プールキューの先角として、非常に
良い打感をもたらすマイカルタ。
日本のビリヤード界はミカルタと
記載し発音するが、英語ではマイ
カルタである。
マイカルタは米国のウエスチング
ハウス社が開発を担当した。
現在は世界最大手の繊維紙類製造
会社のインターナショナル・ペー
パー・カンパニーにより製造され
ている。従業員56,000人の大手だ。
本社テネシー州メンフィス。
マイカルタという人工素材は、
ベースとなる布や紙や木材を
フェノール樹脂で固めた物だ。
熱に強く、絶縁性が高く、そし
て丈夫である。
別会社の製品でLBM(リネン・
ベース・メラミン)という非常
に硬い真っ白な繊維樹脂が先角
に使われるが、あれもマイカルタ
と構造は同じで、麻糸をベース
に樹脂を圧縮固めした物だ。
また、IPC製以外にも同等同系の
製品は存在する。マイカルタ
類似品、のような製品。
私のロバート・ランデ・カスタム
キューのマイカルタ。
本象牙の経年変化=パティーナ
のような色合いを見せる。
濃い蜂蜜色。
音は澄んだ高音。1983年製。
マイカルタも多用した。
高級ラインだが、米国内のオーダー
では本象牙の先角かマイカルタか
を選べた。
イエローマイカルタは、パステル
調になった極薄のレモン色で、
とても品のある色をしている。
マイカルタは火気厳禁製造工場
の産業歯車やナイフのハンドル、
キューのフェルール用等に適し
た極めて丈夫な樹脂なのだが、
他の産業樹脂ほど普及しない
のは理由がある。
それは、非常にコストと手間が
かかるため高価なのだ。
そのため、製品ラインナップ
が製造中止になる事が多々ある。
これは麻糸や紙や樹木をベース
にした樹脂系によく見られる
傾向で、ある日突然製品の製造
が中止になったりする。
何十万トンもの大量発注がある
のなら製造メーカーも生産し
続けるだろうが、そうではない
小物使用目的のための供給なの
で、採算率が悪い製品ラインは
製造中止検討対象になるのだ。
なお、ビリヤードのプールキュー
では、撞き味が最高なのは本象
牙であり、その次がマイカルタ
であると断言できる。
がある。
最近ではタイガー社が開発した
近似人工象牙の素材がなかなか
良質な打感を放つが、本象牙
独特のソフトなソリッド感で
はなくダイレクトリーな打感
を持つ。このあたりは好みが
分かれるところだろう。
本象牙とは明確に打感が異なる
からだ。
むしろ打感だけならば、マイ
カルタやLBMのほうが本象牙
先角に遥かに近い。
音はマイカルタは高音だが、
本象牙独特のクォーンという
音ではなく、シュピーンとい
う音に近い。あるいはキューン
これはスコーピオンのグラス
ファイバー樹脂シールドの
シャフトと特殊先角のキュー
で撞いた時の音にマイカルタ
のそれは近い。
スコーピオン・グラスファイバー・
シールドのシャフトキュー。
(スマホから視聴だと実音に近い。
PCではヘッドホン or イヤホンで
実音に近い音質再生可能)
マイカルタはトビは出るが、
本象牙ほど重くないので戻り
が早く、補正見越しの合わせ
もつけ易く扱い易い。
木材の良質音を増幅させるの
がマイカルタ素材の先角だと
もいえる。
打感タッチはソリッド。
本象牙先角の撞球音。
(スマホから視聴だと実音に近い。
PCではヘッドホン or イヤホンで
実音に近い音質再生可能)
ただし、ハイテクシャフトや
カーボンシャフトしか知らない
人たちは本象牙先角シャフト
やマイカルタ、LBM先角の
ソリッドシャフトは全く使え
ない事だろう。おそらく全く。
一つも玉は入らないのでは
なかろうか。
オートマ専用免許では、マニュ
アル車を(免許種類関係なく)
基本知識と技術の欠如から運転
できないのと同じで。
Cue lathe ビリヤードキュー製作システム ML-1800
日本国内でキュー製作専用旋盤
といえば、日本人が作ったこの
ML-1800一択のように思える。
ジョー・ポーパー専用旋盤の
倍近く値段はするが、CNCの
精度は計り知れない。
キューのコンピュータ制御による
完全製作ではなく、手動加工なら
ば、このメンテ用旋盤でもキュー
作りが出来ない事はない。
ハギ製作やインレイ加工は無理で
すが。
メンテ専用旋盤 SL-1200MⅡ
ビリヤードキュー メンテナンス旋盤
SL-1200(旧型)
Penn Ray Pool Cue
ここでこのキューは1980年代に
このキューのバットにはこのシャ
それでいて、撞き味はスティッフ
というよりもドライという表現が
マッチする印象のシャフトだ。
状態のAテーパーから私のオリジ
ナルテーパーのデータに則り、
A+プロテーパーのいわばハイ
