七物降下湯(しちもつこうかとう)は「高血圧」そのものを狙い撃ちする漢方方剤です。
昭和の漢方医学の巨匠、故大塚敬節師の考案された処方です。
大塚先生はもともと医師でしたが、生涯漢方医学の発揚に貢献された方です。名前の読みは「よしのり」ですが、号は同じ文字を用いて、「けいせつ」と称していました。
彼は本来医師ですが、漢方医学の研究と臨床に大変貢献した方です。
大塚先生の漢方治療法は、現代の多くの医師や薬剤師が行うそれとは異なり、漢方医学の古典を重視したすばらしい治療でした。
古典を重視するという事は、いわゆる本治方という、症状の病名に関らず、その患者さん個人の大本のアンバランスを補うという治療です。
そして、その後、或は同時に標治方という、病そのものに照準を定めた治療を行うということです。
その大塚先生ご自身が、最低血圧がいつも高く、眼底出血をよく起こしていたという事で、古典漢方方剤に3種類の単品の漢方薬を足して、この七物降下湯(しちもつこうかとう)を創作されました。
これは四物湯(しもつとう)という主にご婦人の血の道を滑らかにするための漢方方剤を基本として作られています。女性がこれを飲んで血の道が滑らかになるという事は、お腹、下腹部の流れがよくなり、程よく温まるという事です。
これは男性が飲んでも同じ事です。結果的にめぐりがよくなって、倦怠感が取れてゆきます。
これに黄耆(オウギ)釣藤鈎(チョウトウコウ)、黄柏(オウバク)を足しますと七物降下湯となります。
1.黄耆(オウギ)で寝汗などの原因となる、体表の調節の乱れを整え。
2.釣藤鈎(チョウトウコウ)で頭に上がっているプレッシャーでおこる頭痛などの原因を取り。
3.黄柏(オウバク)で頭の中に圧力がたまって、高血圧性の鼻血などの原因を取る事によって、鼻の奥に近い眼底部を楽にします。
こららの薬味がうまく合わさって、結果的に高血圧に効き目が出てくるのです。
あえて、この方剤が使える病名を列挙すると、腎炎や腎硬化症による高血圧、尿に蛋白が出ているタイプの高血圧、最低血圧が高くなっている高血圧、眼底出血をともなう高血圧など、高血圧全般に使うことができます。
「医師からもらっている降圧剤をやめてもよいのか?」という質問をよく受けますが、「勝手にやめてしまうのはよくない。」とお答えしています。
漢方薬と西洋薬は同じ人が服用しても問題はありません。漢方薬は化学物質ではないので、西洋学と化学反応を起こして、危険な事にはなりません。
ただ、同時に服用するのはたぶんお腹の負担が大きいかもしれないという事で、「1時間くらいは時間をずらしましょう。」とお伝えしています。
また、降圧剤の使用量は、高血圧自体がよくなってくれば、お医者さんがそれを減らしてくれます。
漢方アメリカOnlineをよろしくお願い申し上げます。
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