このブログを始めてから、新品・中古を取り混ぜて随分と声楽CDを買い込んでいます。手元に届いたからと言って一回聞いて直ぐに紹介できる作品もありますが、むしろストックしておいて聞き重ねて、ある程度咀嚼できてから紹介するものの方が多いかもしれません。ツェムリンスキーもその一人です。シェーンベルクに唯一正統的な作曲技法を教えたのがツェムリンスキーであり、妹がシェーンベルクと結婚したのでシェーンベルクの義理の兄になり、また後のアルマ・マーラーとなるアルマ・シンドラーもツェムリンスキーの弟子です。ベルクやウェーヴェルンとも親交がありながら、ツェムリンスキー自身は新ウィーン学派に数えられないのは、シェーンベルク・ベルク・ウェーヴェルンに比べると後期ロマン派のスタイルを払拭し切れなかったからでしょうか。もう一つはユダヤ人だったためアメリカに亡命したものの、アメリカでは無名であったため大した仕事を残せずに病死したことで忘れられた作曲家となっていたからでしょう。
さて作品番号13の、メーテルリンクの詩による6つの歌です。幸いペトルッチ(IMSLP)のサイトで楽譜を入手できます。高声の方はもちろん、中声の方でも歌える音域かと思います。音域的にはとりあえず今の私でも歌えそうではあります。全体の印象はロマン派音楽の範疇には納まりきらないと思います。が調性感は十分に残っています。充実した和音の響きと言う感じはありません。独唱とピアノ伴奏ですが、ピアノが同時に鳴らす音はかなり少なく、薄い透明な響きが主体です。その中でぶつかり合う音程があって緊張感が漂います。変拍子があり、歌の旋律には半音階進行もあり、クラシック音楽にあまり馴染んでいない人が聞いても現代音楽的と感じる雰囲気を十分に備えています。
歌に限らず音楽の演奏について語るとき、良く、音楽の推進力、と言う表現を使うことがありますが、この曲を聞いていると逆に音響空間が結晶化して、本来なら飛び続けないと墜落してしまう飛行機が空中に止まっているかのような、そんな感覚を感じます。空中に止まると言えば飛行機ではなくヘリコプターですが、ヘリコプターにとっても前に進んでいるよりも同じところに留まるホバリングの方が実は遥かに燃料を消費するし、一点に留まる技術は難しいそうです。この曲は受け手に対して声を飛ばしていくと言うような歌い方ではなく、受け手との間に隙間なくホバリングしているヘリコプターがぎっしり並んでいるような伝え方が求められるのではないかという気がしました。言い換えればロマン派までの曲であれば耳障りの良い和声の助けを借りて安定飛行が出来ますが、そのような安定した和声感がない曲は自分自身がしっかりと声を支えて多少の乱気流に揉まれてもびくともしない歌唱をする必要がありそうだということです。でもその難しさに挑戦するところがこの手の曲を歌う醍醐味の様に思います。そして良く楽譜を見てみると、必ずしも歌の旋律とピアノ伴奏がぶつかるばかりではなく、結構ピアノ伴奏が歌の旋律と同じ音を鳴らしてくれていたりもします。これはかなりツェムリンスキーは歌のことを理解していて歌い手に優しい配慮をしてくれたんだろうなと思うわけです。
ただ、何事にも段取りは必要で、この曲に取り組む前に歌っておきたい曲があります。しばらくはイタリアオペラ関係に注力して、その後マーラーの子供の不思議な角笛も歌いたいし、リリー・ブーランジェは必ず没後100年の2018年に歌う積りです。その後になりますかね??? でもツェムリンスキーを歌えたら、その先のベルク、ウェーベルン、シェーンベルクも歌える様になる気がします。ともかく生きているうちに歌いますよ。
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さて宣伝です。詳細は未定ですが12月28日(日)13:00~16:30 日暮里サニーホールのコンサートサロンにて大人の学芸会の弾く忘年会があります。
シューマンの連作歌曲「詩人の恋」を1曲目から持ち時間の許すまで歌う予定です。おそらく1曲目から4曲目乃至6曲目ぐらいかと思います。
詳細はわかり次第お知らせしますので、このブログに興味を持たれた方、是非聞きにいらしていただければ幸いです。
さて作品番号13の、メーテルリンクの詩による6つの歌です。幸いペトルッチ(IMSLP)のサイトで楽譜を入手できます。高声の方はもちろん、中声の方でも歌える音域かと思います。音域的にはとりあえず今の私でも歌えそうではあります。全体の印象はロマン派音楽の範疇には納まりきらないと思います。が調性感は十分に残っています。充実した和音の響きと言う感じはありません。独唱とピアノ伴奏ですが、ピアノが同時に鳴らす音はかなり少なく、薄い透明な響きが主体です。その中でぶつかり合う音程があって緊張感が漂います。変拍子があり、歌の旋律には半音階進行もあり、クラシック音楽にあまり馴染んでいない人が聞いても現代音楽的と感じる雰囲気を十分に備えています。
歌に限らず音楽の演奏について語るとき、良く、音楽の推進力、と言う表現を使うことがありますが、この曲を聞いていると逆に音響空間が結晶化して、本来なら飛び続けないと墜落してしまう飛行機が空中に止まっているかのような、そんな感覚を感じます。空中に止まると言えば飛行機ではなくヘリコプターですが、ヘリコプターにとっても前に進んでいるよりも同じところに留まるホバリングの方が実は遥かに燃料を消費するし、一点に留まる技術は難しいそうです。この曲は受け手に対して声を飛ばしていくと言うような歌い方ではなく、受け手との間に隙間なくホバリングしているヘリコプターがぎっしり並んでいるような伝え方が求められるのではないかという気がしました。言い換えればロマン派までの曲であれば耳障りの良い和声の助けを借りて安定飛行が出来ますが、そのような安定した和声感がない曲は自分自身がしっかりと声を支えて多少の乱気流に揉まれてもびくともしない歌唱をする必要がありそうだということです。でもその難しさに挑戦するところがこの手の曲を歌う醍醐味の様に思います。そして良く楽譜を見てみると、必ずしも歌の旋律とピアノ伴奏がぶつかるばかりではなく、結構ピアノ伴奏が歌の旋律と同じ音を鳴らしてくれていたりもします。これはかなりツェムリンスキーは歌のことを理解していて歌い手に優しい配慮をしてくれたんだろうなと思うわけです。
ただ、何事にも段取りは必要で、この曲に取り組む前に歌っておきたい曲があります。しばらくはイタリアオペラ関係に注力して、その後マーラーの子供の不思議な角笛も歌いたいし、リリー・ブーランジェは必ず没後100年の2018年に歌う積りです。その後になりますかね??? でもツェムリンスキーを歌えたら、その先のベルク、ウェーベルン、シェーンベルクも歌える様になる気がします。ともかく生きているうちに歌いますよ。
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さて宣伝です。詳細は未定ですが12月28日(日)13:00~16:30 日暮里サニーホールのコンサートサロンにて大人の学芸会の弾く忘年会があります。
シューマンの連作歌曲「詩人の恋」を1曲目から持ち時間の許すまで歌う予定です。おそらく1曲目から4曲目乃至6曲目ぐらいかと思います。
詳細はわかり次第お知らせしますので、このブログに興味を持たれた方、是非聞きにいらしていただければ幸いです。