けい先生のつぼにくる話

はりきゅう漢方の先生が教えてくれる健康に関する話
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痛みを止めるということ

2007-07-31 05:21:56 | 東洋医学全般
東洋医学では「不通則痛、通則不痛」という大原則があります。
これは「痛みとか病は普段経絡を巡っている氣や血が通らなくなったり、とおりが悪くなったりして起こる. 逆にこの氣血が良く流れていれば病にもならず痛みも起きない。」ということです。

伝統的な治療は、「その患部自体が勝手に悪くなったとは考えず、その周りとかそこを通る経絡(氣血のとおりみち)に問題がおきて、たまたま何らかの理由でほかより弱かったりしたその患部に反応が現れてしまった。」と考えて行われます。
だから、足首のツボで腰痛のアプローチをしたり、人差し指のツボでまぶたの「ものもらい(麦粒腫、バクリュウシュと読みます)」の治療を行ったりできるわけです。
氣といわれる見えないけれども存在するエネルギーのようなもの、日本の経絡治療の草分けでいらっしゃる故本間祥白先生はサイダーに入っている炭酸を例えにされて、「見えないけれど、なければサイダーはただの砂糖水になってしまうので大事なものだ」という表現をされていました。もちろんサイダーに限らず、人は気が無ければ生まれてくることもないし、生きていることもできないのです。
血はいわゆる血液だけでなく目に見える体内の物質ということで、血液、いろいろな体液、組織の一部の含まれます。

この氣と血が流れるといわれる経絡、これも解剖的には見えないものですが、これを治療することによって病や痛みの存在理由をなくしてしまうというのが伝統的な東洋医学の治療です。
私たちの普段の治療はとにかくこの病んでいる経絡を見つけてそれに所属するツボを使ってこれを補い、これだけでも病を緩和することができるのですが、必要であれば、やはり患部にあるツボも使うことで成り立っています。
これが私たちにとってはたまらないんですね。患部も当然診ますが、同時に一歩下がって患者さん全体を診て、「お、今日は全体的にいい感じだから、こんな治療をしよう」とか「む、なんかかげりというか、雰囲気が弱いから、まずはよく気の流れを補ってから、もう一度、脈、舌、お腹を診なおしてみよう」などと治療方針を立ててゆくのです。 
いきなり患部に太い鍼を刺して、電気を通すなどというのは、素人の極みです。

ここアメリカでは米国式TCMが主流です。TCMはTraditional Chinese Medicine ということで、訳せば中国伝統医学となりますが、これにアメリカ人の感性が加わりますので、残念ながら「電気鍼」が幅を利かせています。
次回は鍼麻酔などのTCMについてお話します。

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Beautuful Boxer

2007-07-30 14:02:33 | 映画大好きなんです
これはいい映画です。
これは実在するパリンヤーというキックボクサーの半生を映画化したものです。私がちょうどミャンマーとタイに住んでいたころに、彼女?はボクサーとしては最盛期でかなり強くて華麗なファイトをしているのを見たことがあります。そのご性転換をして女性になり、女優とデザイナーとして大成しています。最近では女性としてリングにあがる話も出ているようです。(誰が対戦相手になるのでしょう?)
この映画は、決して子供にもみせられないような、興味本位のグロい映画ではなく、構成も役者陣も映像もしっかりしている映画でした。

主人公の幼少期、田舎のお祭りで精悍な若者たちが戦っている野外キックボクシングのリングの場面ですくみあがってしまったり、同じお祭り会場で伝統芝居の楽屋で控えているきれいなお姉さんの落とした口紅を拾う場面などは、とてもよい映像でした。
このときのお祭り会場で流れている音楽は、当時80年代の今は亡きトップ演歌歌手のブムプワン ドゥワンチャンのシアダーイ(惜しかった!)という曲が流れていて、当時のチェンマイに近い田舎の雰囲気がよくでていてが最高です。

この映画がゲイがどうだということだけでなく、「誰もが心の底に持っている、ほかの人には受け入れられない自分の本音とか痛みに対して勇気を持って正対している人を描いた立派な作品」と感じます。また、その人を受け入れて助ける周りの人々とまたそれを利用する人々の存在がこの映画をすばらしいものに練り上げています。

これまでこの映画を観た人たちの評価はどれも上々でしたが、残念なことに、たった一人だけ「何でお化粧してリングに上がってへらへらと挨拶しなければならないの?わからない!!」「けいさんあなた変だよ!」といった人がいました。ステリックに同性愛者の存在は許せないと否定するタイプの女性です。

主人公には、両親を楽にしてやるために、キックボクサーとしてリングに上がる男としての自分の中に、まだ自分でも理解しきっていない混沌としていた意識があり、強烈でしなやかな女性としてのアイデンティティーが混入してしまう。そして化粧をしてリングに上がるという行動にでることによって、このことが結果的に強いボクサーとしての転機になって行くという、本作品の名場面のひとつと考えています。

振るっているのは、この試合の後にマネージャーが主人公に小遣いを渡して「今度はウォータープルーフの化粧品を買って来い。」という場面です。

しかし救いだったのは、私の11歳(女)、10歳(男)、8歳(女)の子供たちもアシスタントの女性もみんながこの映画は大変すばらしいといっていることです。この小学生の子供たちまでも「心のほうは女の人なんだね、かわいそうだったけど夢がかなってよかったね」「音楽がいいね!これハッピーエンドだね」「パパ、これすごくいい映画だと思う、また観るよ」といっていました。ザマーミロって感じですね!!

