goo blog サービス終了のお知らせ 

生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

デュパルク ギャロップ  Henri Duparc 「Le Galop」

2016-09-05 21:31:35 | デュパルク

 世間一般では少数派のクラシック音楽愛好家の中でも更に少数派のフランス音楽愛好家同士では、フランス音楽が好きと言う人でもドビュッシー、ラヴェル、フォーレ止まりの人が多い、という会話があります。サティ、プーランクぐらいまではその延長上に出てくるかも知れませんが、マスネ、レイナルド・アーン、ましてや私が愛するリリ・ブーランジェはフランスに留学経験のある音楽家であってもあまり認識されていないように思います。

 そんな中で、歌曲についていえば著名と言って良いのがアンリ・デュパルクだと思います。とはいえデュパルク自身がその生涯の終盤に自作作品の殆どを再演不能とするために自ら楽譜を破棄して、構成に残るのは「旅への誘い」等の僅かな歌曲に限られている、という状況があります。自らその作品の大半を破棄してまで残した作品だけあって、「旅への誘い」は歌曲集でありながら、その一曲一曲の密度が滅茶苦茶高くて、あたかも交響曲であるかの様に聳え立っています。一聴しただけで私ごときが歌えるものではないと、絶望的な思いすら感じます。

 そんな中で誰の作品かを意識せずに聞いていた中で、印象に残ったフランス歌曲がありました。後から作曲者を確認するとアンリ・デュパルクでした。それが「ギャロップ:Le Galop」です。聞いた瞬間に馬が疾走する様子を描いた歌ということが伝わってきました。フランス歌曲における「魔王」かとも思いましたが、”梅ヶ丘歌曲会館”で確認すると「魔王」の様な内容ではなく、正に馬が疾走する様子を描いている歌の様です。”梅ヶ丘歌曲会館”に記された注釈によると、デュパルク自身は気に入らず破棄した中の曲の様ですが、残っていた楽譜が再発見されて今に伝わっているそうです。そういう事情があってかなかってか、”梅ヶ丘歌曲会館”子の評価でも他のデュパルクの作品に比べれば否定的な評価がされている様にも思えます。

 デュパルク自身の遺志に添ってか添わずか判りませんが、ペトルッチ(IMSLP)のサイトに楽譜が公開されています。女声よりは男声に合う曲だと思います。いきなり「旅への誘い」に取り組むよりは「ギャロップ」の方がデュパルクの作品に取り組むには敷居が低いと思います。


Henri Duparc  Elégie     デュパルク   エレジー

2014-10-19 18:59:56 | デュパルク
 Wikipediaでエレジーを検索すると多数の音楽作品が挙げられています。しかし器楽作品の方が多いようで、声楽作品はマスネーとサティによるものぐらいでしょうか。もっと多くの作曲家がエレジーという声楽作品を残している筈です。自身の作品の多数を破棄してしまったデュパルクの歌曲の中にもエレジーが残っています。

 デュパルクが遺した歌曲は16曲ほどですが、その何れもが完成度が高く、内容が濃く、密度が高く、歌いこなすのに必要なエネルギーが他の作曲家の歌曲とは比べものになりません。そんな中で比較的淡々と歌えるのがこのエレジーと、もう一曲はセレナーデでしょうか。とはいえそれはデュパルクの作品の中での比較の話で、エレジーというタイトルの付いた他の作曲家の作品と比べるとやはりデュパルクのエレジーは非常に濃い作品の様な気がします。軽く歌おうとすれば軽く歌えないことはないかもしれませんが、デュパルクの歌曲を軽く歌うことはものすごく間が抜けているように感じてしまいます。ものすごい引力でデュパルクの深い精神世界に引きずり込まれるように感じます。これほど強い作品への引力を感じさせる作曲家は他に知りません。中途半端な気持ちで手を出すと火傷してしまいそうな怖さを感じているので、まだデュパルクを歌う準備は全くしていません。

