フルートとクラリネット、オーボエ。これらの楽器は誰が吹こうが、それぞれがどんな楽器であろうが、まず聞き分けられると思います。何故聞き分けられるかと言えば、倍音の強度比がそれぞれの楽器によって異なるからですね。同じシングルリードの木管楽器と言うことで、音域によってはクラリネットとサクソフォーンの音色は注意深く聞かないとどちらの楽器の音か判別がはっきりしないこともあります。それでも音域によっては楽器毎に特徴的な音色があるので全く判らないということもありません。
では同じ楽器の範囲に限定するとして、同じ素材・同じタイプの楽器を複数の演奏者が吹いた時と、一人の演奏者が異なる素材・異なるタイプの楽器を吹き比べた時、ブラインドでその音を聞いて複数の奏者が一つの楽器を吹いているのか、一人の奏者が複数の楽器を吹き分けているのか、聞き手が聞き分けられるかどうか?という設問に対する答えは簡単ではないかもしれません。と言うのは、音色の他にアーティキュレーションと言う表情の付け方にも演奏者毎の癖はあるので、音色で聞き分けているのかアーティキュレーションの個性で聞き分けているのか、判別できない場合もあると思います。ただ、曲を吹くのではなく一つの音を吹きのばして純粋に音色のみを聞き比べるという設定にすれば、アーティキュレーションの個性で判別している可能性は排除できると思いますが、一つの音のロングトーンで音色を区別することは、音程や音価が異なる音のつながりであるフレーズで聞き分けるよりはるかに難しいということも容易に想像できます。
で、言い方は異なっていても内容はほぼ同じだと思っていますが、一流の演奏家の演奏能力をもってすれば、楽器の素材やデザインの相違などを僅かな相違にしかすぎない程度に演奏家の演奏能力・技術が音色を決定する場合もあるだろうと思っています。一方でそこまでの演奏能力・技術を持ち合わせていない演奏者の場合には、楽器の素材やデザインなどの相違点が音色に影響する場合も否定は出来ないと思っています。もしそうだとすると、どうせ一流の演奏能力・技術を身に着けることは出来ないから、せめて楽器の素材やデザインを自分にとって許容できる範囲の中で最も高級な楽器を選んで少しでも良い音色で演奏しようと思うか、楽器に掛ける金があったらそれをレッスン代に回して自身の演奏能力・技術を向上させて安い楽器でも良い音を出せる様になろうと言う姿勢で臨むか。若くて時間はあるけれど経済的余裕は無い場合は安い楽器で我慢して自らの演奏能力・技術を向上させることを追求する方が良いのかなと思います。一方でレイトスターターで経済的余裕はあるけれど時間の方がそれほど残されていないという場合は費やせる経済力を最大限発揮して、白金メッキでも、金製でも白金製でも、良い楽器を入手すれば良いと思います。しかし、良い楽器ほど吹きこなすのに必要な最低限の演奏能力・技術も高くなって行きます。結局技術は自分で精進して身に着けるしかなく、技術を金で買うことは出来ないということですね。
ピアノ等はどうでしょうか? スタンウェイとかベヒシュタインとか有名な楽器は多々ありますが、ピアノこそは誰が叩いても一つの音の音色については同じですよね??? それでもアーティキュレーションという演奏上の表情の付け方の個性などで、演奏者が誰かが判ることもあると思います。また、たった一つの音を鳴らす時ですらキィを叩くときの指の使い方等で、誰が叩いたのか聞き分けられることもあるのでしょうか? ご意見のある方、ぜひコメントをお寄せください。