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トッペイのみんなちがってみんないい

透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

「釈迦内棺唄」を観て

2009-03-11 22:13:29 | 演劇・舞台


 たった今、「釈迦内棺唄(しゃかないひつぎうた・作=水上勉、劇団希望舞台)を観てきました。

 以前、前進座の浅利香津代さんが主演して公演が行われたことがありますが、残念ながら未見です。今回は、有馬理恵さん(俳優座)の主演の劇団希望舞台の公演でした。有馬さんは、ライフワークとして演じ続けています。劇団は、作者の水上勉氏と千回の公演を約束したそうです。今日は、387回目の公演でした。

 オンボ(隠望)という言葉を久しぶりに聞きました。オンボとは、亡くなった人の死体の埋葬を職業としている人を指す言葉で、今では、死語となっていると思われます。日本では、古代から死を穢れとして忌み嫌ってきました。そのために、死体を扱う人を差別してきました。オンボというのも、差別語とされてきました。

 幕が開くと、そこには火葬場の炉の場面がいきなり現れて驚かされました。真ん中の特等の炉の中から主人公の薮内ふじ子が登場します。炉の中にこびりついた人間の油をそぎ落としていたのです。亡くなった父親の為に、炉の掃除をしていました。彼女が火葬場の仕事を継ぎました。社会から差別され続けてきたふじ子の言葉で劇が進行していきます。そして、回想の場面では、酒を飲まずには仕事をやっていられなかった父親の弥太郎と、貧しい家に生まれ、足の悪かった故に弥太郎の許に嫁いだ母親のたね子、そして二人の姉が登場します。彼らも、また、差別され続けられる人生を送っています。そこへ、近くの花岡鉱山から逃亡してきた朝鮮人の崔東伯がやってきます。

 釈迦内というのは、花岡の近くの町の名前です。花岡鉱山では、虐殺された崔さんのような思想犯や中国人が過酷な労働をさせられていました。食べ物も十分与えられることもなく、やがては花岡鉱山事件が起こります。こうした鉱山や花岡事件のことに関しては、当然、右派の人やネット右翼は完全に無視しています。麻生首相の父親も、外国人捕虜を麻生鉱山で働かせていました。戦争中の日本をなんとか正当化しようとする人々は、都合の悪いことには口を閉ざしています。こうした事実は、特に、若い人に伝えていかなければなりません。

 底辺に生きた人々の心の優しさを描いた作品です。朝鮮人の崔さんへの薮内一家の思いも、差別された弱い者同士の心の通じ合いを感じさせるものでした。崔さんの火葬を拒んだ父親の思いと、代わりに火葬をすることになる母親の思いは、悲しみ、怒りをうちに抑え込んだものでした。

 主演の有馬さんの公演でのエピソードが新聞(しんぶん赤旗 3月6日)に載っていました。松山の公演では、チマチョゴリを着た十数人の在日朝鮮人の女子高生たちが、崔さんが殺され焼かれる場面では号泣していたそうです。有馬さん達出演者も舞台上でもらい泣きしながら演じました。

 長崎での公演では、角刈り頭や服装から、観客のほとんどが右翼か、右翼の人かと感じたそうです。いつもは拍手が起こる『天皇さまはおらと同じべ』というセリフでは、客席がシーンと凍ってしまったそうです。その時は、椅子が飛んでくると思ったそうです。父親が死んだ人間の灰をまいて、コスモスを育てていました。父親が『この花はおっ母かもしれねえな』『この花は朝鮮人の崔さんかもしれねえ』と亡くなった人たちの名前を言っていたという場面も済んで、幕が下りてから、恐る恐る打ち上げ会場に言ったそうです。そしたら、すごい拍手で大歓迎されたということです。

 公演は、この後、14日にはさいたま会館、21日は長野・上田、その後、東京・町田、神奈川・鎌倉と各地を巡演するそうです。水上先生との千回の上演という約束を目指して、この作品の思いが一人でも多くの人に伝わることを希望しています。

 


桑島法子の朗読「銀河鉄道の夜」Ⅲ

2008-12-10 09:43:10 | 演劇・舞台
桑島法子の朗読「銀河鉄道の夜」5/8


桑島法子の朗読「銀河鉄道の夜」6/8


【銀河鉄道の夜 】 星めぐりの歌


銀河鉄道の夜―最終形・初期形〈ブルカニロ博士篇〉 (ますむら版宮沢賢治童話集)
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銀河鉄道の夜 (画本宮沢賢治)
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車人形追補・労音車人形の会

2008-11-18 19:13:52 | 演劇・舞台
八王子に東京労音の出張所があった頃、聞いた話である。地元の車人形一座が衰退していた頃、東京労音は座と関係を持ったようだ。例会で取り上げる他、2代目の西川古柳氏から指導を受けた。労音車人形の会が作られるきっかけとなったようだ。この辺りの事情は、はっきりしたことが分からないので、是非、関係者の人の話を記録してもらいたいと思っている。労音の若い人が指導を受けたと思われるが、彼らは人形のかしらに紐を付けて自分の頭部につなげることで、人形の動きに新たな可能性を加えたという話を聞いたことがある。これが事実ならば大切な事なので、是非、記録を残してもらいたいと思っている。

 車人形は、当初は説教浄瑠璃で演じられたが、作家のタカクラ・テル氏と邦楽家の平井澄子さんにより、新曲が作られている。「佐倉義民伝・甚兵衛わたし場の段」「唐人おきち」「さんしょう大夫」である。説教節では、現代人には伝わりにくいというので、タカクラ氏により言葉が分かりやすいものに脚色されている。
 当時の車人形では、やはり「新曲まんざい」も演じられたらしい。今では、座との関係は失われているが、労音車人形の会は今も活動している。来年は、飯田人形フェスタに参加するそうだ。

