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生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

Arnoux  Jacques Ibert  Chansons de Don Quichotte  アルノー  イベール  ドン・キホーテの歌

2014-11-07 22:26:51 | イベール
 イベールの歌を紹介することがやっと叶いました。ジョ(ホ)セ・ファン・ダム(有名なバス歌手)がオーケストラと歌うというアルバム名のCDを入手しました。1~3トラックがラヴェル作曲の「ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテ」、4~7トラックがイベール作曲の「ドン・キホーテの(4つの)歌」、8~13トラックがプーランクの「 Le Bal masque 」、14~19トラックがフランク・マルタンの「イェーダーマンから6つのモノローグ」。

 ラヴェルとイベールがともにドン・キホーテを主題として作曲した曲が仲良く収録されていますが、Wikipediaその他を見ると、ロシアの名バス歌手シャリアピン主演の映画「ドン・キホーテ」の映画音楽として、作曲家には知らせずに同時に複数の作曲家に依頼して競作させたらしいですね。そしてラヴェルはこの「ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテ」が絶筆になったそうで、映画に採用されたのがイベールの作品だそうです。

 このCDを聞いていると、ラベルに続いてイベールの作品が耳に入ってきます。同じ題材を歌っているだけあって、良く似た音楽と言える一方で、ラベルという個性とイベールという個性の違いも確認でき、何度聴いても飽きません。いつもの様にペトルッチ(IMSLP)サイトに飛ぶと、残念ながらラヴェルの「ドゥルシネア姫に心を寄せる~」の楽譜は収録されていませんでした。一方でイベールの「ドン・キホーテの(4つの)歌」は収録されており、早速プリントアウトしました。しかし残念なことに楽譜が細かいのにスキャナの読み取り精度が粗い様で非常に見難い仕上がりです。いざとなったらカワイのスコアメーカーでリライトするしかないかも知れません。

 ラヴェルの「ドゥルネシア姫に心を寄せる~」は全3曲からなり、イベールの「ドン・キホーテの歌」は全4曲からなります。どちらもスペイン風の香りがバッチリ効いています。ここでいきなりですが、ラヴェルの作品とイベールの作品の違いをワインに例えて見ます。ラヴェルの「ドン・キホーテ」はずばりボルドーのカヴェルネ・ソーヴィニヨン系、一方のイベールはブルゴーニュならぬコート・ド・ローヌでしょうか。ボルドーのカヴェルネ・ソーヴィニヨン系とはすなわち太陽の恵みを溜め込んだタンニンの渋みがしっかりした骨格を作っている赤ワインですね。ブルゴーニュは複雑且つ繊細と言うイメージを持っているのでちょっと違うと思います。コート・ド・ローヌのワインはブルゴーニュワインに比べればはるかにボルドーに近いイメージを持っていますが、芳醇さや力強さではボルドーに一歩譲るもののペッパー風味のスパイシーさが魅力、と言うのが大雑把ですが私の持っているフランスワインのイメージです。フランスワインの味を論ずるときにはテロワール=土地性とでも言うのでしょうか、ブドウ畑の地質や地形が基本になるのですが、音楽作品を論じるときにも作曲家の出生地や人生のそれぞれのステップを過ごした環境等が、音楽のテロワールとして論じられても良い様に思います。

 無論ドン・キホーテはスペインの物語ですからドン・キホーテにまつわる音楽を聞くときにはスペインワインもお奨めです。安いながらも悪くないスペインワインとして、牛のマスコットがボトルの首からぶら下がっている「サングレ・デ・トロ」などがピッタリだと思います。ちなみに「サングレ・デ・トロ」とは「牛の血」の意味ですね。

 ということでイベールの「ドン・キホーテの歌」は見難いとは言え楽譜がありますので、歌ってみたいと思っています。特に4曲の中から1曲選べと言われれば、4曲目の「Chanson de la mort」ですね。この「la mort」は要するに「死」の歌ということですね。そう思って聴き直すと確かに胸に迫ってくるものがあります。だからこそ淡々と歌ったものを録音しておいて自分の葬儀に流したいと思います。はい、この曲は生きている間にきちんとした機材を使って録音しておきましょう。そのまえにサングレ・デ・トロを買いに行きましょうか。