので上級者にしかTADは使い
こなせなかったし、今でもそう。
現在のハイテクシャフトのような
誰が撞いても同じ球筋というオー
トマ車のようなキューではない。

今現在、ノーマルのソリッドシャ
フトを使いこなせる人は極めて少
ない。オートマ慣れで。
次から次に新製品をメーカーが
出して古い製品を捨てる商業資
本の使い捨て消費商品の見本の
ようなハイテクシャフトをプロ
たちがさも良い物のように使う
のは、それは彼らが企業の広告
塔だからだ。

ハイテクシャフトの良点は、
ソリッドシャフト程「当たり外れ」
が無い事だ。
それでも天然素材の木材を使って
いる限り個体差は発生する。それ
がかなり少ない
ハイテクシャフトは木材でいうな
らばベニヤ構造であるので、無垢
材よりも木の動きが少ないのも
特徴だ。
そして、貼り合わせ材では硬く
なり過ぎるので、中を釣り竿の
ように中空にしたり、各社で工業
製品として特許物の工夫が凝らさ
ている。

ただし、ハイテクシャフトは、
良材枯渇から苦肉の策で今世紀
始まりに登場して、独特の性能
からまたたく間に人気となり、
誕生経緯が逆転して、今や狙った
性能をシャフトに与える為の工業
製品となった。
そして、ハイテクシャフトはソリ
ッドに比べてひねっても手玉
直進性が高いという現象が判った。
だが、歯車効果で的球にはスピン
が加わるために軌道が曲がる。
手玉は直進しても先玉が曲がるの
で、それはそれなりに人間が見越し
を取ってやる必須がある。手玉の
見越しはほぼいらないが。
ところが、ソリッドシャフトで
あると、あるバンド内では、
撞き方によって手玉の横飛びと
先玉のスピンが相殺されて見越し
がほぼ要らなくなる領域が存在
する。
だが、ビリヤードのキューの特性
に疎い者は、識別と認識ができな
いために「キューに見越しがある、
ない」という事を言い出す。
キューに見越しなどは世の中存在
しない。物理現象があるのみだ。
その物理現象を人間が任意に自分
の狙いに合わせて行く補正行為を
「見越し」と呼ぶ。
クレー射撃からの用語だが、別名
リードとも呼ぶ。
クレーでは、今いる皿の場所を
狙って発砲しても弾は中らない。
標的は動いているから、動く先を
狙わないと命中しない。
それが見越し=リードだ。
ハイテクシャフトではその歯車
効果を出にくくする為に、誰も
が金太郎飴のように「トン」と
突っつく撞き方になった。
そして、ソリッド時代のように
撞点を広く取らずに中心に極度
に集まるような撞き方となり、
雑誌や広報者たちがそれが撞球
の基本、みたいな事を言い始め
た。
嘘を言ってはいけない。
そうならば、昔のプロたちは
全員基本無視の素人という事
になる。
トン突きの撞点真ん中寄せは
ハイテクシャフトを使いこなす
ための方法であるのに、それを
隠蔽し、また、新しい世代はそ
の広報を鵜呑みにする。
だが、嘘は嘘である。

ビリヤードでも、ヒネリ(イング
リッシュと呼ぶ)を加えると、
手玉は横にずれ、また先玉は
手玉との回転摩擦により弾ける
軌道がずれる。
そのため、そのずれを予め人が
見越して補正した角度と厚みで
手玉と先玉を分離させ、先玉が
的球の場合は、狙った穴にポケ
ットインさせる。
ポケットが無いキャロムビリヤ
ードの場合は、手玉を自在に
動かして的球に当て、さらに
当て方まで計算して、的球が
当たった後にどのように動いて
止まるかまでの軌道を予定通り
に実現させる。キャロムはそれ。
ポケットビリヤード=プールは
先玉が的玉の場合にはポケット
インさせる事を目的化させ、さ
らに「的玉を入れながら手玉を
任意の場所に移動させる」とい
う事をやる。

要するに、ビリヤードという種目
は、ポケットインさせようが停止
している玉に手玉を当てようが、
「手玉を自在に操る球技」なの
である。
そしてそれはキューという玉撞き
棒で行なう。
キューの価格帯は幅広く、4000円
から1千万円台まである。
大体、個人ビルダーの手作り品の
カスタムキューが30万円から200
万円位。
ファクトリーメーカーの量産の
キューが1万円から20万円程だ。
ハウスキューは5千円程。
ハウスキューは、ビリヤード場に
常設されている貸しキューで、
「場キュー」とか「しばキュー
(技術を知らない素人がしばきま
くる事から来る俗称)」とも呼ば
れる。
ビリヤードはキュー先のタップに
手玉が二度当たりする事はファール
なのだが、それは日本語では「リク」
と呼ぶ。
それは、戦前の日本軍の陸軍が
明治からずっとファールだろうが
我が物顔でおかまいなしにドカン
と二度撞きしていた事から来る。
リクは陸軍のリクだ。
手玉と先玉が極めて近い時には
物理的にリクになる。
旧来、ビリヤードで究極の高難易
度の技とされていた「切り引き」
や「切り押し」は、今世紀に入り
高解像度カメラにより、実はリク
であった事が判明した。
驚愕の事実だった。
それは科学の目によりビリヤード
の歴史上初めて判った。
解析したのは日本人だ。

それと、同時期、押し玉と引き玉
の物理的現象も科学的メスが入れ
られた。
引き玉は台のラシャの上で手玉が
接地しながらも空転してからグリ
ップしたら戻って来るが、押し玉
は最初から空転は一切せずに、
手玉の円周の同距離しか前進しな
い事が判明した。
だが、その事実が判明してからも、
見た目に押し玉が空転しているか
のような動きをするので、その
科学的証明データを信じない妄想
族が多く発生した。
実は、手玉が押し玉で空転して
いるように見える現象は、ラシャ
から浮いて空中で手玉は空転して
いたのだ。
事実は観察できた。あとは学術的
な研究を俟つ。

ビリヤードは、ポケットビリヤード
でもキャロムビリヤードでも、手玉
を自由自作にコントロールする競技。
上辺の入れ玉や当て玉にしか目が
行かないままだと撞球の本質は見え
ない。


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