ブリッドテーパーに削り直し
てある。時間をかけて。
何より打感がぼやけてないのが
嬉しい。キュッとしている。
行く。
通常は7番をシュートしてから
黄色のラインで手玉は出る。
だが、赤ラインで手玉を動か
している。
なぜそのような動きになるか。
また、なぜそうしたのか。
どうやったらその動きを出せる
のか。
いわゆるギャッキー逆ヒネリ。
意味があってこう狙っている。
別な玉での手玉の動き。
通常は黄色のラインに手玉は出る
が、赤ラインで手玉を動かして
いる。順角度の分離で手玉を箱玉
での回しをさせないラインを選ん
でいる。
それはなぜか。どうやったら「入射
角と反射角は等しい」という物理
現象を覆すこの手玉の動きを出せ
るのか。
そして、なぜそれを選択して実行
するのか。
また、初球の2番玉。
どうしてキュースピードを上げて
スコーンと撞いているのに、手玉
はクッションに入ってから跳ね
返って後、磁石の同極が反発して
ブレーキがかかるようにググッと
台上に止まるのか。
他のショットでもそうだが、ただ
手玉をコツンと的玉に当てて的玉
を転がして入れる「転がし玉」は
やっていない。
ソフトなショットでもキュー出し
をして手玉を「撞いて」いる。
「撞く」事を実行している。
手玉の動きは制御する。
また、上掲トップ画像の7番シュート
の時も、動画を見れば、手玉は7番
にヒットした後、カーブを描きなが
らクッションに向かっている事が
判るだろう。
ソフトなショットでもキューを切ら
せてキュー切れをさせるショットを
している。
それの意味は何か。
「撞球」というのは「手玉を撞く」
という事であるから撞球という。
手玉を転がして的玉に当てて、的玉
も転がして落とすのは、それは「転
球」であり、「撞球」ではない。
そして、手玉の撞点はド芯のど真ん
中から1/4タップ~マックス限界ヒ
ネリまで、手玉が撞球者側から見え
る範囲すべてに「撞点」が存在する。
また、同じ撞点を撞いても、ストロ
ークやキュー角度、キュー出しの
速度等ですべて違う手玉の玉筋が
出せる。
その手玉をどのようにコントロール
するかというのが、ポケットビリヤ
ードの題目となる。
的玉をシュートインさせるのは当た
り前で、それが大前提だが、コツン
と当ててコロコロコトンで的玉を
落とすのは手玉と的玉とポケット
の直線ラインを取れば誰でも簡単
にできる。
しかし、手玉に狙い通りの動きを
させるためには真ん中ド芯撞きだ
けだと、手玉と的玉の分離角度は
ほぼ90度にしかならないので、
手玉の上や下を撞いて分離角度を
意図的に変えて手玉を次の的玉の
ラインに乗せる。
しかし、シュート後に手玉をクッ
ションに入れてから次に出す場合
は、こちらの希望通りの配置に
などはなっていないので、撞き手
がその状況に合わせて手玉を自由
自在に台上に任意の軌跡を描いて
移動させる。
また、ビリヤード台とラシャと玉
の物理現象は不思議なもので、ある
特定角度ではスロウやスキッドと
呼ばれる分離角度の不正狭窄化現象
が発生する。的玉が引きずられて
正規に分離せずに角度が狭く離れ
ていく。結果厚めに的玉が外れる。
これは手玉真ん中撞きで緩めに撞く
とその現象が増幅する。
これを防ぐ方法はある。
手玉にヒネリを入れて、その摩擦
抵抗による不正引きずられ現象発
生を防止する。しかも、ある程度
のキュー速度を与える。
こうすることでスロウやスキッド
による的玉不正分離進行を防げる。
上級者がラストボールなどを入れる
時にやや順ヒネリや逆ヒネリを
入れてスパンと撞くのはその為だ。
不正分離を防止して、正規のライン
に的玉を乗せる為にそう撞く。
こうした手玉操作による奥義。
そこにこそビリヤードの妙がある。
的玉をポケットインさせるプール
も、手玉を的玉に当てるキャロム
も、すべてビリヤードは手玉を
いかに意思の下に制御するか、と
いうスポーツだ。
ポケットビリヤードでは的玉を
シュートでポケットインさせる
のはごく当たり前の事。
シュートが大切なのではなく、いか
に確実にシュートさせる位置に手玉
を自在に移動させるか、が重要に
なってくる。
入れポンだけに目が行くと、大切
な事は見えなくなってくる。
入れポン出しポンでワンセットで
あるのが、ポケットビリヤードの
セオリーなのだ。
入れだけでは駄目。
かといって入れられないのに出し
だけできてもダメ。
入れポン出しポンでワンセットだ。
出しポンの為には、手玉を自在に
操縦できるスキルを身に着けない
と意思通りの手玉制御の実現は不能。
私は、どうせ玉撞きをやるならば
玉転がしではなく本当本物の「撞
球」をやりたいので、このように
「玉を撞く」事をやっている。