1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「新しい階級社会 新しい階級闘争」(橋本健二)

2008-03-11 22:12:53 | 
 「新しい階級社会 新しい階級闘争」(橋本健二)を読みました。この本は、「新しい階級社会」へ移行した日本社会の現実を、社会学の実証研究に基づいて、明らかにした本です。筆者は、日本の社会で起きている次の二つの変化を指摘することから、この本を始めます。

  第一の変化  貧困層の激増(日本の貧困率はアメリカについで世界第2位となった)
  第二の変化  挽回できない格差の拡大(親が貧しいと子どもも貧しくなる可能性が高い)

 このような変化の結果、日本の社会は、「格差社会」から、五つの階級からなる「新しい階級社会」になったと、筆者は主張します。

  <五つの階級>
   1.資本家階級  従業員が5人以上の経営者   5.4%
   2.新中間階級  専門職、管理職、管理職につながる男性事務職  19.5%
   3.旧中間階級  自営で農林漁業や商工業を営む人   16.3%
   4.正規労働者階級  正規雇用の労働者   36.7%
   5.アンダークラス  非正規雇用の労働者   22.1%

 「新しい階級社会」とは、資本家階級が被雇用者全体を搾取する一方で、資本家階級とともに新中間階級が労働者階級を搾取し、さらに資本家階級とともに労働者階級まで含んだ正社員全体が、派遣社員・請負社員・フリーターなどのアンダークラスを搾取するという、重層的な搾取関係が成立している社会なのです。
 筆者は、貧困と格差の拡大に闘う主体として、アンダークラスの人たちの中で芽生え始めたユニークな運動を紹介しています。「フリーター全般労働組合」「首都圏青年ユニオン」「派遣ユニオン」「ガテン系連帯」などの労働組合は、従来の労働組合のような縦型の組織ではなく、電子メールやソーシャルネットワーキングサービスを使った、個人加盟の直接参加型のネットワーク組織だそうです。彼らは、貧困と闘うために、シングルマザーや多重債務者、サラ金被害者、生活保護者支援団体、ホームレス支援団体と、積極的に交流を行っているそうです。
 筆者は、搾取者である資本家階級と新中間階級の収入を引き下げることによって、より格差が小さく、転落のリスクも小さい、アンダークラスの人が、なんとか生活してゆける社会をつくっていくことを主張して、この本を終えます。
 今は、ビジネスがほとんどになってしまいましたが、労働組合運動に長い間関わってきた者として、この本は、とても身につまされるものでした。非正規雇用の労働者の労働条件や生活の問題について、日本の労働組合が有効な取り組みができてこなかったこと、貧困と格差の拡大のひとつの原因は、やはりそこにあったと思うのです。
 倒産やリストラの恐怖に怯える多くの労働者の人たち。わずかな年金で暮らす年老いた人たち。
 そして、僕自身、近い将来、リタイアし、年金で暮らす生活を向かえることとなるでしょう。弱い人たちが、安心して暮らしていける社会、それは、より格差が小さく、転落のリスクも小さい社会であると思うのです。
 労働組合運動に携わるすべての人に、ぜひ読んでもらいたい本でした。