 自分自身の発声技術を見直すため、コンコーネの50番を1番から、並行してイタリア歌曲集を勉強しなおすことにしました。一方でフランス歌曲のレパートリーも少しづつ増やしています。更に来年の初夏の市民オペラのキャストのオファーを頂き、これからは忙しくなりそうですね。マーラーの「千人の交響曲」の合唱を歌い終わって、オーケストラと歌う魅力を再発見して、以前の合唱団に戻ろうかとも思いましたが、特に市民オペラの本番が近づくと相当忙しくなりそうなので、合唱への復帰は見合わせることにしました。

 デュパルクのエレジーは、デュパルクの歌曲のCDやインターネットの動画サイトに音源がありますので、ご存知の無い方は是非一度聴いてみて下さい。

Henri Duparc   アンリ デュパルク

2014-08-07 21:49:20 | デュパルク
 アンリ・デュパルク。1848年に生まれ1933年に没している。その前後の作曲家を並べてみると

           チャイコフスキー     1840年-1893年
           シャブリエ        1841年-1894年
           マスネ          1842年-1912年
           グリーグ         1843年-1907年
           リムスキー=コルサコフ   1844年-1908年
           フォーレ         1845年-1924年
           トスティ         1846年-1916年
           デュパルク        1848年-1933年
           ヤナーチェク       1854年-1855年
           ショーソン        1855年-1899年
           レオンカヴァッロ     1857年-1919年
           ドビュッシー       1862年-1918年

 こうしてみると長寿だった事がわかるが、病のため36歳以降は作曲活動が出来なくなり、その後緑内障のため視覚も失うと言う厳しい生涯を送った作曲家である。元来完璧主義者であった上に、ただ一人の指導者であったフランクからは「つまらない作品を多数書くよりは本当に良い作品を少数書きなさい」というようなことを言われてそれを拠り所にしたようで、病を得た後に殆どの作品を廃棄したと言う事である。

 現在では器楽作品も少数残っているようだが、17曲残された歌曲の評価が高い。動画サイトで初めて音源を聴いた時の印象は、兎に角作品としての密度と完成度が高いということ。交響曲に例えるならブラームスだと思う。クラシック音楽の魅力に目覚めて日の浅い人から、例えば有名な作曲家の交響曲全集を聞いてみたいと思っているが誰の作品から聞いたら良いだろうか?と皆さんがアドヴァイスを求められたらどう応えますか???   私なら迷わずにブラームスと応えます。その心は、作品数が少ないので全曲を聴くことのハードルが低い、且つその何れもが傑作ぞろいで外れが無い、ということに尽きます。兎にも角にも聴いて頂きたいのですが、音楽作品としての密度、作曲家が作品に注ぎ込んだエネルギーの総量が半端でなく、と言ってキレもあるので変に重苦しいだけでもない、人間離れした完成度の高さを感じます。気楽に聞いてみようと思って再生してみたら演奏が始まった途端に思わず姿勢を正して座り直さざるを得ないという感じです。鬼気迫るものがあります。判る、理解できる、という様な代物ではありません。ただただすごいと言う事だけが分かると言うものです。

 その中でも「旅への誘い」が代表作とされているようですが、「旅への誘い」以外の曲を聴いても印象は殆ど変わりません。初めて聴いた瞬間にすごいと思いました。すご過ぎて歌いたいとは思えませんでした。むしろ今の私の実力ではどうやっても歌いこなせる代物ではない、と感じたと言うのが本当のところだと思います。他のフランス歌曲の作曲家の作品を勉強して、同時に歌唱技術も向上させた上で、何年か後にデュパルクの作品に取り組んでみたいと思っています。その意味ではデュパルクの歌曲こそ我が人生を完成させる上で歌っておきたい歌です。




**********************************************************************

 さて、宣伝です。

 来る8月24日(日) 大人の学芸会サマー・フェスティバル で

 レイナルド・アーンの歌曲;「クロリス」、「夜に」、+もう1曲ぐらい

 歌わせて頂きます。 @門前仲町徒歩10分 Symphony Salon

            13:00-18:00

 このブログを見て興味を持っていただいた方は、宜しかったらお聞きにいらして

 下さいませ。なおサマー・フェスティバルは器楽アンサンブルが中心で声楽は

 少数派ではあります。