1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「悲しみを聴く石」(アティーク ラヒーミー)

2010-03-28 11:22:48 | 
 「悲しみを聴く石」(アティーク ラヒーミー)を読みました。著者はフランスに亡命したアフガニスタン出身の映像作家・小説家です。舞台は内戦が続くアフガニスタン。ソビエトとのジハード(聖戦)で英雄となり、その後の内戦で仲間との内輪喧嘩により首に銃弾を受け、意識不明になった夫。その夫の傍らでコーランの祈りを唱えながら看病を続ける妻。物語は、ひとり取り残された妻が、意識不明の夫に向けて語りかけるという形で進んでいきます。

 この本の原題の「サンゲ・サブール」といいます。「サンゲ・サブール」とは、ペルシア語で「忍耐の石」という意味です。その魔法の石に向かって、人に言えない不幸や苦しみを打ち明けると、石はそれをじっと聞き、飲み込み、ある日、粉々に砕ける。その瞬間、人は苦しみから解放されるというペルシャの神話から取られています。

 妻は、「聞いて、サンゲ・サブール」と夫に呼びかけながら、子供を生むための道具として、差別され虐げられてきたアフガン女性の悲しみと心の傷を告白していきます。語ることを通して、妻の心は次第に解放されていくのです。妻は、「意識」を失った夫に向き合うことを通して、男の付属物としての女性の地位は、「意識」=「共同の観念」によって作られたものでり、生身の「身体」としては、男も女も対等であることを、自覚していきます。身体の底からこみあげてくる境遇への怒りと情念がすさまじかったです。

 そして、最後に語られる衝撃の事実。ラストのシーンは、とても迫力がありました。アフガニスタン人にしかかけない小説。おもしろかったです。





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