かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

驚いた!蔵王の立ち枯れ

2021-06-05 16:13:09 | 日記

60代後半となったこの歳になるまで、隣県に長く暮らしていながら「山形蔵王の樹氷」を目の当たりにしたことがなかった。もうスキーはやらないが、スノーシューをもって一度は行こうとは思ってはいたが、沖縄から帰ってからは、無性に厳冬期の樹氷たちに逢いたくなって、昨年、今年と樹氷の出来具合の情報を集めていたのだが、このコロナ禍で適えられないままだ。

仙台からバスを乗り継いで2時間、山形の蔵王温泉に行って、ロープウェイ(山麓駅~樹氷駅~山頂駅)に乗りこめば、あっという間に樹氷ポイントの標高1736mの地蔵岳直下に行きつくことができるのであり、こないだ初めて乗った蔵王ロープウェイの窓から顔をのぞかせ標高が上がるにしたがって現れてきたアオモリトドマツ(オオシラビソ)を眺めて、「ああ彼らがモンスターに化すんだな、こんなに簡単にお目にかかれるだ」と目を輝かせて喜んでいたところ、次第に森の中に枯れ木が目立つようになり、山頂駅付近ではとううとうまったくの枯れ木だらけの荒涼とした山容に変わって悄然としてしまった。

係員に原因を聞きそびれて、そのまま山歩きを楽しんで帰ってきたが、帰ってきてから立ち枯れの原因を調べたら、どうやら原因は二つあって、まず2013年ころからトウヒツヅリヒメハマキというガの幼虫が大量発生してアオモリトドマツの葉っぱを食い荒らし、そのため樹が弱ってしまった。その弱みに付け込んで、キクイムシというゾウムシの仲間が成虫、幼虫とも木の中に巣をつくってどんどんを食い荒らし、とうとう衰弱した木が地下から水をくみ上げる力を失って次々と枯れていったらしい。

だが、原因はさらにある。森林を管理する林野庁(農水省)が弱った樹木をいち早く見つけ伐採し、あるいは燻蒸するなどでキクイムシを駆除すれば被害が最少となった可能性があるものの、国定公園の自然保護を所掌する環境省が特定自然保護地区であることから伐採など手を加えることができなかったとのことである。いわば「縦割り行政」の結果、アオモリトドマツが彼死んでいくのを指をくわえてみていたということか・・・(いつものことで、悲しい)

最近になって、林野庁が木の苗を植え始めたということだが、焼け石に水、オイラが生きている間には、もう地蔵岳一帯の広大な樹氷の絶景を眼にすることはできないことは明白だ。まあ、キクイムシたちによる被害は収まってきたということで、地蔵岳八合目以下はまだまだトドマツたちが元気なようだから、ロープウェイ山頂駅を降りたらスノーシューをはいて下っていこう。土地勘は抑えた、あとは雪の降るのを待つだけ。(ちょっと気が早い・・・2022年厳冬期・・・もうみんなワクチン打ってるから、いいよね、出かけても‥‥)

いきなりの特定のガの発生とか、このところの異常気象なんかも絡んでいるのかもしれないな、つくづく不安な時代だ。温暖化で、やがて樹氷さえも見られない時代がやってきて、スキー客も来なくなって、ロープウェイ施設が廃墟となる時が、遅くない将来やってくるのかもしれない。

だが、大量に発生したガの幼虫を森の先住民のヒメバチや菌の仲間が頑張って駆逐したらしいという報告に接すると悲しみの暗雲はいつか途切れ、一条の光が差し込んでくる風景と重なる。この自然には「大いなる回復力」というものが潜在しているのかもしれない。

 

 

 

     

 

SankeiBiz.記事

トウヒツヅリヒメハマキに関する森林総合研究所東北支所の報告

キクイムシ

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