1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「楽園への道」(バルガス=リョサ)

2008-03-29 12:44:48 | 
 「楽園への道」(バルガス=リョサ)を読みました。この本は、19世紀半ばに活躍した女性解放運動家フローラ・トリスタンと、その孫である画家ポール・ゴーギャンの物語です。著者バルガス=リョサは、男女の平等と、抑圧され差別されたすべての人の解放を求め闘ったフローラの人生と、証券会社での安定した生活を捨てて、30歳代から絵に没頭し、自らが信じる絵画の本質を求めてタヒチへと旅立っていったゴーギャンの人生を、パラレルに描いていきます。
 精神的にも肉体的にも傷つきながらも、「楽園」を求めて、死の直前まで闘い続ける二人の姿が、とても痛々しくて、胸をうつのです。
 フローラは、性の奴隷として自らを扱う夫と別れ、子どもの親権をめぐる血みどろの争い(別れた夫にピストルで胸を撃たれ、愛する娘を強姦される)の後に、旅をしたペルーとロンドンで、奴隷として、売春婦として、売られていく女性の姿を目撃します。彼女を社会運動へと駆り立てたもの、それは、資本主義社会の中で、労働力を再生産する道具として、人間の尊厳を奪われ、男性労働者の半分以下の給料で働かざるを得ない女性の姿でした。女性が、人間として誇りを持って生き、男性と平等に働ける社会を、すべての働く人と一緒につくりたい、それが、彼女が求める「楽園」でした。
 古き良きヨーロッパが残るポンタヴェンから、ゴッホとの共同生活をするために訪れたアルルを経て、辺境の植民地タヒチへ。ゴーギャンは、絵を描くために、妻と5人の子ども達との生活をなげうって、資本主義社会の価値観に穢されていない「楽園」を求めて、旅立ちます。ゴーギャンを「楽園」へと旅立たせたもの、それは、すべてのものを商品化する資本主義社会の中で、「商品」となることによって、絵が失ったものを取り戻したいという思いでした。ゴーギャンにとって、絵が失ったものとは、「原始社会」がもつ生と性の奔放な輝きであり、生活から遊離していない絵のありようでした。
 ゴーギャンは、フローラの死後、4年目に生まれました。この本を最後まで読み終えたとき、会うことがなかった祖母と孫が、共通の根っこで結ばれているということを、強く感じないではおれませんでした。二人を結びつけている共通の根っこ。すべてのものを商品化することによって、人間の尊厳や精神の輝きを踏みにじる、資本主義社会への異和とNo。
 僕は、祖母と孫のようには、生活のすべてをなげうつことはできないけれど、せめて彼らの100分の1ぐらいは、資本主義社会への異和とNoを、持ち続けていたいと思うのです。ゴーギャンの絵の話も、いっぱいでてくるし、パラレルなストーリーの展開もとてもうまいし、このブログを書き始めてから読んだ20冊あまりの本の中で、ベストの一冊でした。

アントニオ・ネグリの来日が・・・(2)

2008-03-29 09:48:15 | 日記
 アントニオ・ネグリの来日を、日本政府が実質的に拒否したこと
に対して、姜尚中東大教授、市田良彦神戸大教授、木幡和枝東京芸大
教授らが、抗議の共同声明を出したという記事が載っていました。
姜尚中東大教授は、「現在の世界はどこに行くのか、どんな原理で
動いているのかを考える上で、ネグリ氏は世界的に見ても貴重な人。
多くの人の知る権利、学問的な交流をする機会、大学の自治を侵害
された」と問題を指摘しています。
 先週も書いたけれど、僕は、ネグリが日本で何を話すかを、とても
楽しみにしていました。共同声明に、同感です。