 学生の頃、地元で平井澄子先生主催の「ふきの会」の労音の例会が開催された。地歌の鳥辺山から、筝曲の六段など絶好の邦楽入門となった。その時に、甚兵衛わたし場の段が演じられている。

 その公演の前に、お茶の水の古本屋で偶然見つけたのが、写真の「タカクラ・テル 民族芸能・作品集⑴」(函館労音文芸学院)であった。山積みの本の中に百円で売られていた。「佐倉義民伝」「唐人お吉」「新曲まんざい」が載っていた。本の方からおいらの接近してきたような運命的なものを感じた。

 現在、車人形は3座残っているが、実は、労音車人形の会も存在するのである。
この件について、まとまった記録がされることを切望している。

北京風雷京劇団公演を観る

2008-10-21 02:16:53 | 演劇・舞台
 やっと京劇が観られる。初めて観たのは、2年位前だ。席はいま一つ満足できなかった。おいらは、観劇の時はなるべく前で観たい。役者の息遣いが感じられるくらいの近さが良い。

 今回は、最前列の真ん中あたりに座れた。京劇公演の時は、舞台の両袖に電光掲示板式の字幕が出る。でも、かぶりつきの席では、それは見ることはできない。今回は、パンフレットに台本が載っていたので、あらかじめそれを頭に入れて、役者の演技に集中しようと思った。

 最初の演目は、「扈家荘」(こかそう)。水滸伝の女傑、扈三娘と梁山泊の林中との立ち回り。この戦いで負けてから梁山泊の一員となる。京劇の音楽はいいな。

 次は「覇王別姫」。有名な「四面楚歌」のお話。項羽と虞美人の悲しい別れ。この劇をモチーフにした映画があった。今回のパンフレットには、明大教授の加藤徹氏の分かりやすい解説が載っていた。おかげで、観劇に大いに力を貸してくれた。虞美人の剣舞が見ものだった。加藤先生のおもしろい指摘があった。現在、我々が「漢民族」「漢字」などの名称を使うのは、漢の劉邦が楚の項羽に勝ったからで、もし項羽の方が勝っていたら、「楚民族」「楚語」になっていただろうと。

 最後の演目は、ご存じ「孫悟空大暴れ」。団長の岩松(ソン・イエン)さんが孫悟空を演じる。今回の公演では、竜宮城、地獄、天界の三か所での大暴れを一挙に上演した。この演目が一番の楽しみだった。アクロバットのような立ち回りの連続。妖怪や、鬼や、神様や、竜王などが登場してワクワクする話の展開。衣装も美しかった。ここで、又、加藤先生のお話。孫悟空のアイテムの筋斗雲(きんとうん)とは、本来は孫悟空が使う術の名前で、白い小さな雲に乗るシーンは本来は間違いだそうだ。一回トンボ返り(筋斗)を打つと、一瞬にして十万八千里の距離を進める術。そのトンボを切って進むのが本来の筋斗雲だそうだ。

 今日は、たっぷりと京劇を堪能できた。人間の表現力の可能性にいつも感心させられるのが、演劇の世界である。

観たい「兵士タナカ」

2008-08-03 21:27:25 | 演劇・舞台
 8月20日~27日に上演される、劇団芸術座アトリエ公演「兵士タナカ」(SOLDAT TANAKA)。ポスターは、長谷川集平さんが描いていました。森永ヒ素ミルク事件の「はせがわくんきらいや」の長谷川さんです。この絵本、ぜひ読んでください。
 この作品、初めは題名から、日本人の作品かと思いました。でも、作者はゲオルク・カイザーでした。チラシには次のように書かれています。「御真影が掲げられた軍法会議の法廷。そこには模範兵”タナカ”の姿が、そこで明らかになる衝撃の真実とは… ―1940年のドイツの反ファシズム作家が”日本軍国主義”w見事に描写し、当時の日本公使館の抗議により上演中止に追い込まれた―」

 70年代に今回の上演に使われる岩淵達治氏の訳が白水社から出版されました。
今回、日本で初めて上演されるのでしょうか。

 島谷謙著『ナチスと闘った劇作家たち ―もうひとつのドイツ文学―』(九州大学出版会)に内容紹介されています。三幕の戯曲です。
 第1幕:タナカが休暇で実家のある貧しい村に帰りますが、妹の姿が見えません。父親は「近所の裕福な家で女中をしている」と言います。
 第2幕:射撃訓練で最高の成績をあげたタナカは、他の優秀成績者5人と特別休暇で妓楼に行きます。宴会の後に、女があてがわれます。タナカの前に現れた女性は誰か。また、その女性を抱こうとした上官は…
 第3幕:軍法会議場。死刑を言い渡す裁判長。「天皇に恩赦を願えば、死刑を免れるかもしれない」と付け加えます。さて、タナカはどうしたのか。

 ドイツ表現主義を代表する劇作家ゲオルグ・カイザーがスイス亡命中の1940年に書きあげますが、日本公使館の抗議で中止に追い込まれています。1940年は日独伊三国同盟が結ばれた年です。ファシズム陣営に与した事実をとっても「聖戦」とは呼べない戦争でした。

 残念ながら「兵士タナカ」を観に行けそうにありません。たくさんの人がこの作品に触れられれば良いなと思っています。