けい先生のつぼにくる話

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皮膚疾患 その2

2006-12-08 05:07:02 | Q&Aコーナー
体質に対するアプローチ

前回は患部に直接行う治療法でしたので、今回は漢方薬による体質改善のお話をいたします。

一般的に水虫、疥癬(かいせん)、いぼなどはご本人の免疫が落ちているときにかかるものです。また、治っていたと思っていたのに再発するのも、多くの場合はストレスや仕事の疲れで体が弱ってきたときに起こるものです。からだからの熱の発散に問題が起こるのです。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の場合は感染症ではありませんが、皮膚の下に熱がこもってしまっている状態です。

熱の発散とはなんでしょう?
東洋医学では熱の正常な発散が妨げられたときに皮膚疾患や、ゼンソクなどが起こると考えられています。
体内で発生した熱はからだを温めたり、消化吸収を助けたり、気力を養ったりします。そうして一部は皮膚から発散されて行くのが正常な状態です。

この熱が何らかの理由で皮膚の下にこもったときに、皮膚疾患が起こりやすくなるのです。
たとえばアトピーの方にはあまり汗をかかない方がいらっしゃいます。これは発散できない熱が皮膚の下にこもって皮膚を壊してゆく原因の一つと考えられています。
感染性の皮膚疾患の場合も、もし熱気の発散がよい方でしたら感染しないか、たまたま菌の力が強かったとか、湿度が高かったとかで感染してもすぐになおってしまいます。前回お話した薬を塗るだけですんでしまうかもしれません。

今回は皮下に熱をこもらせずに発散させることを目的とした漢方薬を中心に進めていきます。

1)薏苡仁(ヨクイニン)はと麦のことです
これはただのはと麦の粉か、錠剤のことです。日本ではカネボウやツムラなどが薏苡仁(ヨクイニン)錠という名前でだしています。
このヨクイニンの効能は、脾臓を健やかに、肺を補い、体の水はけをよくしてむくみを取り、膿など熱性の悪いものを排出し、関節の痛みを取り、咳を緩和する作用がありますが、妊婦さんは不可ということになっています。
ヨクイニンで作った 苡仁茶という名前の製品があります。これは茶とありますがハトムギの粉です。緑色の粉ミルクのような円筒形の缶に入っています。安くて、飲みやすいです。コーヒーカップに添付のスプーンで1ー2杯お湯でといてお茶がわりに飲んでください。これで流産をした例はみたことがありませんが、漢方医学の古典に書かれているので、念のため妊婦さんは止めておきましょう。
 私は多くの患者さんにこれを紹介しているのですが、1週間くらいすると家族の方に、肌が変ったといわれる方が多いです。是非試して見てください。
こちらではRanch 99とか Marina Marketなど中国系のマーケットのお茶売り場においてあります。

2)温清飲(うんせいいん)
月経異常や冷え性があって、逆に手足がほてることもあり、或いは不眠気味のかたで、皮膚が乾燥気味でかゆみのある方に用います。
体の血行をよくして、同時に患部の熱を取り、結果的に皮膚疾患にも効くわけです。

3)消風散(しょうふうさん)
夏に悪化するアトピー製皮膚炎や、ジンマシンに使います。

4)当帰飲子(とうきいんし)
冬に乾燥して悪化するアトピー性皮膚炎、高齢者の乾燥性皮膚炎、乾燥した湿疹などに使います。

5)黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)
小児のアトピー性皮膚炎や湿疹につかいます。皮膚関連だけでなく小児の健康促進用に最適です。

6)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
皮膚の化膿性疾患に広く用います。

7)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
青年期のアトピー性皮膚炎、にきびなど、上半身の皮膚疾患に主に使います。

8)柴胡清肝湯(さいこせんかんとう)
痩せ型で、くすぐったがりで、落ち着きがなく、偏食があり、熱を出しやすいタイプの方のアトピー性皮膚炎に使います。

9)八味地黄丸(はちみじおうがん)
金匱腎氣丸(きんきじんきがん)とも呼ばれ、老人性皮膚掻痒症に使います。

10)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
かゆみの強い皮膚疾患に使います。

11)防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
おお喰らいで、がっちりとした体格で、内臓脂肪がびっしりとついているようなタイプの方の湿疹などに使います。


アメリカの当診療所で入手調剤ができる皮膚疾患に関連する漢方薬を挙げてみました。見覚えのある漢方薬もあると思います。
これはたまたま皮膚疾患という病名で便宜的にくくって列挙しましたが、これらの漢方薬は糖尿病、肺炎、白内障、或いは中耳炎にも使用したりします。ようはそれらの疾患が起こりやすい体の状態を改善するためで、例えば下半身にとどまっていなければならない熱が、体力が落ちたり冷えたために上に上がり、そのあがった所が、皮膚であったり、耳であったり、肺の中であったりしたために、その場所に熱がこもって切れよくでてゆかず、病名がついてしまう状態になったとされるわけです。体質を変えることによって病の存在理由をなくしてしまう。この考えてゆくともちろん上記の漢方薬以外にも無数の方剤や使い方が存在するわけです。

漢方薬はヨクイニン以外は一人一人の体質に合ったものを服用することが必要ですので、専門家に脈診、舌診、腹診などの東洋的な診断をしてもらってから使いましょう。



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