1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「捨てられるホワイトカラー」(バーバラ・エーレンライク著)

2008-01-19 16:24:47 | 
 今日は、バーバラ・エーレンライクの「捨てられるホワイトカラー」を読みました。前作の「ニッケルアンドダイムド」では、ウエイトレスやウォルマートの店員、清掃労働者として自ら働きながら、アメリカの不安定雇用労働者の実体をルポした筆者が、今回は、職を求めるホワイトカラーの労働者として、一年間の就職活動をすることを通して、アメリカのホワイトカラーが置かれている実体を明らかにしようとした本です。
 2005年に発行された本ですが、この本を読むと、ITバブルの崩壊以降、ホワイトカラーに対する過酷な人減らしと解雇が進展する中で、アメリカのホワイトカラー労働者が、精神的にも経済的にも非常に不安定な状況に置かれてきたことがよく分かります。それとともに、就職カウンセラーやネットワーキングと言われる就職活動情報交流会、エグゼクティブのために就職活動研修や宗教団体など、ホワイトカラーの不安を食い物に、金儲けをする組織が、いかに多いかに驚かされます。日本でも同じなのですが、労働者の不安に寄り添い、助け合わなければならない労働組合が、アメリカでは全く無力なのです。
 コーチを雇い、ネットワーキングに参加し、就職活動研修に参加し、6000ドルを投資して、筆者は一年間の就職活動を精一杯行うのですが、結局得た職は、机も事務所も保険もない、個人事業者としてのアフラックの保険外交員という仕事だけでした。筆者と同じ時期に失業し、ネットワークキング等で知り合ったホワイトカラーの人たちは、誰一人、企業に戻ることができず、生活の糧を得るために不安定な臨時雇用の職に就いていると言うことでした。
 失業した人たちが、「失業したのは社会や会社のせいではなく、すべてあなたの自己責任だ。敵はあなた自身の中にある」とカウンセラーになじられる場面や、失業後も朝早く起きて、ネットワーキングなどに「出勤」し、就職活動という仕事を夜遅くまでこなしている姿は、ほんとうに身につまされるものでした。
 中小企業の倒産は増え続け、「日本は経済の一流国ではなくなった。海外のやり方に学ばなければならない。もっと改革を」とさけぶ大臣の姿を見ていると、アメリカのホワイトカラーの現実は、日本の私たちの姿そのものであると思いました。
 筆者は、失業者に対するセーフティーネットとして、失業保険の期間を北欧のなみに延長することと、国民皆保険の制度を確立することを主張した上で、雇用の不安に怯えるホワイトカラー労働者が、決して一人で悩まず、ともに手をつなぎ、支え合っていくこと、このような失業と不安を生み出す企業と社会に、手を取り合って闘っていくことの必要性を主張してこの本を結んでいます。
 企業内にとじこもって、そこに働く労働者の雇用と生活の安定のみに自らの課題を置くのではなく(もちろんそれもとても大事ですが)、失業者の不安をネットワークしていく労働運動のあり方が、たしかに今、問われているのだと思いました。


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