1981年の人気ドラマ『プロハ
ンター』を観る。今観てもお
もしろい。
横浜を舞台にした現代劇なの
で、出てくる電話や車は当時
の物だが、物語自体は40年後
の現代でも何ら古さを感じさ
せない。かっこいい。
元刑事の藤竜也、元新聞記者
の草刈正雄が横浜の港近くで
探偵業の事務所を開く。
そして数々の難事件を受任し
て解決していくのだが、二人
があくまで二枚目ではなく二
枚目半であるところが良い。
そして、草刈正雄(当時28歳)
はコテコテの小倉弁を素で話
している。しかもとぼけて人
を食うようなキャラを演じる
のだ。
草刈正雄は後年「素はコメディ
キャラなのに二枚目役ばかり
の役柄を演じるのは辛かった」
と語っている。典型的な二枚
目の役は映画『汚れた英雄』
(1982)だろう。
このドラマでは小倉出身の草
刈正雄が素の自分の方言で違
和感なく話すので、伸び伸び
やれたのではなかろうか。
当時、方言を主人公がセリフ
で話す作品は非常に珍しかっ
た。芸能界ではアイドルは方
言が禁止されて全員が標準語
で話さなければいけないとさ
れていた時代だったからだ。
唯一大阪のローカル放送のみ
が「上方文化圏」として大阪
弁以外は話さない、という風
習があった。
世の中でテレビで表に出てく
る言葉は「標準語 or 大阪弁」
だった。京都弁ではなく大阪
弁。関西弁ではなく大阪弁。
1950年代や60年前後の映画作
品などでは、方言を使っても
どこの方言なのかまるで判ら
ないようなチャンポン方言が
よく使われていた。あれらは
意図的だろう。
吉永小百合主演の『ガラスの
中の少女』(1960)でも、冒
頭の山中の湖に浮かぶ少女を
発見した地元の人たちの言葉
は各地方の方言が混在してい
て、その湖がどこであるのか
は特定できない。方言の映像
表現にはセンシティブな問題
があったのである。
小倉弁を普通に話す草刈正雄
の『プロハンター』は当時の
時代としては新鮮だった。
新たな時代、1980年代のニュー
ウェーブを感じさせる作品の
味付けだった。
一方、藤竜也は、この役でい
わゆるニヒルな人食いの「フ
ジタツ」のイメージを確定さ
せた。
ここで探偵の助っ人役で出て
くる柴田恭兵のキャラと演技
もなかなかだ。
後年『あぶない刑事』(1986~)
で刑事セクシー大下を演じた
時、ドラマの第一話で「刑事
になる前はかなりワルだった」
と呟きながら鍵をピンで開け
るセリフがあるが、それは明
らかにこの『プロハンター』
でのキャラのパロオマージュ
だ。
『プロハンター』の主題曲は
クリエーションの「ロンリー
ハート」だ。これもヒットし
た。いかにもヨコハマっぽい
曲だ。
『プロハンター』、懐かしい
ドラマだがかなり面白い。
アクションシーンもふんだん
に出てくる。
アクション担当は劇団「若駒」
だ。
ほぼ全員が小林康宏刀を使う
「武劇」を創作した殺陣師林
邦史朗氏が主宰した。
林氏は長年NHKの大河ドラマ
の殺陣をつけていた時代劇界
の重鎮だった。
ドラマ『プロハンター』は現
在動画サイトHuluで観ること
ができる。
とにかく草刈正雄のオトボケ
ぶりがいい。
とぼけた坊やのようなドジキ
ャラなのになぜかかっこいい。
嫌味のないかっこ良さなのだ。
『プロハンター』は草刈正雄
を見るドラマなのかも知れな
い。
それと、1981年当時のヨコハマ
を。
劇画『ケンタウロスの伝説』
の頃の横浜はまさにこのドラ
マに出てくるヨコハマだった。
暮らしてわかるハマの風。
横浜は「行く所」ではなく
「住む所」と感じさせる。
国際犯罪都市だけどね(笑)。