BEAUTIFUL BOXER _movie trailer

老若男女、誰が観てもかなり感動できる映画だと思います。
また、サントラ版のCDの出来もかなりいいもので、タイを代表するロック歌手のマイ(Mai Charoeunpura)、パリンヤー本人、その筋の有名歌手トンチャイたちが熱唱しています。現時点では絶版になっているのが残念です。 先日タイの大手CDの通信販売会社の責任者にいくつかの絶版作品の復活依頼をした際に、この作品も入れておきました。

DVDはブロックバスターでもビデオハリウッドでもたいていのビデオショップでレンタルされています。
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元気に走り去った神経痛の患者さん

2007-07-28 17:21:26 | 雑記
先日、自称アジア文化スペシャリスト30余年だという米人のご夫人が来院いたしました。
曰く、重症の神経痛とのことで、足を引きずりながらの来院です。見るも痛々しい感じでした。
しかしアジアスペシャリストなのに中国語も日本語もご理解されていないのでちょっと気になっていました。
Gパンに白い靴下(足袋ではない)に日本風なゾウリをはいています。鼻緒が靴下にめり込んでいる。 へんなの、、、、

一通りの治療をして、痛みを和らげる漢方薬も渡しておきました。
そして翌日の朝です。急に激怒した声での電話があり、「あなたは何の治療もしていない!あなたの治療はぜんぜん痛くなかった!(ほほう、、鍼灸治療が痛くなくて文句を言われたのは久しぶりだ!たまに強い鍼刺激をしてもらわないとだめだというマゾさんがいる、、、、もちろん私はそんな危険な要望には答えない)」と、本当にキーキーと音がする声で大騒ぎです。

私が「ひょっとして痛みを悪化させてしまいましたか?」というと。「いや。ぜんぜん変っていないんだ!」という。「????」
彼女は続けざまに「わたしのアジアのマスターに聞いたら、あなたの治療はひどいもので、まったくの間違いだといっていた!とにかく金を返せ!でなければあなたを訴える!」
「その方はどなたですか?同じ鍼灸師の方ですか?日本人ですか?」と敢えて穏やかにお聞きすると、

「ちがう!彼はサムライなの!日本人みたいな人なの!ケンドーも日本も知っていて、薬も持っているニンジャなんです!He is Samurai! 」
「。。。。。。」 (これは「キの字」だ。。。吉外だ。。。。そしてアジアのマスターってなに?先日引退したソニー千葉かい?)

私はいっそどんな家にすんでいるか見てみようかと思って、「じゃあいただいた小切手をお返しに上がりましょうか」というと、急に(こちらから聞いてもいないのに)15歳年下だというご主人が電話に出てきて、「うちのハニーがこれからそちらに、小切手を取りに行く!薄汚い漢方薬もかえしてやる!」といっていました。

はたして2時間後、ご本人がいらっしゃいました。土気色の怒気を含んだお顔で、当診療院にやってきて、お出ししていた漢方薬と小切手を交換すると口元をゆるませて、シャキシャキと走り去ってゆきました。
たまたまいらっしゃっていた、お医者さんの家系で、義侠心と好奇心のある懇意にさせていただいている患者さんが、この一部始終を観ていてくれたのですが「あの患者さん、小走りにやってきて、また早足で戻っていきよったで!いい動きしとるなあ」とのことでした。

「何だ治ってたのか?それとも昨日の引きずった足が嘘だったのかな?」漢方薬も袋を開けた形跡がありませんが、気持ち悪いので、もちろん即廃棄処分にしました。
しかしなんだったんだろう???

アメリカではごくたまにこのような患者さんが現れて、日々の生活に彩を添えてくれます。でも本人はとても辛いか不幸な方なのだなと単純に笑って入られない気持ちでした。
(プライバシー保護のため、この患者さん本人だとわかってしまうようなことがないように、個人的な内容や数字は極力変えてあります。)

今回はアメリカの愛すべき患者さんのエピソードとして書きましたが、
次回からは文章中に出てきた「痛みや症状がぜんぜん変らない」ということと、「鍼麻酔のこと」「治療にはどれくらいの時間がかかるのか?」ということなどについてお話をしたいと思います。




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コメント、トラックバックができるようになりました

2007-07-08 01:41:51 | 雑記
これまでJINAから私のブログに入っていただいていた方々から多数のコメントをいただいていたのですが、技術的な問題との事で、画面には全く反映されていなかったようで、大変ご迷惑をおかけしました。

本日より、新しいブログでスタートいたします。これからはコメント、トラックバックがいつでも入るようになりました。

これからもいろいろな記事を投稿させていただきたいと思います。
よろしくご指導ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。


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