先週、初夏のブナの森の山あいに、今はたった一軒だけとなった湯治宿に3泊ほどお世話になった。この5年間で4度ほど訪ねているが、いずれもブナが黄金に輝く秋も深まった頃。この季節ははじめてだが、湯治以外の目的は、山菜を付近の山で採取して、簡単な調理でいただくというもので、タンパク源に生タマゴと納豆は持参したがあとはおコメとパスタと各種調味料と米油にバター。初日だけは、コンビニおでんで済ませたが、残り2日間は山菜三昧とした。大好きなコシアブラとハリギリはギリギリ確保できたし、思い出すだけでも、トリアシショウマ、ヤマブキショウマ、ウルイ、山ウド、タチシオデ、ミツバ、ミズナ、カタクリの葉などおひたし、味噌炒め、ペペロンチーノの具材には十分すぎるほどの量だったし、個性豊かな山菜たちを満足の行くほど味わった。ヒトにやるほどの量は取らないことにしているが、コシアブラのおひたしを初めてだという同宿のヒトに食べてもらったら、思いのほか喜んでくれたので、ホツコリと喜んだ。この湯治宿には必ずと行っていいほど豊かな食材をたくさん持参している気の良いオジサンがいて、今回は福井からのオジサンに「氷見うどん」なるあったかな一杯を雨で待機していた昼にご馳走になった。湯船といい台所といい、日本各地から来ている秘湯や湯治愛好家と様々な温泉宿の話しに花を咲かせるのもいい。日帰り温泉とテント場ばかりを愛好してきたが、古い湯治場も捨てがたい。こうした宿の廃れるのと人生が廃れるのと、どちらが早いか?こんな宿に集まるヒトビトの多くが同じことを考えながら湯に浸かっているかもしれない。
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