1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「罪と罰〈3〉」(ドストエフスキー 亀山郁夫訳)

2010-12-26 09:13:06 | 
第3巻は、第2巻に続いて予審判事ポルフィーリーとラスコーリニコフの対決が、そして老女殺しの罪に苦しむラスコーリニコフの心の葛藤が、迫力ある筆致で描かれていきます。ラスコーリニコフの葛藤に同伴するソーニャの姿がとても神々しいのです。

農奴解放後の社会的な混乱の中で、経済的に困窮する人びとの姿。政治党派や宗教など、肥大化していく観念に憑かれていく人びとの姿なども、とてもリアルに描かれています。

そして流刑地シベリアの大地でのラスコーリニコフの復活。

「しかし彼は甦ったのだ、そして、それが彼にはわかっていた、生まれ変わった存在のすべてで、いっぱいにそれを感じとっていた。では、彼女は―彼女はただひたすら、彼の人生のみをよりどころとして生きていた!」

「彼は彼女のことを考えていた。たえず彼女を苦しめ、その心を怖気づかせていたことを思い出した。彼女の青白い、やせこけた、ちいさな顔を思い出した。しかし、いまの彼は、ほとんどそうした思い出に苦しめられることがなかった。これからは自分が、いかにかぎりない愛で、彼女の苦しみのすべてを購っていこうとしているかを。」

「観念にかわって生命が訪れてきた。」

ラストの復活の余韻に今も浸っています。次は、悪霊をよみなおそう。